動物らしさ
シヨゥ
第1話
「俺が動物が好きな理由?」
動物たちにもみくちゃにされた彼はちょっと疲れた風で、でもものすごく楽しそうだった。
「好きだからって答えは期待していないんだろうし、なんでだろうな」
考えるように彼が振り向くと馬がこちらへと走ってくる。
「動物を見てると、あれでいいんだなって思えてくるからかもな」
「あれでいい?」
「そう。明るくなったら日の光を浴びに外に出て、歩き回り、暗くなったら寝床に帰って明日に備える。そんな当たり前をあいつらは自然にやってくれる。それを見て人間もあれでいいんだなって思えるんだ」
駆け寄ってきた馬は彼の横にやってくるなりその鼻先で彼を小突く。
「動物離れした動物の俺らは、動物らしい生活サイクルを取り戻さないといけないなって。ここに来ることで思ったんだよ」
馬は彼の髪を草のように食みだした。
「人間は自然から離れすぎた。それを気づかせてくれた動物たちを俺は愛している。だから好きなんだろうな」
そう言うと馬にまたがる。
「答えになったか?」
「ああ。十分だ」
「そうか。それなら良かった。ご存じの通り昔から話すのは苦手でね」
そう言って彼は頬を掻く。すると馬がいななく。
「それじゃあ何かと忙しくてかまってやれないがゆっくりしていってくれ」
そう言うや彼は馬を走らせた。見る見るうちに彼は小さくなっていく。そんな彼を目指して放牧されていた動物たちが集まっていく。彼が動物を愛するように、動物たちも彼を愛している。そう感じられてなんだかホッとするのだった。
動物らしさ シヨゥ @Shiyoxu
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