再上映
月花
再上映
好きだった人が化けてでた。
神様仏さまに三下り半を突き付けられたのか、うっかり成仏しそこねたらしい彼は、現世にとどまることを決めたようだ。初恋相手が地縛霊にジョブチェンジするなんてどこの誰が予想できただろう。
でも私が扉を開けた時にはもうそこにいたのだからしかたない。ずいぶん薄っすらとした彼に、私は「今日も早いんだね」といつもの挨拶をする。
彼は朝から夜までずっとそこから動けないだけなのに。
部室の電気はつけないままで、私はプロジェクターのスイッチを押す。見たかった映画のディスクを入れて、向かいのソファにどっかりと腰を下ろした。
破れかけたぼろぼろのソファは、それでも座り心地がよかった。一年前にみんなでお金を出し合って買った中古の一四千円のソファ。今となっては私ばかり座っているから、もしかすると返金した方がいいのかもしれない。
タイトルがスクリーンいっぱいに映し出された。私はぼんやり眺めながら、「やだ、飲み物忘れちゃった」と思い出したように呟いた。
「ちょっと待ってて、藤村くん。コーラ買ってくる」
やっぱり映画にはコーラでしょ、と笑う。停止ボタンを押してからよっこらしょと立ち上がった。窓際に立っている人影は振り向きもしない。私が藤村くんと呼ぶそれは、今日も穏やかな目をして外を眺めているだけだ。
財布だけ持って私は部室を出る。やっぱり彼は何も言ってくれない。
藤村くんが私たち映画サークルの部室に現れたのは、彼が死んでから七日後のことだった。
最初、精神科医にかかった方がいいのかなと思った。毎日泣きもせずにぼうっとして、疲れてしまったから、変な夢でも見ているのかと思ったのだ。けれど彼の姿は確かにそこにあった。いつもにこにこ優しかった藤村くんは、あの日から何も変わらない姿で立っていた。
藤村くんらしき幽霊は何も喋らない。
私が話しかけても、手を振っても、鼻をつまもうとしても、私なんて見えてないみたいな顔で窓際に立っているだけ。酷いな、神様。この世知辛い現代ではコミュニケーションが一番大事だっていうのに。
もしかしたら見えているのは私だけじゃないのかもと思った。
だからたった三人の部員――1人は死んじゃったけど――の一人である後輩、紺野も連れてきた。扉の前で「どうかな」と訊いてみる。私が紺と呼んでいる男の子は、私をかわいそうなものでも見るような目で見た。
「柚木先輩、ちゃんと寝れてないんですね。小豆のホットマスク買ってあげましょうか?」
「どうせならラベンダーのオイルみたいなお洒落なのちょうだいよ」
紺は「先輩っていう存在がお洒落じゃないので」と真顔で返してきた。本当に失礼極まりない後輩だった。
「そっかあ、紺にも見えないか。本当に私だけみたいだよ、藤村くん。どうしよっか」
「これ近くの精神科なんですけど」
「調べなくてよろしい」
私だって最初から信じていたわけではない。死んだはずの藤村くんが何食わぬ顔で立っていたもんだからちゃんと動揺したし、自分のこともたくさん疑った。
なんなら怖くなって「お邪魔しました」と早足で家に帰ったくらいだ。それで次の日に恐る恐る覗いてみたら、やっぱり藤村くんがそこにいたから、もう信じるしかない。
「最初は悪霊かなって思って塩まいてみたんだけど」
「先輩って割と容赦ないですよね」
「それでも全然消えてくれないんだもん。困っちゃうよね」
私はへらへら笑いながらプロジェクターの準備をする。紺はあまり嬉しそうな顔をしていなかったけれど、私はずっと見ないふりをしていた。
藤村くんがやってきて4ヵ月。紺はだんだんと部室には来ないようになった。それでも私は毎日のように通って映画を再生する。だってあんなに映画が大好きだった藤村くんが映画を見れないなんて、それこそかわいそうだと思ったのだ。
死んだって、成仏できなくたって、好きなものは好きなままだろう。
私がまだ藤村くんを好きみたいに。
私たちの映画サークルを作ったのは藤村くんだ。
私たちは同じ文学部で、1年生の4月のときたまたま席が隣になった。私が休憩時間に映画のレビューサイトを見ていたら、彼の方から話しかけてきたのだ。
彼は「サスペンス好きなの?」と言った。びっくりしてしまった私が無言のままでうなずいたら、「ユージュアル・サスペクツって見たことある?」と重ねて訊いてきた。
「まだない」
「すっごく面白いよ」
