第10話 微笑み係に出来る事
もはや、クラスの大半の女子が、私に悪意を抱いている気さえしてくる。
あんなに仲良しだった真緒とも、これから、普通に話せるかどうか、何だかもう疑わしい……
こんな思いまでして、私が手に入れた情報は、志原君を好きな真緒には酷過ぎるくらい、志原君が岸沼君を好きという気持ちだけ……
しかも、それは、志原君に口止めされている。
更に、極めつけは……
岸沼君の方も志原君が好きで、2人は相思相愛って事!!
波高女子の憧れの天使系の志原君も、多分、転校時から目を付けている女子が多いと思われるイケメンの岸沼君も、女子全員が束になって言い寄ったとしても、決してなびく事が無いなんて!
そんな夢も希望も無い事実をどうやって叩き付ける事が出来る?
真緒と違って、志原君に好きという感情は抱いてなかった私だって、正直すごくショックだった!!
それでも、志原君は、まだバイだから、長い目で見れば、いつかは女子も好きになる可能性も有る。
だけど、岸沼君に関しては、そんな可能性は皆無!
転校生としてやって来て、このクラスに、こんなイケメンが加わって目の保養になる~! ……って、女子達が楽しみにしていた矢先なのに、女子には全く関心無いなんてね……
2大憧れの的のような志原君と岸沼君がカップル……
絵的には、理想的過ぎる申し分の無い構図なんだけど、腐女子はともかく、2人を取り巻く外野にとっては、この上も無く切ない。
待って!
私の役目は、ちゃんと有るじゃない!
幸い『微笑み係』の任期中は、交際禁止なのだから、その期間中に2人の想いが冷めてしまえば、任期終了後カップル成立しなくて済む!
『微笑み係』として、彼らに接している私だからこそ、出来る役目かも知れない。
それに成功すると、クラスの女子達の矛先も、私に向けられなくなりそう!
でも、そんな上手く行くかな?
……なんて弱気になっていたらダメ!
今のところ、その役目が出来るのは、私しかいないんだから!
こうなったら、やってみるしかない!
……とはいうものの、どうやったら、2人の気持ちが離れる事になるのかな?
授業中、先生の話を聴いているふりして、ずっと頭の中では、志原君と岸沼君の事を考えていた。
考えてはいたんだけど……
考えれば、考えるほど、絡んだままの知恵の輪のようになって、複雑に入り組んで来る感じ。
やっと辿り着いた考えは、2人揃って手に入らない状態よりは、どちらかが手に入る状態の方が、まだマシなのかもって事……
つもり『微笑み係』の任期満了後、彼らが付き合って、双方を焦がれていた女子達全員が失望するくらいだったら、彼らのどちらか1人を誰か別の存在とカップル成立させる事!
そうしたら、あぶれたどっちかは、フリーの状態になるから!
あぶれさせる方は、どちらかというとルックス的にドストライクの岸沼君を狙いたいけど……
岸沼君は、女に興味が全く無いゲイ宣言しているから、ハードル高過ぎる!!
ゲイをカミングアウトしている男子なんて、私、今まで出逢った事ないもん!
その点、自称バイの志原君なら、男子でも女子でもカップル成立の可能性有るわけだから、岸沼君に比べたら難易度が低そう!
幸い、志原君大好き女子は、ごまんといるから!
今度、詳しく好みの女子のタイプを聞いてみる事から始めなきゃ!
で、問題は、その志原君のお相手の女子......
もちろん、私としては親友の真緒を指名したいところだけど、でも、それには、これまでの経緯を説明する必要が有るよね……
そうなると、岸沼君がゲイだって事も、志原君がバイって事もバレてしまうし。
第一、今朝の事も有るから、ただでさえ真緒とはギクシャクしてしまいそうだし。
そういう事をバレないようにしながら計画を進められる相手というと……
幸か不幸か、私しかいない事になってしまう!!
私しかいないけど……
大して魅力の無い私が、特に好きでもない志原君に急接近して、両想いの岸沼君から志原君を奪い取るなんて、無謀過ぎる気しかしない!
何より、真緒とか本気で志原君を好きな子を敵に回すわけだから、背徳感がハンパ無くなってしまうし……
は~、問題は山積み……
どうしたら、女子達の反感を買わずに、上手く、我がクラスのアイドル達の仲を裂けるんだろう?
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