第12話 嫉妬混じりの視線
岸沼君の言葉を奪って、私の思惑通りに進められそうな具合になって、ホットしてから気付いたけど……
そういえば、私、今朝、岸沼君に助けてもらっていたんだ……
まさか、自分にクラスメイトの女子達からの言葉の刃があんな風に向けられていたなんて、思いもしなくて……
あの時、岸沼君の発言が無かったら、私、教室内に足を踏み入れずに、いそいそと帰ってしまっていたかも知れない。
一度引きこもってしまったら、『微笑み係』も、学校へ行くのも億劫になって、何もかも投げ出したくなってしまっていたかも。
『微笑み係』に関する悩みは、まだ付いて回っているけど、自分に関しては、最悪の事態は免れる事が出来ていたんだった……
岸沼君のおかげで……
それなのに、ずっと自分の事で頭がいっぱいになっていて、まだ岸沼君にお礼も言ってなかった。
「ありがとう、岸沼君」
今更だけど、取って付けたように言ってしまった。
「何がだ?」
急に、お礼だけ言っても分からなかった……?
「あっ、今朝の事だけど……」
「別にいいよ」
私の方は、昨日の今日で、ちょっと言い難かったんだけど……
岸沼君は、私なんかの言葉のせいで、もちろん赤くなる事なんて無く、いつものように淡々と返してくるだけなんだよね。
こんな風にして、私は何度も、岸沼君から志原君への気持ちを確かめる事が出来てしまう。
そして、その度に、何だか悔しいような惨めな気持ちになっている事に気付かされる。
他の女子とかではなく、男子の志原君の方が、岸沼君の関心をいつもさらってしまっている事に対して、生じる劣等感のような気持ち......
何なの……?
それじゃあ、まるで私、岸沼君が好きみたいじゃない!!
そんな、まさかね!
落ち着いて、冷静になって考えてみよう、私!
今まで、私、あまり男子と話し慣れて無いから、ちょっとした事でも、妙に気になって、いちいち反応してしまっているだけ……
だって、岸沼君じゃなくても……
志原君のあの極上の笑顔を向けられただけでも、ドキッとしてしまう事有るし。
それだって、別に、真緒と違って、志原君が好きだからってわけじゃなくて、男の人から笑顔向けられるのに慣れて無いからなの!
そういう免疫が無さ過ぎるから、つい過敏に反応してしまうに決まってる!
そんな風に少し気になっているだけで、好きな人にカウントしていたら、これから先の人生、気が多過ぎる人みたいになってしまう!
「クラスメート達が、綿中さんを敵視している理由は『微笑み係』として、僕や岸沼君に接近しているから、誤解されてしまっているせいなの?」
私が、頭の中では1人で動転している様子を見ながら、志原君が確認して来た。
「きっと、そう! 勝手に誤解されて、ヤキモチ妬かれてしまっているんだと思う……」
私には、そんな気さらさら無いのに!
でも……
本当に、そんな気が全く無いなんて、言い切れる?
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