閑話 オープニング回収②
【レイシア視点】
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!
嘘だって誰か言わないかな。
顔を上げたら目の前に宝石箱が見える。どういうこと⁉ いや、婚約申し込まれたのよね。アルフレッド様から。
落ち着こう。って、落ち着いてられるか~!
って先輩来た!
慌てて宝石箱隠したよ!
「レイシア君?……どうした?」
「なななな……何も起きていません!」
「そう?」
え~と、状況を整理しないと。わ~、さすがに無理!
「先輩! ごめんなさい! 急用ができたのでこれで失礼いたします。よいお年を」
うわ~、わけわかんないよ~! とにかく確認しないと。見ていましたよねポエムさん。更衣室まで来てください!
更衣室で私はポエムさんと状況確認を行った。
「さっきのって、本当に本当だと思う? 冗談ってことは」
「ないですね。第一皇女の件は帝国側が画策しております。帝国国内で私も確認しました情報ですから」
本当なんだ。
「じゃあ、戦争が起こるっていうのは?」
「第二皇子が皇帝の座に就いたら可能性がかなり高くなるということです。第一皇子が継いだ場合は平和路線のままです。帝国はかなり微妙なバランスで体制が二分されているのです」
「それで、なんでプロポーズなの? なんで私なの?」
「プロポーズは帝国の第一皇女を退けるためですね」
「それは分かるけど」
「レイシア様なのは……。言っちゃってもいいのかな?」
「何か知っているの」
「もちろんですが、言っていいのかと言われると」
「教えて!」
「そうですか? 知らない方が良かったってことは世の中にたくさんありますよ」
「いいから」
「そうですか。では。一つはレイシア様のお立場が不安定だということです」
「不安定?」
「そうです。レイシア様はいまや金の卵を産むコカトリス。新しい商会ができ、一般に商品が宣伝されたら取り込もうとするヤカラが湧いて出ます。国内は王妃と王女の庇護下にあるためそこまでの影響は出ないでしょうが、国外、特に帝国はどう出るか分からないのです。地方貧乏子爵の小娘と見られたら、どのようなことが起きるか分からないのです。そのため、王女キャロライナ様が王室に取り込もうと画策しているのです。今回の件は王子だけでなく王女の意向も働いていると思ってください」
そうなの? でもそれだけなら。
「それから、アリア様とアルフレッド様の関係です。レイシア様は学園内で話されているアルフレッド様の噂話はご存じありませんか?」
「うわさ話? しらないけど」
「イリア様のお書きになられた『制服少女』シリーズ。その状況に似ていると噂もちきりなのです」
「『制服少女』? だってあれは私の入学式の様子をイリアさんが好き勝手書き換えたから。私の事よね」
「そうです。しかし今年、その本の中身を再現するようなリアルシーンをアルフレッド様とアリア様が行ったのです。そして本は奇跡の予言書、アリア様はヒロインとして噂の的になっていますのです」
「えええっ! 知らなかったよ」
「レイシア様は一般のお友達がいませんから。社交にも疎いですし」
そうね。
「ちなみにレイシア様は悪役令嬢ポジションで噂になっています」
なんで~! 目立つようなことしていないのに!
「十分目立っていますよ、レイシア様は」
そんなことないはずなのに!
「無自覚とはそういうものです。いいですか、情報が秘匿されているとはいえ、上級貴族の間では洗髪剤を開発した女生徒がいるという話題は当たり前に流れているのです。サカでのご活躍で腕利きのハンターがいるということも話題にならない訳がないじゃないですか。学園内でいくつ二つ名がおありですか。二つ名って一つ付くから二つ名なのですよ。さらに王子と競り合い、王子とダンスの稽古を独占し、王子と同じゼミで、王子とため口をきき、王子を叩きのめし、王子を……」
「ちょっと待って! 後半王子だけじゃない!」
「王子といて目立たぬはずがないではないですか」
「じゃあ、全てアルフレッド様のせい」
「違います! レイシア様は存在自体が目立っているのです! ほぼご自身のせいですよ」
「そんな事ないよ!」
「とにかく、商会が出来てキャロライナ様が情報解禁なされたら、レイシア様は一躍注目の的になります。男爵家、子爵家、伯爵家から縁談が数限りなく来ることでしょう。商会やターナー領への支援や投資という罠、レイシア様を取り込もうという動きが一気に解禁されるのです」
ひ~! なにそれ!
「失礼ですが、昔はやり手だったのに社交界から退いて、今は自領で子供たちに振り回されている辺境ド田舎ののほほん領主に、今まさに社交界で笑顔を張り付けながら蹴落としあっている魑魅魍魎のような方々のお相手ができると思っているのですか」
お父様巻き込み事案⁉
「今レイシア様が平然と新商会などについて計画できる環境にあるのはキャロライナ様始め王家と公爵夫人たちの社交のお力なのです。執事喫茶のおかげといっても過言ではないのですよ! 四大公爵家のご夫人全てが同じ方向に動くなんてことは今の今までなかった奇跡なのですから!」
情報量いっぱいです!!!
「大丈夫ですか? そうですね、話がそれてしまいましたね。アルフレッド様がなぜレイシア様に求婚したか、そちらの理由でしたね。まあ、今までのは前提条件と思ってください」
前提条件なのぉぉぉぉ⁈!!!
「私が集めた情報を元に推測も入りますが報告しましょう。よろしいですか? 聞かない方が良かったと思うかもしれませんよ」
「……教えて下さい」
「なぜ、レイシア様が求婚されたか。それは……」
なんで?
