UFOinTHEsky
亜未田久志
第1話 UFOは「いるよ」
青き遥かな空高く昇る飛行機雲。追いかけるとそこに居たのはそう。
「影」
遥か昔、アダムスキーが宇宙人を見つけたその日から、全ては始まったんだ。遥か彼方へ飛ぶ影を追いかけて。世界を巡る戦いが始まったんだ。
「俺の夏休みは何処行ったーーー!!」
金髪が似合わない少年がそう叫ぶ。如何にも『高校生デビューしました!』と言った風貌の少年が。
「夏! 女! スイカ! ナンパ! なにもないじゃんかよ!」
田舎にそんなもんはないと告げて蝉が一匹飛び立った。
「じじじ、じゃねーよ。ふざけやがって」
夏休みにチャリをこいで坂道をのぼる彼には水玉の汗が浮かんでいた。
「あー、女の子とか振って来ねーかなー」
がつん。鈍い音がした。頭の骨と骨がぶつかり合って鈍い音を響かせた。チャリごと倒れた。少年と少女の意識は遠のいていた。
《空白》
痛い痛い痛い、苦しい苦しい苦しい、視界がブラックアウトしていく。
「うわ、うえ、なんだ!? 苦し……くない」
「わっ」
「ぎん……いろ……!?」
はっ、と一呼吸。置いて一言。
「……おはようございます」
「……お、おはようございます」
銀髪のよく似あう少女は金髪が似合わない少年にそう挨拶した。それが
二人は十字に重なり合い、チャリはどこかへ消え去り、道の真ん中に取り残されたてしまったかのように。
(っべー、どうすっかなー、超美少女だけど、ナンパのチャンスではないなー)
そんな事言っているから童貞なのだ。いい加減、上に乗られているのがきつくなってきたのか。田井中は。
「えっと、どいてくれる?」
「あっ、ごめんなさい」
と言って二人は道の真ん中で対峙する。じっと。
「……あのー……なんで上から?」
「……えーとー……その私、宇宙人でして」
「ハーソッカーウチュウジンカー」
「むっ、その顔は信じてませんね。UFOだって呼べます。というかUFOから落ちて来ました」
まじまじと田井中はフィルの恰好を改めて見やる。それは――
「軍服? にしてもなんかごついな」
「対G性能が……じゃなくて、あんまり見ないでください」
「はぁ、ごめんなさい」
「ほら呼びますよ、UFO、心の準備は、おーけー?」
「……おう」
フィルが懐からペンライトのようなものを取り出した。それはまるで。
「ベータカプ●ルか?」
「ち、ちがわい! 怖い事言うない!」
「怖い?」
「いいから! 見てて!」
スイッチを押すと光だす。
「やっぱりベー……ペンライトじゃん」
「み! て ! て!」
すると風が吹き出した。その風は近づいて来る。轟音を立てて近づいて来る。音より速く。ソレはやって来た。くるくると弧を描いてやってきた。そうしないと減速出来ないのだ。それは紛れもなく。
「戦闘機じゃん」
「UFOです! こんな角ばった戦闘機がありますか?!」
「ステルスなんでしょ」
「ぐぬぬ、現代知識の浅さ広さよ……恨めしや……」
一体この少女は何と戦っているのだろう。色んな意味で。
「そっか、パイロットさんだったのか」
「ちーがーいーまーすー」
「階級は?」
「あっはい、フィル・エバートゥモロー軍曹であります」
名刺を渡される田井中。あ、これはどうもご丁寧に。と受けとる。そこには色んな部署名がびっしりと呪いの札の様に書き込まれており不気味になって田井中は後でそれを捨てる事を決意した。
「俺は田井中零士。フィルさん……でいいのかな」
「あっ、フィルで結構ですよ、どうやら年上のようですし、それで……」
「それで?」
「此処は何処でしょう?」
思わず田井中は「地球だよ」と言いかけた。
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