GOU

エリー.ファー

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 進むしかないのだ。

 すべてを失っても。

 進むしかないのだ。

「何を知っている。何もかも知っている。進むしかないのだ。足を止めれば死ぬぞ。殺されるぞ。誰かが見ているのに、ここで休憩か。いい気なものだな。誰もが見ているのに。いや、もうすぐそこなのに」

 掛け声が聞こえる。

「どこにいるのだ」

「どこにでもいる」

「何を欲している」

「何もかも欲している」

「社会風刺から始まる、赤い煙の中を生きている」

「死ぬぞ」

「座っても、進んでも死んでしまう」

「心が折れている」

「折れていない」

「いや、折れている」

「圧倒的な死が待っている」

「とにかく、逃げるべきだ」

「逃げて、逃げて、お願いだから」


 もしも、この部屋から出られないと思ったら、今を失うための準備をしてくれ。

 もしも、私のことを忘れてしまうのなら、風を数えてくれ。

 もしも、重要な滲み方を知らないのなら、学んでくれ。


「海はお好きですか」

「はい。釣りをよくしに行きます」

「海がお好きなのに、その海から奪っていくんですね」

「そういう意味ではないのですが」

「でも、意味は関係ありません。事実がすべてです」

「失うのか」

「いいえ」

「失わせるのか」

「そんなまさか」

「あなたは何人いるんだ」

「数えてみてはいかがですか」


 過ぎ去った真夏をメタ的な視点で追いかける。

 気が付けば、春である。

 放置された世界が、私を支えてくれる。

 あぁ、今日もここから出ないように生きていくしかない。

 自由にやらせてくれ。

 どうか、自由を与えてくれ。

 そして、何もかも奪わせてくれ。

 何もかもこの手の中に入れてくれ。

 我が儘だ。謙虚など一生、手に入らない。

 しかし。

 それが私を圧倒的にした。

 どうか今夜だけは悲劇を笑ってくれ。

 この喜劇を抱きしめて踊ってくれ。


「並べられた文字に形状などない」

「もはや、それは文字ではない」

「そう、ただの暗号だ」


 表現は歪だが、今を失えない。

 戦うために生きているとは思えない。

 人間の形をした悪意が、今も私を後ろから狙っている。


「発生が遅い」

「すみません」

「謝らなくていい、気づかれないように動け」

「はい」

「もう一回」

「はい」

「もう一回」

「はい」


 何故、一流なのですか。

 積み重ねたからですか。

 経験ですか。

 努力の仕方ですか。

 人との付き合いですか。

 肩書ですか。

 実力ですか。

 派閥ですか。

 仲間ですか。


 いえ、才能です。


「昨晩、映画を見たんです」

「アニメ映画です」

「コメディというかラブロマンスというかアクションというかホラーというか、なんというか」

「何でもいいんです」

「映画館には行かなくなってしまいました」

「ポップコーンを食べに行くような場所です」


 漫画が好きなんです。

 アニメよりも。

 絶望がいいんです。

 フィクションならね。

 あなたの人生は不幸まみれじゃないですか。

 こちらとしては、それを強く望むばかりです。

 運だけは良いもので。

 いくらでも戻ってこれます。

 嫌なら勝つしかないのではありませんか。

 でも、負けが見えているから足を踏み出すこともできない。

 悪魔も天使も人間も、皆があなたの無能さを知っている。


「冷たくしないでください」

「才能に体温があると思いましたか」

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