魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる
あさぼらけ
旅立ちの章
第1話 勇者召喚
気がつくと、どこかの閉鎖された室内に居た。
学校の教室くらいの広さがあって、出入り口らしき木造の扉は、閉ざされている。
槍を持った兵士らしき人がふたり、なんかうろついている。
部屋の中央には、これ見よがしに宝箱が置かれている。
そして一番気になるのは、目の前のおっさんだ。
王冠を被っていて、なんかそれっぽい服装をしている。
そしてその王様らしき人は、こちらをじっと睨んでいる。
うーん、どうしたものか。
やっぱり王様らしき人に、話しかけてみるべきだろうか。
と思ってたら、向こうから話しはじめた。
「よくぞ参った、勇者ウラワの末裔、ユウタよ。」
え、俺のご先祖って、勇者だったの?
確かに俺の苗字はウラワだが。
「かつて勇者ウラワがこの城にもたらした、この国の秘宝金水晶が、闇の魔王に奪われてしまった。
ユウタよ、闇の魔王を倒して、金水晶を取り戻してこい。」
って、それを俺ひとりでやれってのかよ。
「旅の詳しい事は、この部屋の兵士に聞いてくれ。
では行け、ユウタよ。この国に平和をもたらすのだ!」
と言って王様はおし黙る。
うーん、部下の兵士に丸投げか。
上司としてどうなのか。
王様に話しかけても、
「まだ居たのかユウタ。早く行くがいい。」
としか言わないし。しかも無表情で、なんか怖い。
試しにふたりの兵士に話しかけてみたら、こんな感じだった。
「実は金水晶と一緒に、王女であるローザ姫も連れ去られてしまった。
王様はこの事には触れないが、どうかローザ姫を助け出してほしい。」
「この宝箱には、旅に必要となるアイテムが入っている。
好きに使うがいい。」
ふたりとも、いくら話しかけても、これ以外の事は言わない。
仕方ないので、宝箱でも開けてみる。
小さな皮袋に入った、葉っぱ。
なんかばかでかい鍵。
そして二百円。
え、これで闇の魔王ってのを倒してこいと?
さらにローザ姫を助けてこいって?
これは王様に確認しないと、って王様に話しかけてみた。
「まだ居たのかユウタ。早く行くがいい。」
いや、他に言う事はないのか。
宝箱がどうの言ってた兵士に、話しかけてみた。
「その魔法の鍵は、魔法の扉を開く事が出来る。
ただし一度使うと鍵は壊れてしまうので、気をつけて使うがいい。」
試しにもうひとりの兵士にも話しかけてみたが、ローザ姫を助けてくれとしか言わない。
で、ここに木製の扉があって、魔法の鍵ってヤツが合いそうな錠前があるのだが。
ここで魔法の鍵を使えって事か。
ってちょっと待て。
あんたらひょっとして、閉じ込められてない?
兵士達や王様は、無言でこっちを見ている。
仕方ないので、魔法の鍵で扉を開けてみた。
したら、魔法の扉とやらは崩れて、魔法の鍵も粉々に砕けてしまった。
兵士達の安堵した空気が伝わってくる。
王様は相変わらず無表情だが。
崩れた扉の向こうは、廊下みたいになっていて、ひとりの兵士が立っていた。
試しに話しかけてみた。
「この階段を降れば、オオミヤの城内広場になっている。
この階段を降れば、おまえの旅が始まる。
心して行くがいい。」
そっか、ここはお城で、オオミヤ城って言うんだっけ。
なんかしょぼい玉座の間だったなあと思いつつ、俺は階段を降りた。
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