キウ
@Dariahrose
プロローグ ~ 雪の中の敵 ~
また、雪が降り始めた。
ここは、雪が深く降り積もるところ。
キウは、急いでいた。
ひたすら走っていた。
どのぐらい走って来ただろう・・。
既に日も暮れかけていた。
もうこれ以上走り続ける力は残っていない。
しかし、急がなければならない理由があった。
キウは、気合だけで走っていた・・。
夜と昼の狭間・・・。
そこは、この世とあの世の境目が入り混じり合うところ。
突然、左から突風が吹いた。
普通の人なら、少々ガタイの良い人でも飛ばされてしまう程の強い風。
しかし,キウは知っている。
その風は、『魔』によるものだった。
『魔』は左から入って来る。
婆ちゃんが、そう教えてくれた。
婆ちゃんは、もう、もうこの世にはいない。
でも、婆ちゃんから受け継いだものは、しっかり体に沁み込んでいた。
キウが、『魔』と、呼んでいるものについての知識は、すべて婆ちゃんから受け継いだものだ。
風が吹いて、15数えた。
15数え終わった時、『魔』が、仕掛けてくる。
「ぼ~~~~~~~・・。 ぼぼぼぼぼ・‥‥」
鼻にかかったような低い声か、風の音か分からない。
いつの間にか、雪と風が吹雪になった。
キウは、小刀を抜いた。
その、小刀の歯の付け根には、婆ちゃんの爪と髪の毛と涙が埋め込んである。
小刀の歯が橙色に光り始めた。
「
小刀が、橙輝の光を放っているという事は、襲ってい来るのは
突然、足元が急に動かなくなった。
見ると、水をかけられて履物が凍りかけている。
降り積もった雪は凍りかけた履物にくっついて、まるで石のように重くなってくる。
キウは、小刀を宙に掲げた。
小刀の火輝は強くなり、まるで燃えるように輝いた。
「あけれ・・。」
キウがつぶやくと、小刀の光は辺り一面を照らした。
行く先にある、木の梺に『魔』が、姿を現した。
キウはすかさず、『魔』に小刀を刺し、呟いた。
「いぬれ‥。 」
「ギャ―――――!! 」
『魔』は、水に姿を変え、その場に落ち 凍った。
キウは、足元に小刀の光を当てて、履物の氷と雪を溶かし、先を急いだ。
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