父の日
たまぞう
第1話 同僚
「なあ、なんでゴブリンて緑色なんだろうな?」
仕事終わりに俺と同僚は互いにビールを買って同僚のワンルームで晩酌だ。
晩酌といっても稼ぎの良くない俺たちは酒を買うついでに同じコンビニでゲソや缶詰なんかを買っただけだ。飯は安いカップ麺で充分。
もう終電もない時間につけたテレビではアニメが流れていて、ちょうどその“ゴブリン”が勇者御一行にやられる場面だ。
ファンタジーもののお約束だ。最初は簡単なやつと言って“狩られるためだけ”に存在するモブ以下のかませ。
このところはゴブリンにも上位種なんてのがどれも出始めてまるでそれが常識で王道みたいになっている。ついこの間までは無かったのに流行りに乗って猫も杓子もゴブリンキングだ。そしてそれすらもかませなんだから居た堪れない。
「さあな、お前は何でだと思うんだ?」
「うーん、キモいから?」
「それなら青や紫もありそうだけどな」
きっと探せばあるんだろうな。赤と青と黄と桃あたりでゴブリン戦隊だって作れそうだ。
「じゃあ、君は何でだと思う?『わからん』はなしね。さあ、考えて!」
同僚は俺のことを良く知っている。そして俺が結局はこいつの意見に乗るだろうという事まで。
けれどこれには少し思うところがある。
俺はゴブリンに出会ったことがあるからだ。夢の中でもないしトラックに轢き殺された事がある訳でもない。現実世界でゴブリンに出会っている俺の所感。
「死体の色、なんじゃないかな」
「んぐっ⁉︎」
「大丈夫か?」
「君が変なこというから」
「はは、聞いたのはお前だろ」
「そうだけどさ──」
同僚は口を拭いて「──で?」と話の続きを促す。
「聞くのかよ。まあ、別にいいんだけどさ。死体の色ってさドラマとかで真っ白だったりするだろ?でもそうとは限らないんだよな。だから最初に緑色を塗った人ってのは“人の形をした化け物”に死体の色を塗ったんじゃないかな。たぶん昔の人もその色には忌避感があったんだろうって」
「まるで死体と暮らしていたみたいだね」
「何故そうなる」
「ふふ、なんとなく?」
それからしばらく話し込んで俺は自宅まで徒歩で帰り、こんな話をしたことなど忘れていた。
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