第七章 トラブルだらけ! レイシア15歳 弟10歳
準備しましょう
クリシュがお祖父様と王都に旅立ってから、レイシアはバリュー神父とマッドな研究生活に入った。特に魔道具について話すと、神父は目の色を変えて食いついてきた。
「魔石に関する特許を調べてみましょう。切れている特許や、公開されている特許があればそれを手掛かりにできるかもしれませんね」
そうは言っても辺境の地ターナー。資料を取り寄せるにも手掛かりが少ない。どういう感じで探せばいいかのレクチャーが神父によってレクチャーされた。
「つまり、港町サカの商業ギルドでこれらを聞いてくればいいのですね」
「そうだね。まずはそこから始めよう。もちろん王都の商業ギルドでも調べないといけませんが。ああ、私がついていければいいのですが。私は教会本部に嫌われていますので」
商業ギルドは、教会と隣接している所が多い。バリューがいるおかげでトラブルが起きたら、ターナーの教会改革がばれてしまう恐れがある。神父はそれを危惧していた。
◇
「嬢ちゃんがサカに行くんなら、俺が先導してやろうか? サカはいいぞ。魚は旨いし、交易品も多い。王都でも中々手に入らない食材や香辛料が手に入りやすいんだ」
料理長が仕込みをしながらレイシアに言った。
「師匠はサカに行ったことがあるんすか!」
微妙に料理人モードになるレイシア。かまどに火を着けながら聞いた。
「ああ。修行中に立ちよったことが何度かあるな。仕込みに行かされたこともある。いいぞぉ、俺と一緒に行ったら、海の魚の扱い方を教えてやろう。アキターの国の調味料が手に入れられれば、生で食べることもできるぞ」
「生で魚を食べるんすか?」
信じられないというように、料理長を見つめた。
「ああ。うまいぞ。サッシミーという食べ方だ。まあ、ショッツルが手に入ればだがな」
「ショッツルですか? なんすか、調味料っすか?」
「調味料だが……。あれは例えができねーな。手に入った時のお楽しみだ」
「師匠! ぜひ同行してください!」
そうして、港町サカに料理長が同行することになった。
◇
「料理長が同行するなら、私も行かなければいけませんわね」
メイド長が当然だというように領主に進言した。
「なぜだ? 料理長がついて行けば旅の安全も確保されるだろう。二人も抜ける必要があるのか? 誰か訪ねて来た時に、料理長もメイド長もいないのはさすがに問題があるだろう?」
「旦那様、冬のターナー領に一体誰が来られるのですか? もともと旦那様の外交下手のせいで他領とのお付き合いが少ないのでございますよ。奥様の伝手を引き継ぐことなく無駄にしてきたのではありませんか」
そうは言われても、教会に喧嘩を売った関係で良好だった貴族たちが様子見をしていた頃、アリシアが家から逃げるように嫁いだ関係で、教会とオヤマーを敵に回したくない貴族たちが多くなったことが原因。そこに災害対策のため領地復興に集中していたため外交はどんどんおざなりになってしまっていただけ。
「料理長がついて行くと、レイシア様のタガが外れてしまうのは目に見えています。サチでは抑えが効かないでしょう。いや、むしろサチも一緒に狩りに精を出す事でしょう。レイシア様が貴族のお嬢様らしく整えるためには、私がついて行かなくてはいけません」
メイド長は無理やりレイシアたちに同行する許可をクリフトからもぎ取ったのだった。
◇
「走れば早いのは知っております。ですが、貴族としての見栄は大事なのですよ、レイシア様。ほら旦那様、私がいないとこうなるのでございますわ」
メイド長はポエムから預かったドレスをチェックしながらレイシアのカバンの中のものをチェックさせてもらっていた。
「はあ。レイシア様のドレスや宝飾品、旦那様が用意しないといけませんわね。父親として手を抜きすぎですわ」
チクチクと旦那様に向かい小言をかけるメイド長。耳が痛いクリフトは聞き流そうと必死。
「いつ見せてもらっても凄いな。このマグロ包丁。あの親父、俺の時にはこんなもんは見せてもくれなかったのに」
「特注でやっと仕入れられたらしいっすよ。クリシュに買ってあげようとおもったんですが、うりきれでさあ、困りやしたぜ。まあ、クリシュにゃ出刃包丁って言う和の国の包丁をあたえましたんすけどね。がはははは」
「嬢ちゃん、普通にしゃべっていいぞ。そろそろその喋り方やめないか?」
とうとう料理長にまでやさぐれモードの喋り方を注意されていた。
港町サカへは、レイシア、サチ、料理長サム、メイド長キクリ、この4人で馬車に乗っていくことになった。明日は出発です。
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