「一つ目はアルフレッド様の初恋の相手が、レイシア様だからです!」
はぁぁぁぁぁ~!!!!
「嘘っ!}
「本当です。アルフレッド様がつぶやいているのを何度かお聞きしました」
「ア、アルフレッド様が私に……初恋?」
「アルフレッド様に勝ち続け、意識を向けさせ、餌付けをした結果ですね。男性の胃袋をつかむのは恋愛テクニックの基本ですから」
「知らない! わざとじゃない!」
「まあそれはそれとして」
「それはそれって!」
「二つ目として、王女キャロライナ様の意向です。先ほど話したように、レイシア様の今後のトラブルを回避するため、あとお気に入りの存在を自分の義妹にしたいと思ったのではないでしょうか」
「義妹⁈」
「王家に取り込んでいるだけではなく、王子という権力者の婚約者候補ともなれば余計な手出しは少なくなるでしょう。ご自身が王室から抜けた後のレイシア様への影響を考えたのかもしれませんね」
アルフレッド様とキャロライナ様が暴走しているよ~!
「いつも暴走だらけのレイシア様が、今さら何をお考えしているのですか。もともとの根本原因はレイシア様のやりすぎなのですよ」
私? 私のせいなの?
「当たり前です! そろそろ自覚しましょうね、レイシア様」
「ごめん。もういっぱいいっぱいです」
「もうよろしいのですか? まだまだ情報は、」
「もういいです! もういっぱいいっぱいです!」
もっと言いたそうなポエムにストップをかけた。
整理しましょうか。
アルフレッド様の初恋相手が私……ですかぁ?
今はアルフレッド様はアリアさんという恋人がいる?
アリアさんは正妃に成れないからその代わりが私?
それを受けないと、帝国の第一皇女と婚約、結婚して王国が戦争に巻き込まれるかも?
新商会ができたら婚約の申し込みが殺到する?
お父様に処理能力を求めてはいけない?
キャロライナ様が私を義妹にしたい?
「大体そんな感じですね」
「何でそんなことに」
「レイシア様が王子にアプローチを無自覚にかけて、レイシア様が次々と美容関係の発明をして、レイシア様が無自覚にキャロライナ様を誑し込んだ結果ですね」
「わ、私のせいだというの」
「はいっ。レイシア様の行動の結果です」
なんで? 何でこんなことに。
「頑張りすぎましたね。いろいろと」
私が頑張ったのはこんなことのためじゃないのよ! クリシュ! クリシュのためなのよ!
素敵なお姉さまとして自慢できるように。
お金を稼いで借金を返すために。
学園に通う時お金の心配をさせないように。
おいしいお菓子や食事を与えられるように。
全部、全部クリシュのためなの! クリシュに尊敬のまなざしで見てもらいたかっただけなのに!
「やりすぎましたね」
「……疲れました。帰ります」
私はまだ午前中だというのに寮に戻った。何も考えたくない。
カンナさんが心配そうに私に声をかけたが、「今日は一人で過ごします。カンナさんのごはんはこれで許してください」と、夕食分にバクットパンを渡して部屋にこもった。
ベッドに入り布団を頭からかぶって、さっきまでの事を振り返った。
…………やっぱりあれはプロポーズだよね。アルフレッド様が私に。
「だから、僕と結婚しよう。レイシア・ターナー嬢」
思いつめたような真剣な顔で言ったシーンが脳内に浮かび上がる。差し出された指輪が確かにここにある。
なにこれなにこれなにこれ!!!! わけわからなさ過ぎてどうしたらいいの!
ドキドキしているのはトキメキとかじゃないよね。困惑だよね。
あ~もう~、わけが分かんないよ!
ポエムさん! 見ているの分かってますから! だいたいあなた今、長期休暇中じゃなかった? 帝国長期出張の!
何で全部私のせいになっているの! 私頑張っただけよね。
布団の中でもんどりを打ちながら、告白された気恥ずかしさと、アルフレッド様の初恋相手という衝撃の事実と、王国の未来と、私のこれからの困難さをグルグルグルグル頭の中で入り乱れながら考えては奇声を上げたくなるのをこらえていた。
本当に私のせいなの?
ポエムさんの言葉が頭の中で繰り返し響く。
アルフレッド様の告白のセリフが頭の中で繰り返し響く。
――――私はどこで間違えたんだろう。
あの頃に戻れたらいいのに。お母様に会いたい。
涙が頬を伝わってシーツを濡らした。
そしてそのまま夢の中に落ちていった。
幸せな五歳の誕生日から学園でプロポーズを受けるまでの、長い長い私の人生を振り返る、そんな夢を朝になるまで見ていた。
※ ※ ※
※貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!〜 Fin
って書いたら怒りますよね! 書き上げた瞬間、「これラストっぽい」って思ってしまったんです! 何回目だろう、終わり詐欺。。。
やっとオープニング全回収しました。だけどまだまだ続きます。それでも次は 閑話 オープニング回収③ の予定です。引き続きご愛読いただけますようお願いいたします。
何と言いますか、終わりたいのは本心なのです。そして今回のラストきれいにまとまってしまったんです! まさかこんなに長くなるとは思ってもいませんでしたし。
それでも広げてしまったレイシアと周りのトラブル。とりあえず、卒業までは頑張って書きます。
現在501話(ストーリーとしては496話)120万文字オーバー(あとがきやら報告やら人物紹介含む)の大作になってしまいました。早く終わらせたい・・・のですが、まだまだ長くなりそうです。これからもよろしくご愛顧ください。
とにかく頑張る! みちのあかり でした。
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