8月3日

 8月3日、今日は昨日以上に暑い。いつまでこんな暑い日々が続くんだろう。朝食を食べ終えた和夫は、すぐに2階に向かう。


 和夫は空を見上げている。東京のみんなはどうしているんだろうか? 両親はどうしているんだろうか? 日が経つにつれて心配になってくる。


 下の階では朝から翔太がドラゴンクエストをプレイしている。2階からでもその音は聞こえる。


 時々、下の子供たちの声が聞こえる。聞いているだけで興奮している表情が伝わってくる。必ず制覇してやる!


「おはよう和ちゃん」


 突然、鈴木の声が聞こえた。それを聞いて、和夫は下に降りてくる。何の話だろうか? どこかに出かけるんだろうか?


「鈴木さん」


 和夫は首をかしげた。どうして来たんだろう。


「どうしたの?」

「今夜、バーベキューしようかなと。そうだ、和ちゃんも来いよ!」


 鈴木は笑顔を見せた。今日は会社の仲間と川辺でバーベキューをしようと思っているそうだ。


「いいよ!」


 考えていなかったものの、和夫は行ってみたいと思った。いい気分転換になるはずだ。


「待ってるよ!」


 1階でドラゴンクエストをプレイしていた翔太と付き添っている慶太は、その言葉に反応した。どうやら行きたいようだ。


「いいなー。僕らも連れてって!」


 翔太と慶太は和夫と鈴木の元にやって来た。翔太と慶太は笑顔を見せていた。自分もバーベキューに行きたい。


「いいよ!」


 鈴木は快く許可した。たくさんの人と楽しむ方が楽しい。翔太と慶太は喜んだ。ドラゴンクエストばかりで大変だけど、今夜は気分転換にバーベキューをしよう。




 夕方、朝から宿題をしていた和夫は外を見ていた。ゲームは昼食以外ずっと下で子供たちがしていて、何もできない。そのため、2階にずっといて、昼寝や勉強をするだけだ。


 和夫は1回に下りてきた。翔太と慶太はもう帰った。ドラゴンクエストのBGMが聞こえていた1階は静まり返っている。


 和夫は受話器を取った。和夫が下に降りたのは、和子に電話をするためだ。今夜は鈴木や子供たちとバーベキューをするので家にいない。なので今のうちに電話をしておこう。


「もしもし」

「和ちゃん、元気にしてる?」


 和子の声が聞こえた。いつも通りのようだ。和夫はほっとした。


「うん」


 和夫は元気そうだ。昨日はそんなに元気ではなかったのに。今夜川辺でバーベキューをするので気分が上がっている。


「そう。よかった。今日は嬉しそうじゃないの?」


 和子もそれに気づいた。どうしたんだろう。何か嬉しい事でもあったんだろうか? 和子は気になった。


「鈴木さんたちとバーベキューをするんだ」


 和夫は笑顔を見せた。バーベキューなんて東京に住んでいる時にはあまりやらない。煙で周りの人に迷惑をかける。


「バーベキューか、実家にいた時はよくやったんだけど、東京に来てからは全くしなくなったわね」

「ふーん」


 和子もあまりしない。キャンプで山奥に行った時にはよくやっているが。やはり周りの人に迷惑をかけたくないからやっていない。


「たまには田舎でやりたいな」


 和子は自分も生きたかったなと思った。でももう遅い。


「でしょ? 今日みたいに河川敷でみんなと一緒に」

「いいわね! また今度やろうよ!」


 和子は笑顔だ。たまには家族でキャンプをして、バーベキューをしたいな。


「うん。じゃあ、今日はこれで」

「少し早いけどおやすみー」

「おやすみー」


 和夫は電話を切った。和夫は再び2階に向かった。今夜はバーベキューだ。それに向けて準備をしないと。


 和夫は2階で準備をし始めた。今夜、川辺でバーベキューをすると聞いて、和夫はテンションが上がっている。そのせいか、勉強がいつも以上によく進んでいる。


 その下では子供たちが静かに待っていた。彼らもバーベキューに参加する。彼らもテンションが上がっている。彼らも楽しみにしている。ゲームで疲れているけど、今日はいい気分転換だ。


