第47話 球技大会
プラティカル・エールから2週間後、また新たなイベントが始まろうとしていた。
「球技大会を開催する」
「「普通だー!!」」
教室内で歓喜の声が上がる。
それもそのはず。学校らしいイベントなど入学式くらいしか無かったといっても過言ではない。
「先生ー! 競技は何ですか?」
遠藤が幼い子供のように目を輝かせて問いかける。
「1年生はバスケットボールだ。チームごとにトーナメント方式で戦ってもらう。普通だと言ったなお前ら、舐めてんのか~? 勿論セルフマネーシステムに影響を及ぼすものだ」
「「えええぇ~~」」
「えええぇ~~じゃない。1Dで勝ち上がったチームは1Aから1Cの勝ち上がったチームと戦える権利が生まれて、1回でも勝てば探偵ランクが上がる。今回はデメリットがほぼ0のイベントだ~、ぼちぼち頑張れよ。ああ、それと正当な理由がない限り強制参加だ」
クラスの空気はいまいちだった。それもそのはず、1A天道飾は飛び級プラチナクラスかつ十探帝。探偵クラスがシルバークラスまたはゴールドクラスになったところでと思う者も多い。
オレはクラスのみんなが騒ぎ始めた隙に、久遠に1つのメールを送った。
『球技大会、久遠チームは参加しない……』
昼休み。
いつものように久遠チームで購買で買ってきたパンを4人でかじりながら方針を固める。
「私はもう完治したよ!」
神代がブンブンと腕を回して元気アピールをしていたのを申し訳なくも1つの提案をした。
…………――――――――――――
「そうね……今回、先生も言ってたけどデメリットが無い。私たちはあの件を見極めなければならないわ」
「そうだ。最後に勝てればそれでいい」
「そうだね……」
「どうした神代? 顔色悪いぞ?」
「あっいや……! ちょっと残念ってだけ。ほら私体育系だし?」
「それはすまない」
「いいよ、修多羅とかまだ治りかけのようだし」
「すまない」
◇
放課後、体育館では多くのチームが球技大会に向けて練習や作戦会議を進めていた。
黒牙チームがコート半面を使ってアップを既に始めていた。
「黒牙ちゃ~ん♡ こっちこっち♡ ナイスパス♡ 死ねええェ!!!!」
黒牙から受け取ったボールを空中でキャッチしてそのままわけの分からない掛け声とともに直接ゴールに決めた。
クラスの違う他のチームまでもが口を開けて山ちゃんのプレイに釘付けになっていた。
「す、すごいな山ちゃん!! なあ、俺にも教えてくれよ今のダンク!」
「赤星ちゃんにはまずレイアップシュートを教えてあ・げ・る♡」
ガタン――!!
「夏目~~~~!!!! 何ハズしてんのよォ!!!!」
遠くから放たれたボールが惜しくもゴールにならなかったのを見て山下は怒鳴り散らかす。
「「えぇ……」」
他クラスの生徒たちがドン引きする中で1Dはいつもの光景に笑いを弾ませている。
1Dたちの練習を2階のベンチで1人静かに見ていたオレの隣席に久遠が腰かけた。
「1D優勝候補。黒牙チームは強いわね」
「ああ、動ける男が3人(そのうち1人がバケモノ)で夏目も劣らずついていけてるしな」
「この練習はあなたの指示でしょ?」
「……」
「無言ってことはやっぱりそうなのね。また勝手に動いてるでしょ? 話しなさい」
「これは黒牙と夏目からの提案だ。それにオレはまだ答えを出していないがな。優勝候補チームは何らかの形で裏切り者に妨害をまた受ける」
「単純な考えね。黒牙チームを私たち久遠チームで見張れってこと?」
「実は探偵試験の時にもその作戦を静かに行っていたが、何も得られなかった。だから今回からは別のやり方で裏切り者を炙り出すしかない」
「それはかなり難しい。今回裏切り者が邪魔をしないかもしれない」
「……そうだ」
「何かあるの?」
「今回のプラティカル・エールでケガをしたのは久遠や修多羅、神代だけじゃない。ほら、見てみろ神宮寺と遠藤は足にテーピングをして、コートの外で指示を出している。夏目はさっきからシュート練習しかしてないのは利き手を使っていないからだ。利き手じゃない左手でも決められるように頑張ってるんだろ」
「!?」
「隣コートの1Bも同じようにケガをしていた者がちらほらいる。さっき1A、1Cの練習体育館も見てきたんだが……」
「それってどういうこと?」
「1Cだけがケガ人0だったよ。プラティカル・エールは決して楽な試練じゃなかった。おそらく1Cは夏休み終了時点で先生と球技大会までの情報をポイントで受け取っていたんだ。そしてさらにプラティカル・エール訪問先の選別。1Cは安全な探偵事務所を選ばせたんだ。ほら、見てみろ」
オレは前に黒澤先生から受け取った訪問先リストを久遠にも共有した。
「何……これ? 全部地方で体育系事務所は無いじゃない……」
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