第13話 2人の距離感
志原君は、男女万人受けするアイドル的存在で、志原君と一緒の係っていうだけで、モチロン羨望の的になる。
私が『微笑み係』になれたのは、そんな志原君と一緒の係になる女子の条件に、たまたま、私が当てはまっていたからだった……
私が未発育な体形で、志原君に好まれそうな顔をしてないからって、まさか、女子達に仕組まれて『微笑み係』に就任したなんて思わなかった……
そんな事とは露知らず、荷が重いと感じつつも、内心は、けっこう嬉しかったりしたんだ……
そうでもなかったら、とてもじゃないけど近寄り難い存在だった志原君に、同じ係の特権とはいえ、こんな普通に話したりする機会が出来たんだもん。
ラッキーって受け止めても、罰があたらないよね?
一方、転校生の岸沼君は、一癖有るけど、パッと見は、完璧なイケメン!
志原君に勝るとも劣らない感じの注目株!
岸沼君の一挙一動、チェックしている女子も多いと思う。
私だって、岸沼君が教室に初めて入って来た瞬間に、思わず視線が釘付けになったもの!
クラスの男子にはいなかった、バンカラっていうのかな?
粗野で男気が強そうなタイプ。
志原君から引き継いだ時も、ゲイだって事を志原君からも、本人からも聞かされていても、まだ信じられないというか……
信じたくない気持ちだって、私の中では、普通に有るし……
女子には無関心でも当然となんだって、割り切って接していても、時折見せる岸沼君の優しさに、思わずときめいてしまう自分もいて……
今の私の『微笑み係』の仕事って、本当に美味しい立ち位置なのかも知れないって、時々思わされてしまう!
でも、その裏で、クラスメートの女子達にあんな風に陰口を叩かれていたなんて、考えてもいなかった……
まさか、友達の真緒まで、他の女子達と一緒になって、私の事を悪く言うなんて……
今朝、私が寝坊したりしなかったら、こんな展開にならなかったかも知れなくて、元はと言うと、私が悪いのかも知れないけど……
なんかもうショックで、今日は、こうして打ち合わせで残っているから、真緒と一緒に帰らなくて済んで良かったけど……
明日から、私、どうしたらいいんだろう?
何も聞かなかったふりして、真緒と一緒に登下校するなんて、私には出来ないし、真緒の方だって、多分、気マズイよね?
「あっ、俺、悪いけど、バイトの時間だから! お先!」
時計を見て、慌てて教室から飛び出して行った岸沼君。
部活に入る様子無いと思っていたら、岸沼君、バイトしていたんだ。
こんなに忙しいの人なのに、『微笑み係』間のトラブルでの話し合いに付き合わせて悪かったかな……?
「岸沼君は、家の事でも忙しそうなのに、僕らの話し合いに付き合ってくれて、いい人だよね」
家の事でも……?
『微笑み係』として岸沼君に接したのは初日だけなのに……
志原君は、好きだからっていうのも有るからなのかな……?
岸沼君の家の事情まで知っているし、彼の良い面をちゃんと探せてる。
私は、まだ岸沼君の事よく分からないし、下校してくれて、少しホッとしているような感じかも。
今は、志原君と岸沼君を極力接近させたくないから……
でも、その気持ちだけなのかな……?
「志原君は、岸沼君が先に帰ってしまって、ガッカリした?」
「それも有るけど、正直少し助かったかも。僕は、岸沼君抜きで、綿中さんと話したかったから」
えっ……?
岸沼君抜きで、私と……?
思わず、頭の中で、その部分ばかり何度もエコーを繰り返してしまっている!
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