裏:探偵たちの学園祭

第27話 探偵祭

この名探偵育成高等学校にも学園祭と呼ばれるものが存在する。探偵祭といい、学園内の生徒、教師のみで行われる。

2日間、全ての学年のA、B、C、Dがチームとしてそれぞれのお題試練で競い合う。

1年生は暗号解読から犯人を見つけだす試練、2年生は脱出ゲーム試練、3年生は仮想現実内で何らかの試練がそれぞれ発表された。このお題は毎年ランダムに決められるらしい。


「2年生のDクラスと3年生のDクラスが同じチームということね」

「そうだな。暗号を自分たちで作れってことか?」

「そ。暗号を作って、その答えかヒントをもとに犯人を探す。犯人もクラスから選ぶことになる」

「なるほど、自分たちのクラスの犯人を他のクラスの人たちに探されないようにするってゲームか」

「そんなところね、だからといって難しすぎるのは駄目らしいわ。誰も解けない暗号を作ってしまったクラスは減点対象」

「暗号ってのは本来しかるべき人にだけ解かせるものだ。誰も解けないようなものはそりゃあ駄目だろうな」



まず、1Dが出す暗号とその犯人を決めた。犯人はクジ引きでオレに決まってしまった。ただ学園内を歩き回ればいいのだが落ち着けない2日間になりそうだ。

そして、オレを探すための暗号内容は次のようになった。


【1D暗号 ヒント:目の前の机のキーボードと英単語帳】


教室に入ってすぐの場所に机を置き、その上にはW、T、Y、U、A、V、Mキーを外したキーボードPCに置いた状態にし、その隣には学校指定の英単語帳を置くことにした。

考案者は神宮寺チーム。きっと英語が好きな者が考えたんだろう。


「なるほど、だからオレがこの服を着るってことか」

「そ。勿論私たちもカモフラージュのそれに似た服を着ることになる」


黒牙はちょうど悩んでいたクラスTシャツをそれにすることにした。

前日になり、クラスTシャツ件暗号カモフラージュの服が届き、早速着替えている生徒もいた。久遠チームでは当たり前かのように神代が自分の服を着ている。


「ほらっ! 私の、brilliant!」

神代は黄色い生地のTシャツの胸の真ん中にbrilliantと書かれたものを見せびらかしていた。

「はいはい、輝いてるよ、と」

クラスを見渡すと他もカラフルなTシャツに何やら英単語が書かれていた。

「修多羅は何の単語にしたんだ?」

「cleverにしたよ、ちょっと恥ずかしいけどね」

「いや、修多羅に似合ってるぞ。神代を見てみろ、アレよりましだろ」

「は!?」


黒牙はunity、神宮寺はbeautiful、千藤はcheerful、神永はlabelとある。自分たちの好きな単語、自分を表す単語を選んでいるようだ。神永はそのままラベル、付箋? とかの意味だが何か意味があるのかよくわからない。


「久遠は何の単語にしたんだ?」

「revive」

「ん? どういう意味だ?」

「別に」

「ふっ、神永と同じような理由ってわけか」

「違うわよ!」

「へいへい」


他のクラスの暗号を解いて犯人を当てた場合、当てられたクラスはマイナス1ポイント、当てたクラスにはプラス1ポイントが入ることになり、1年生におけるA、B、C、Dクラスの順位が決まり、2、3年生もそれと似たようなポイント制で順位が決まる。それを合算した順位によってポイントが配分されるという。


「1位は10000ポイント、2位は9500ポイント、3位は9000ポイント、4位は8500ポイントだ。いい加減この学校にも慣れてきたな」

「最初は金欠ラインで卒業までいくのかと思ってたけど、お金を貰えるチャンスは想像以上に多いわ」

「ああ、だが貰えるチャンスはあっても勝たなければ貰えない。強いやつらが大金持ちになるシステムだな」


その日の放課後、準備を終えた1Dは解散。オレも寮に帰ろうと思い、バッグを持った瞬間声をかけられた。


「天道~、少し協力してくんねーか? この探偵祭の2日間」

話しかけてきたのは黒牙チームの赤星隼太はやただった。

「ん? オレは犯人役だからな。あまり大きなことはできないぞ」

「大丈夫だ! お前……その神代さんと仲いいだろ? 同じ久遠チームだし」

「そうだけど、神代呼んでほしいのか?」

「あぁー!! ちょっと待て! その……なんだ」

「好きなんだな、神代のこと」

「ああ……そうだよ!」

意外だな。神代は顔は良い方だが性格は見ての通りお子様というか何というか……まあ好みは人それぞれだ。

「仲良くなりたい的な頼みならリーダーの久遠に頼めよ。オレはそもそもそういうのは得意じゃない」

「だってよ~! 久遠さんちょっと怖くね? 高嶺の花というかさ」

「まあオレもそう思う」

「なら頼むよ! どうせ明日とか久遠チームでまわるんだろ? 少しの間だけ時間を作ってくれ」

「……努力はするが失敗しても恨むなよ、ほんとに」

おそらく探偵祭は久遠チーム全員ではまわらないだろうな、久遠はきっと他クラスの暗号を解きに走り回るだろうし。とりあえず修多羅にこのことを話して神代と赤星を入れた4人で行動することになりそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る