第4話
「アリィ、やっぱり卒業パーティーは欠席の方が良かったんじゃないの?不快な思いをして嫌だったでしょう?」
帰りの馬車の中で、愛しい彼女の髪を撫でながら僕は問いかける。
「エディは心配性ね。私はもう大丈夫よ、だってエディが傍にいてくれるだけで強くいられるもの。傷ついていた私を支えてくれて、ずっと愛してたって一生懸命伝えてくれた事がどれだけ私が救われた事か……ねぇ、私あの二人を見ても何も感じなかったの。もう私の中では過去の事になってるのよ……信じてくれる?」
「もちろんだよ、アリィ」
不安そうにこちらを見上げる彼女が、愛おしくて堪らなくてそっと抱きしめる。
ずっとずっと好きだった、大切な幼馴染。でも君には婚約者がいた。そしてその婚約者を心から愛してた。
だから僕は、君が笑顔で幸せでいれるならとこの想いを心の奥深くにしまい込むにしたんだ。
だけどあの元婚約者が不貞を働いていると聞いた時、僕は怒りで目の前が真っ赤になった。どうして、その手を取る権利を堂々と得ていながら自ら手放せるのか……
僕には全く理解出来なった。そして君から婚約破棄をしたと聞いて狡い僕はチャンスだと思ったんだ。
一度は仕舞い込んだ恋心を、もう見ないふりをしなくていいのだと。我慢する必要はないんだと。
あれが君を大事に出来ないのなら、僕が世界一大事に幸せにしようと心に誓った。
もう二度と、誰にも奪わせない。
そこから僕は父に相談し、自国にいるのは辛いだろうからと侯爵を説得して、アリィを僕の家で預かると申し出た。
もちろん表向きは療養という事にして。
もちろん、療養も目的の中にあるけれど、どうしても彼女に振り向いて欲しかった。
ただの幼馴染ではなく、一人の男として意識して欲しかった。願わくば僕の手を取って欲しくて……
でもやっぱり一番は、あの元婚約者に傷付けられたアリィの心が少しでも癒されてほしくて……
色んな感情でぐちゃぐちゃになりながら、アリィの到着を待った。
アリィが到着する日は朝からソワソワしすぎて、母上には少しは落ち着きなさいと叱られたけど、でも母上も父上も僕の長年の想いを知っているから、結局は苦笑して許してくれた。
大公家に到着した君は酷く憔悴していて、僕まで心が痛くてその傷ついた心が少しでも癒えてくれればと、思いつく限りの事をした。
もう一度君の心からの笑顔が見たくて。あんな碌でなしなんて忘れてほしくて。
少しづつ笑顔を取り戻してきた君に、思わず好きだと呟いてしまったのは許してほしい。
本当はプロポーズの為に色んなシチュエーションを考えていたんだけど、それすら全部吹っ飛ぶくらい君の笑顔が素敵で、改めて好きだなと思っていた事がまさか口から飛び出してたなんて思わなくて。
今思い出しても穴があったら入りたいくらい恥ずかしい思い出だよ。
でも君が驚きに目を見開いた後、顔を真っ赤にして俯いたから僕は不謹慎にも嬉しくて飛び上がりそうだったんだ。
だって君のそんな表情、幼馴染の僕は見た事なかったから、本当に嬉しかったんだ。
もしかして異性として意識してもらえたのかな?と期待もしたんだ。
それからは自分の気持ちに蓋をするのを辞めて、君にこの想いが少しでも伝わってほしくて。出来る事ならこの手を取って欲しくて、誰にも言った事のない甘い言葉を囁いたりして……
日に日にアリィが僕を意識してくれているのを実感して、僕を見ると照れたように微笑む君を見て、君の心が少しでも癒されてほしいと、幸せでいてほしいと思っていたのに、いつの間にか僕自身が幸せで同じ空間に君がいる事がこんなにも幸福に満ち溢れているなんて、以前の僕は知らなかった。
だから以前の僕にはもう二度と戻れないとも思ったんだよ。
アリィに改めてプロポーズした時、受けてもらった瞬間は一生忘れられない想い出になったんだ。
——アリィ君を愛してる。
僕は君しかいらないんだ。他の誰もいらない、アリィがいいんだ。
僕の一生をかけて君を幸せにすると誓うよ。きっと誰よりも幸せにすると約束するから、ずっと僕の隣にいてね。
「アリィ、愛してる」
「エディ、私も愛してるわ」
end.
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