令嬢との縁談 ~彼女は不思議な秘密を持っていた~

DITinoue(上楽竜文)

事情

 リアンは、巨大な会社の社長の家で、縁談をすることになっていた。

「大きいお家だこと」

「入るの、躊躇しちまうな・・・・・」

 母さんと父さんは、入るのを少し躊躇しているようだ。

「やあ、いらっしゃい。オリビア、来たぞー」

 ドカドカと小太りのおじさんが出て来てすぐ、奥に控えている相手を呼びに行った。



 リアン・L・バーンズは、ハーフだ。父さんが英国人で、母さんが日本人だ。

 父さんは日本に憧れ、日本の大学に留学してきた。そこで、世話になったのが母さんで、そのまま結婚したということだ。


 リアンは、そんなハーフの家で育った。会話は基本的に日本語だ。ただ、父さんの遺伝子のせいか、僕も少し日本語のアクセントがおかしい時がある。


 そんな、他の生徒は一風変わった児童は、小学校ではからかわれた。見た目とか、日本語のなまりとか。

 ――青目君。

 そうやってからかわれるのを、リアンはじっとこらえていたのだ。


 中学校に進むと、リアンは変わらないからかいを受けた。進学する中学校には、小学校の同級生もかなり多かったからだ。またたく間に、小学校時代の同級生から、他の生徒に広がり、青目をからかわれてしまった。


 そんな時、二年のクラス替えで似たような境遇の生徒に出会った。

 ――横井オリビア。


 彼女も、ハーフで父が日本人、母がカナダ人らしい。苗字は父の横井、名前は母の名づけだそうだ。

 そして、さらにすごいのが、父の横井歩武よこいあゆむは日本を代表する企業、「サンライズジェネレーション」の社長なのだ。

 サンライズジェネレーションは、その「日の出の世代」の名の通り、子供に関係する様々な事業を行う複合企業だった。様々な事業でウケ、会社は大きくなっていった。


 リアンもよくからかわれたが、日本とアメリカが混ざっているような名前の彼女は、かなりいじめられていたらしい。


 そんな似た境遇の彼女と出会ってからは、ずっと一緒にいる友人になった。その時は、オリビアに彼氏がいた。だから、親しい友人という関係で貫いていた。

 だが、オリビアが三年生でフラれると、初めてリアンは彼女を異性と意識するようになった。オリビアもそう思ったのか、大学二年生の時に、リアンが告白すると、彼女は受け入れてくれた。

 それから、たくさんデートし、仲良くなって今に至る・・・・・というわけだ。


 そんな、過去のことをゆっくり考えながら家に入ると、リアンはつぶやいた。

「そういえば、家はいるの初めてかも」

「そうね」

 オリビアが出て来ていた。

「確かに、招いたのは初めてだわ」

「デカいなぁ、この家。さすが、サンライズジェネレーション社長の家」

「それほどでもないよ。実際、ここはたくさんの人が入れる」

「どういうことですか?」

 と聞くと、オリビアの父である社長は快く答えてくれた。


「ここね、めっちゃ津波とか洪水とか多いところなんだよ。それで、毎年のように多くの人が亡くなっている。それでね、この高台に大きな家を作ったんだ。いつでも人を受け入れられるように。地震とかがあったら、備蓄を出す」

「すごい!さすが社長ですね!!」

「ムハハ。そういうこった。いいことしないとダメだ。腐った政治家とは違うからな」

 そう言って、社長はわっはっはと大きな声で笑った。

「そんなことより、さっさと縁談でしょう」

 オリビアの母が社長に言うと、社長はテーブルに僕ら一家を手招きした。

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