 夕方5時ごろ、鈴木が家にやって来た。鈴木はバーベキューの機材を集めていて、車の中に入れてある。


「和ちゃん!」


 その声に気付き、和夫は2階から降りてきた。和夫は嬉しそうだ。今夜はバーベキューだ。


「鈴木さん!」

「行こうか?」

「うん」


 それと共に、翔太と慶太もやって来た。今夜のバーベキューを楽しみにしていた。


 鈴木と和夫は鈴木の車で川辺に向かった。子どもたちは自転車で川辺に向かった。シゲはその様子を見ている。夏休みを思いっきり楽しんでいる。それだけで嬉しい。


 5分後、2人は川辺にやって来た。夕方になっても川辺に人がいる。だが、昼間に比べて人が多くない。来ている人のほとんどはバーベキューの準備をしていた。


「ここでやるの?」

「うん」


 降りた鈴木はバーベキューの準備をしていた。食材はすでに買ってあり、クーラーボックスに入れてある。


「楽しみだなー」


 しばらくして、翔太と慶太もやって来た。子どもたちは嬉しそうにその様子を見ていた。どんなの食べるんだろう。子どもたちは食事の事しか考えていなかった。


 それからまたしばらくすると、鈴木の職場仲間もやって来た。彼らもバーベキューに参加するようだ。彼らも嬉しそうだ。




 夜、鈴木は買ってきた肉や野菜を焼いている。鈴木は嬉しそうだ。久しぶりのバーベキューだ。今夜は思う存分楽しもう。


「できたよー」


 鈴木は焼けた肉や野菜を紙の皿に盛りつけた。和夫と翔太と慶太はそれを興味津々に見ている。


「おいしそうー」


 和夫と翔太と慶太は肉を箸で取り、食べた。とてもおいしい。どうしてだろう。大勢の人と食べるからだろうか?


 肉を食べながら和夫は川を見ていた。荒川や江戸川とは全然違う。水が澄んでいるし、流れが速い。こんなに澄んでいるから、あんなにおいしい魚が採れるんだな。人間は、豊かさの中で失ったのは、これではないだろうか?


「どうしたの?」

「川がきれいだね」


 夏休みをここで過ごし、東京との違いが徐々にわかってきた。空気が澄んでいて、心が浄化されるようだ。それに、1人1人が温かい。彼らに会うだけで、自分がしてしまった悪い事を忘れてしまいそうだ。


「そうだろう」

「東京とは全然違う」

「だろう」


 鈴木は笑顔を見せた。東京には夢がある。でもここには自然がある。人間はどっちで生きるのが正しいんだろう。


「東京って、どんなとこだろう」

「色んな夢があるんだ。それを求めて、人々は東京のような都会へ移り住むんだ。豊かさ、そして日本の発展を夢見て」


 和夫は東京での生活を思い浮かべた。いろんな高校や大学があって、その先にはいろんな仕事がある。


「いつかは僕も都会に行かなければならないのかな?」


 和夫は横を振り向いた。翔太だ。彼はいつかここを出て都会に行くんだろうか? いつまでもここの事を覚えているんだろうか?


「それはどうだろう」


 鈴木は彼らの未来を考えた。いつかはここを出るだろう。それでもここで過ごした事はいつまでも心に残してほしい。ここに集落があった事。そして、私の存在を。


「それは自分で決める事なんだよ」

「そっか」


 翔太と慶太は自分の未来を考えた。将来、この村にいるんだろうか? それとも都会にいるんだろうか? どんな仕事についているんだろうか? 


「まだそれを考える時ではない。でもいつかは考えなければならないだろう」


 鈴木は星空を見ていた。将来この子どもたちはどこに行ってしまうんだろうか? それともここに残るんだろうか?


「バーベキューやったことない?」

「うん」


 和夫はバーベキューをやった事がない。コーラを飲みながら、鈴木は和夫を見つめていた。


「東京ではやる機会ないから」

「ふーん」


 鈴木は東京の生活を思い浮かべた。自分は東京に住みたいと思ったことがある。でも、この村が好きで、ここにとどまっている。


「こんな自然の中でバーベキューって、最高だね」


 和夫はバーベキューを楽しんでいた。バーベキューってこんなに楽しいんだな。焼肉とは違い、広い場所でのびのびと食べる。


「そうだろ?」


 鈴木は笑顔を見せた。和夫が気を取り戻してくれるだけで、とても嬉しい。来月になればきっと元の和夫に戻ってくれるはずだ。


「優太くんも体験すればいいのに」

「そうだね」


 和夫は空を見上げた。今頃、優太は何をしているんだろう。寂しくないだろうか? ちゃんとご飯を食べているだろうか? 宿題はどれだけ進んだんだろう。また会いたいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る