彼はにこりと笑って、財布を取りだした。お札の向きがちゃんと揃えられたその中から、レシートのようなものを抜き出して私の手のひらに乗せる。「あげる」という言葉と一緒に。100円オフのクーポンだった。
「僕、駅の裏にあるTSUTAYAでバイトしてるんだ」
正直、どうしようかなと思った。
知らない人に話しかけられて、かと思ったら突然クーポン券を握らされたのだ。とっさの愛想笑いも出てこなかった。私が困ったみたいに瞬きしてたら、彼は「藤村湊。フランス文学専攻」と付け足すように言う。
「私は」
「柚木凛子さん。英文学専攻」
思わず「え」と声をあげてしまった。彼はいたずらっぽく笑って「でしょ?」と小首を傾げる。
「なんで知ってるの。私たち、どこかで会ってた?」
「歓迎会のときに隣に座ってたから。ほら、入学式の日の午後にあったやつ。そのときも君は映画のサイト見てた。なんだったかな、マッチスティック・メンだった気がする」
「覗き見防止シール買おうかな」
「その方がいいかもね」
「あと私サブスク派なんだけど」
藤村くんはくすくす笑って、「ごめんね」と言った。
「ほんとはずっと話しかけてみたかったんだ、君に。だから今日は君の隣に座ってみた」
彼はちょっと照れくさそうに笑う。
私はなんにも言えなくなって彼の目ばかり見つめてた。細められた彼の目は、少し茶色がかっていて綺麗だった。そういうことストレートに言っちゃうところが彼の長所で短所であることを私はのちに知る。
とにもかくにもこれが私と藤村くんの出会いで、映画サークルの原点で、私の初恋の始まりだった。
私たちが二年生になったころ、紺という後輩ができた。紺はサークルに入るつもりなんてなかったと言うけれど、私たちが新入生にビラを渡せないで隅っこにいたら、紺が仕方なく受け取ってくれたのだ。
紺はなんだかんだと文句を言いながらも、映画サークルに入ってくれた。こう見えて意外と可愛いやつなのである。
あるとき、紺はコーヒーを飲みながら言った。
「柚木先輩って、なんで藤村先輩と付き合わないんですか」
私はコーラを飲んでいたから、半分くらい噴き出した。紺は「うわ、きたなっ」と2メートルくらい離れていく。ゴキブリを見つけたときと同じ反応だった。
「な、何の戯言を」
「戯言って」
紺はティッシュ箱をぽーんと投げながら、「だってどう見ても両想いじゃないですか。付き合うならさっさとしてくださいよ。見せつけられてる俺の身にもなってほしい」と言った。私は「変なこと言わないでよ。コーラが鼻に入った」と涙を浮かべる。
「藤村くんはそんなつもりじゃないかもしれないじゃん」
「つまり先輩はそんなつもり、と」
「あっ」
彼は肘をつきながらニヤニヤ笑う。「騙したな」とティッシュ箱を投げ返すと、「落とし穴を自分から踏み抜く人ってあんまりいないですよね」と軽やかに避けられる。
「真面目な話、早く告っちゃえばいいじゃないですか」
私はうっと言葉に詰まった。そんなこと言われたって、できないものはできない。藤村くんはいつだって私に優しいし親切だけれど、それは誰にだってそうなだけかもしれないし。
それに私はこの部屋で一緒に映画を観ていられるならそれで満足だ。120分だけは彼の隣に座って、同じスクリーンを眺めていられるんだから。
私は心の中だけで呟いたのに、紺は見透かしたみたいに鼻で笑って、「高校生じゃないんだから」とペットボトルのキャップを指先で遊ばせる。
「先輩がもたもたしているうちに、藤村先輩が彼女作っちゃたら? それで記念日のプレゼントの相談とかされるんですよ。化粧品のブランドってよく分からないんだよね、柚木さん詳しかったりする? とか言って」
「それは本当に言いそう。そして私は詳しくない」
「でしょうね」
私は「あー」とか「うん」とか意味のない言葉を発しながらソファに寝転がった。そりゃあ藤村くんが知らないうちに彼女作って、写真とか見せられちゃったら、たぶん3日くらい大学に来れない気がする。紺を引きずって焼き肉とかやけ食いしちゃう気もする。
面倒ごとになりそうな予感を察知した紺は、「ま、どうせそんなことにはならないけど」とため息交じりに呟いた。
「ホント、さっさと付き合えばいいのに」
そのときの私は「勝手なこと言わないでよ」とか「他人事だと思って」とか言ったような気がする。だってその三日後に藤村くんが死んじゃうなんて、どこの誰が思うのだ。
試験が終わって夏休みになっても私は部室に通った。紺は一度も顔を見せていない。
