第2話 プロローグ2

――あぁ、どうやら今回の世界もダメらしいな。


というのが、今回の感想だ。


見渡す限りに、酷く荒れ果てた世界が広がる。空は夜でもないのに真っ暗だ、オマケに何やらヒビが入っている。


判っているんだ。私と言うのは、絶対的な悪であり、厄災の象徴であり、災禍を齎す存在。

私の内に巣食う禍根や憎悪、悪の感情は世界を貪る。

貪ったものを我が糧とし、次なる餌を求めて世界と世界の間を跳躍する。

時に、勇者と呼ばれる人間を殺した。

時に、魔王と恐れられる魔族…いや、人間を殺した。

時に、神を殺した。

時に、世界事崩壊させた。

時に…そう。私は世界に終焉と破滅を齎す存在。終焉意志である。私の存在意志が終焉と破滅である限り、私に平穏と安息などほど遠い。

嗚呼、私の心さえも破滅し、完全な終焉の怪物と成れればどれほど楽だっただろう。

禍福は糾える縄の如し。と言うことわざがあるらしい。災いと福は縄をより合わせたように入れ替わり、変転する。そんな意味だった筈だ。

災いと福が入れ替わるのなら、次は幸せに生きれるのだろうか?平穏に生きられるのだろうか?だが、幸せを傍受するのは私では無い。私は幾千万もの世界を、そこに暮らす人間を生命を殺し続けた。幸せを望もうとする資格すら無い。

だったら、もう終わりにしよう。世界を貪るだけ貪り、崩壊させ、自分だけ生き残り、幸せを望むなど余りにも烏滸がましい。ならば、この世界と共に死のうでは無いか。

無理心中させてしまう形になったこの世界には悪いが、少なくともこれ以降の全生命に、世界に迷惑を掛けはしないだろう。

もっとも、これも私の独りよがりなんだろうな。


――だが、最後に謝罪をしたかった。あの少女に。そして、感謝を伝えたかった。唯一優しくしてくれた、あの少女に。


世界は暗黒の光に呑まれ、まるでシャボン玉が弾けるかのように、静かに消滅した。















































筈だった。























――――………何処だ?此処は?何故私は死んでない?まさか、死ななかったというのか?世界の崩壊に吞み込まれたと言うのに?


視界は暗い、真っ暗だ。


そう思った刹那、世界が光を取り戻す。

視界が明瞭な物へと変わっていき、知覚出来るようになった。


家に…居るのか?私は家を持っていない筈だ。だが、この部屋は見たことがある。

――…あぁ、あの…少女の部屋か、と懐かしい思い出に浸っていると同時に納得していると、視界が自分の意思に関係無く動いた。


なんだ?と思うよりも早く自分の体が声を上げた。


「お母さーん!そろそろ私の加護見に行くのー?」


子供の元気で、無邪気な声だった。



―――この声は……そう。私に唯一優しくしてくれた少女の声だった。


どうやら私は、少女――リリィの体に入り込んでいるらしい。

それも、世界が巻き戻ったような状態で、だ。


感動も嬉しさもある。だが、それ以上に彼女の精神の中に私と言う厄介で危険極まりない爆弾を抱えさせる事の申し訳なさを感じていた。


だが、こうなったからには私は少女を、リリィをどんな厄災からも守り抜かねばならない。その責任がある。

あの時私自身が残した禍根は、リリィの幸せを見届けるまで残り続けるのだろう。




◇◇◇◇◇SIDE:三人称視点◇◇◇◇◇


その時、イシス魔導王国では当代の勇者の召喚の成功を祝う、盛大な祝賀会が行われていた。

――だが、転生したものの、特に訓練も積んでいない一般人がチートを与えられただけで世界を救えるのか?という疑問は読者諸君等にあるだろう。当然の疑問だ。

だが、その疑問はこれを読んでいく上で何れ解消されると思っているよ。

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