第3話
見回りの任を終えると、空は薄暗くなっていた。
里の人間が人が全員死んでいた悪いと思いながらも背負って帰路に着いた。
◇◇◇
学園に到着すると、メアリは黙って歩き去ってしまう。
きっと自分の部屋に戻ったのだろう。そう思い、俺は里で起こっていたことを報告すべく学園長室へ向かった。
「さて、いくか……」
建物は壊れ、沢山の屍が存在していた里、この事を説明しなければいけないのか、その考えが俺の足を重くしていた。
だが、足を重くしていたのはその事だけが理由ではない。
1つは、俺の背中で心地よい寝息をたて、眠っている少女の事をどう説明するか。
それともう1つ――。
「ぁ……」
そんなことを考えているうちに学園長室の扉の前まで着いていた。
意を決し、扉を2回軽くノックする。
扉の前で数秒待つと「は~い」という返事が返ってきた後「失礼します」という言葉とともに入室した。
「こんばんは、クロノ君」
室内に入ると小さな少女……もとい、学園長が出迎えてくれる。
学園長からは強いアルコールの臭いがした。よく見れば床には大量の酒瓶が転がっており、また飲んでいたのだと解る。
とりあえず俺は今回の事を説明する為、少女を起こさないようにしながらも、抱きついている学園長を引っぺがす。
不満そうな声が聞こえてきたがそれを無視し、報告を始めた。
「……そう、そんなことがあったの……」
説明の途中で酔いが醒めたのだろう、学園長は自分の席に着き、俺からの報告に耳を傾ける。
俺は、里で起こっていた事を事細かに話す。もちろん、少女のことも含めて、だ。
報告を聞くと、学園長は悲しげな顔になった。が、すぐに普段道りの元気そうな顔に戻る。
「とにかく、ごくろうさま!」
「はい!」
里で起こったことは悲しいけど、いつまでも悲しんでもしょうがない。
俺は、そう割り切り、学園長室から退出しようとした。
だが、そこで学園長に呼び止められる。
「はい?」
すると、学園長が近づいてきて。
「進学、おめでとう」
と、笑顔でそういってくれた。
「ありがとう……母さん」
だから俺も、笑顔でそう返した。
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