その日は昼間に友だちと近くのカフェに行って、それから大学行きのバスに乗った。こんな時間に大学前のバス停で降りる人は私以外にいない。日差しはじりじりと私の首筋を焼く。日陰を通りながらサークル棟へ。
部室まで歩きながらポケットの中に入っている鍵を探していたら、人の声がした。なんとなく聞き覚えのある声だったので、私は足音を立てないように部室の前まで歩く。
「やっぱり俺には何にも見えないんですけど、柚木先輩に言わせれば、今もそこで独居老人みたいなことしてるんですよね」
紺の声だった。私は扉の前で立ち尽くす。
もし「何デカい声でひとり言いってんの」と言いながら入っていったら、「先輩の真似」って言いながら笑ってくれたかもしれない。きっとそうするべきだった。なのに何を血迷ったのか、私は黙ったままそこにいることにしたのだった。
ソファの軋む音がした。
「先輩はさあ、なんで幽霊なんかになっちゃったんですかね」
紺は短く笑う。
「もっと映画観たかったとか? 年中無休であれだけ観てたくせにまだ足りないとか冗談でしょ。映画ジャンキーかよ。そんなもんあの世のTSUTAYAにでも通えっての。いや、あの世にもTSUTAYAくらいあるでしょ、たぶん。知らないけど」
そんな無責任なこと言って本当に成仏しちゃったらどうするんだ。TSUTAYAがなかったら藤村くん絶望してもう一回くらい死んじゃうって、と私は心の中でツッコむ。
缶コーヒーを開ける音がプシュッと響いた。少しあって、紺は「本当なんで幽霊なんかになっちゃったかなあ」と呟いた。悪戯した子どもを叱るみたいにそう言った。
扉の隙間から中を覗いてみる。紺は天井を仰ぎながら、大きくため息をついていた。
「もしあんたが柚木先輩のこと好きだったって言うなら、さっさと消えてくださいよ」
迷惑なんです、と彼は言う。
「もう死んでるくせに」
瞬間、ガチャンと鍵が床に落ちた。私の手から滑り落ちた銀色のそれは夕陽を反射しながらキラキラ輝いていた。私は慌てて拾おうとする。けれどバタバタ足音が鳴って、扉は勢いよく開かれた。紺はびっくりしたような顔で私を見下ろしていた。
私は「偶然だね。私は今きたところ」と馬鹿みたいな嘘をついた。紺は本当に呆れたように眉を下げて、「そうですか。俺も今きたところです」と返した。嘘つけ、と私は言う。
「先輩って間の悪い人だなって心底思いますよ」
ねえ、紺、と言いかけた私を遮るように、彼は私の手首を掴んだ。ぎりぎり、ちょっと痛いくらいに。引きずられるみたいに立ち上がらされたと思ったら、そのまま引っ張られるから歩くしかなかった。
外の夕陽はとても眩しくて暑かった。
蝉が甲高く鳴いていた。
たったの7日間しか生きられないって分かっていたら蝉だって必死にもなるだろう。それを思えば藤村くんは長く生きたものだ。蝉と比べるなんてナンセンスだって言われたら、それもそうだけれど。
紺は私を近くのスタバまで連れて行って、フラペチーノを私の前に置いた。「先輩はそれでも飲んでろ」と不機嫌そうな顔で言って、しばらく仏頂面のまま隅っこを見ている。
私の両手はすごく熱かったし、空調もあまりきいていなかったから、シャリシャリの氷はすぐに溶けてなくなってしまった。
紺は私がバスに乗るところまで見届けてから帰っていった。けれど私は次のバス停で降り、歩いて大学まで戻る。人の善意を踏みにじったランキングを作るなら、今日の一位は私だっただろう。
部室の扉を開ける。今度は鍵なんて落とさないように。
「今日は何の映画がいい? 紺は見せてくれなかったでしょ」
私は棚の前でしゃがみこみんでブルーレイを漁る。指先でつまんだディスクをセットして、いつものようにソファに座った。コーラはなかったけれど別にいい。そんな気分じゃなかった。
「紺は冷たいこと言うよね。いつもズケズケと本音と正論ばっかりでさ。私はそういうところあんまり好きじゃないんだ。人間、オブラートで包んでほしいときの方が多いよね」
その点、藤村くんはとても優しい人だった。
少なくとも私は、それを優しいと称していた。
「本当のこと言うね。私は嬉しいよ」
私はきっと酷い人間だ。藤村くんが成仏できずに毎日毎日、こんな埃っぽい部屋にいるしかないのを喜んでいる。もし紺が聞いていたら「最低だ」って私の目をまっすぐに見ながら言っただろう。
それでも私はよかった。
酷くても、最低でも、藤村くんがそこにいてくれるだけでよかったのだ。
「しょうがないじゃん、だって会いたかったんだもん。あと1回でも、何回でも」
