宝石オパールは語る_1 ~黒と白のルースケース~

色石ひかる

第1話 問題編

 私は倉木くらき彩香あやか、20歳の女性。ルースコレクター初心者の社会人。ルースは宝石の石単体で裸石ともよばれている。中でもオパールが大好きだった。


 宝石や鉱物を販売するミネラルショーにきた。最初にオーストラリア産オパール専門店へよった。店主の川畑かわばた芽衣子めいこさんを見かけた。20代後半のお姉さんだった。


「彩香ちゃん、今回も来てくれてうれしいです。思う存分ルースをみてください」

「すてきなルースとの出会いが楽しみよ。気になるところがあれば質問するね」

 展示されている手前のルースから眺めた。今日もオパールを堪能できる。


 ひとつひとつ個性豊かなルースが出迎えてくれた。

「どのルースもきれいで輝いている。オパールはずっと見ていられる」

「オーストラリアは世界最大のオパール産出国です」


「いっぱい取れるのね。手前と棚にあるルースは見た目が大きく異なっている」

「種類の違いです。手前がブラックオパールで棚がボルダーオパールです。一番量が多いのは右側一体にあるホワイトオパールです。種類の違いも楽しんでください」

「3種類もあるのね。まずは手前のブラックオパールから眺めて見る」

 ルースに視線をむけた。楕円形状のルースが多かった。


 2つのルースが目にとまった。黒色ルースケースと白色ルースケースに入ったルースだった。ルースケースの大きさは片手にのるくらい。両ルースとも楕円形状。ラベルにはブラックオパールと書かれていた。


「きれいな色合いのルースね。見た目も同じような青色ですてきな感じ。両方ともブラックオパールで同じくらいの重さみたい。でも値段が大きく違う。黒色ルースケースは3万円なのに、白色ルースケースは10万円もしている」


「興味のあるルースはありましたか」

「2つのルースにちょっと興味がわいた。手に取って見ても平気?」

「落とさないようにお願いします」

「気をつけて見せてもらうね」

 ルースケースに入った状態で、2つのルースを比較することにした。黒色ルースケースから手に取った。


 ルースは透明感のある青色で海を思い出した。背面の黒色と相まって海中を散歩している感じだった。角度を変えると青色から緑色に変化した。側面からルースを眺めた。海の底にあたる下側は、砂浜のようにグレー色だった。


「見る角度によって色や光の出方がかわる。オパールは何度見てもあきない」

「喜んでくれてうれしいです。不明点があれば声をかけてください」

「オパールを見ると祝福の時間を過ごせる。もう1つのルースも見せてもらうね」


 白色ルースケースに持ち替えた。先ほどと同じ青色だけれど、色がしっかりしていた。すみきった空のように青色が主張していた。横から眺めると黒い岩の上に空が浮かんでいる感じだった。


 今度は両方のルースケースを並べた。ラベルにルースの大きさも書かれていた。どちらも8ミリ×6ミリ前後で大差なかった。

 細かく見れば同じ青色でも青色の種類は異なった。色が変化する模様は2つのルースで若干異なっている。販売されている、ほかのルースを見た。両方のルースに似た模様のルースは多かった。白色ルースケースの模様が特別貴重ではなさそう。


「価格が3倍も異なるけれど違いがわからない。芽衣子さん、この2つのルースについて教えてほしい」

「両方とも全面的にが見られるおすすめルースです。何が知りたいのですか」


「2つとも色合いや雰囲気を楽しめたよ。でも、値段が3倍も異なる理由がわからない。なぜなのか教えてほしい」

 芽衣子さんの発言をまった。

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