私は鼻をすすった。黄色のロングスカートにぽつぽつとしみが浮かんでいく。気づいたら私は泣いていた。それはもう子どもみたいに、ぼろぼろ涙をこぼしてみっともなく。
藤村くんが死んじゃってから泣いたのは初めてだった。
ずっとずっと泣けなかった。なのに今になって未練がましく泣いていた。
映画は私の気持ちなんて置いてけぼりにして、勝手に進んでいく。バタフライ・エフェクト。主人公は過去へ戻って何度でもやり直す。私だってそうしたかった。あの日の藤村くんに会って言いたかった。
幽霊の藤村くんじゃなくて、身体のどこも透けていないあなたに。
どうしてかふと顔をあげる。
窓の外ばかり見ているはずの藤村くんが、私の方を向いていた。
え、と短い声をあげる。目の端にたまっていた涙がぽろっとこぼれた。差しこむ月の光が柔らかかった。
「私の声が聞こえてるの」
静かに訊く。彼はいつもみたいに目を細める。輪郭が照らされる。
「どうして死んじゃったの、藤村くん」
気づいたらそんなことを口にしていた。一度言ってしまったらもう収まらなかった。「馬鹿だよ。酔っ払い助けようとして自分だけホームに落ちるなんて。藤村くんが身代りになってどうするの」と非難する。
彼は言いわけもせずにちょっとだけ肩をすくめた。「他の誰だってよかったのに、なんで藤村くんだったのよ」と私はまた酷いことを言ってしまう。深呼吸したつもりなのに息は引きつった。
「藤村くんは幽霊になってまで何がしたかったんだろうね」
ソファの背もたれにもたれかかる。
藤村くんの足が動いた。右足がひょいっとあげられて、前へ。生きてる人みたいに歩いてくる。足先は透けていたからどんな靴を履いているかはわからなかった。
彼は私の隣に座った。やっぱり身体は透けたままで、向こうにあるスクリーンがぼんやりと見えてしまっていた。映画はクライマックスだ。
私たちの肩先はくっついていたはずなのに少しも温度を感じない。そんなことが無性に悲しくて、私はまた少し泣いてしまった。
「ねえ、藤村くん、私ずっと訊きたかったことがあるの」
声はちょっとだけ震えていた。
「私のこと好きだった?」
藤村くんは迷うことなくコクンと頷いた。そして唇をうっすらと開いて、ぱくぱくと動かした。ゆっくり、「すきだよ」と。
そっかあ、と呟く。
そっかあ、そうだったんだ。
ちゃんと生きている間に聞きたかったな。もう死んじゃってる人にそんなこと言われたってどうしようもない。どうしようもないのよ。私は生きてる藤村くんじゃなきゃ駄目だったの。死人に恋したって虚しいだけなんだから。
「あなたのこと本当に好きだったよ。すごく好きだった。たぶん初恋だったの。……どうしてくれるのよ、藤村くんのせいで全部めちゃくちゃなんだから。ずっとあなたことばかり考えていて、頭の中はそれでいっぱい。なんにも楽しくないの」
毎日、毎日、日付が変わって、月が変わって、季節が移ろって、いつの間にか夏になって――それでも私の世界は藤村くんに支配されている。
きっと紺はそれに気が付いていたし、それがとても悲しいことだと知っていただろう。私だって知っていた。それでも自分じゃどうしようもなかった。
藤村くんが、そこにいる。
それだけで私は心を傾けられずにはいられないのだから。
私は目元をごしごし擦った。肌がこすれて痛かったけれど、私はできるだけせいいっぱい笑ってみせる。
「だからもう会わない」
藤村くんはもう1回だけ唇を動かした。「すきだったよ」と囁いて、そしてスクリーンを振り返る。エンディングまで静かに見届けた彼は、私のことはもう見ずに消えていった。
1人だけになってしまったソファに身体を沈ませて、私は細く息を吐いた。
長い夢でも見ていたみたい。
すごく幸せな夢だったんだと思う。
でもそろそろ目を覚ます時間だ。私はプロジェクターの電源を落とした。
いつの日だっただろう。
ちょうど1年前の夏だった。藤村くんと映画館に行った日があった。よく晴れた、真夏日だったのを今でも覚えている。
帰り道、藤村くんはぽつりと「好きだな」と言った。ひとり言みたいに。思わず私が訊き返したら、あなたは慌てたみたいに目を逸らしたっけ。
「映画! 今日の映画、面白かったなって」
思い出して少しだけ笑ってしまう。
私も好きだったよ。映画も、あなたも、全部。
再上映 月花 @yuzuki_flower
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます