二年生終了 (第五章 完)

 もうじき学園が終わる12月7日の土曜日。レイシアはサプライズで、イリアの卒業アンド卒寮パーティーを計画した。


 場所は『喫茶黒猫甘味堂』おっさん達の憩いの場の方だ。


 メイド喫茶からメイドを二人借りだし、給仕などはお任せした。なぜかメイも付いてきた。


「私が責任もってイリア・ノベライツ様をご接待いたします」


 イリアのファンとして、来ない訳にはいかなかったようだ。店長権限をフルに使い参加した。


 午後2時。レイシアがイリアとカンナを案内して、喫茶黒猫甘味堂に入った。

 イリアが入ると店の中では、サチとポエムが

「「おめでとうございます! イリア様」」

 とお祝いの言葉をかけた。それを合図にメイドたちが動き出す。三人とサチとポエムは席につき、給仕されたお茶を片手に乾杯をした。


 女子だけの楽しいパーティーは、2時間ほど続いた。


 そのあと、カンナを寮に返して第2部が行われた。オヤマーでの執事喫茶プロジェクト関係者を交えた決起集会。そこでイリアを紹介し、広告用小説の大切さとイリアの売り込みを行ったのだ。


 ファンとしてメイがカミヤ商会の会長である父親に売り込み、レイシアの熱い語りも効果的だったのか、カミヤ商会がイリア・ノベライツのパトロンになった。


 レイシアのお祖父様、オズワルド・オヤマーもパトロンになったため、イリアの実家での貴族籍を残すことになった。結婚するまでは実家の籍にいて法衣貴族子女でいられるため、場合によっては社交界や商業界の集まりに出ることになる。金には困らないが、ややこしい立場になってしまった。最も実家としてはとてもありがたい話なのだが、それはまた別のお話。



 貴族基礎コースは、持ち前の優秀さと勉強を頑張ったためかなりよい成績でクリアした。来年は二年生の基礎コースだけは取らなければいけないが、座学だけでいいみたいだ。ダンスなどの実践は全てクリアした。


 冒険者コースは、ククリとルルとの関係を壊さないために、来年もコーチング・スチューデントをすることになった。


 騎士コースも暗闇がレイシアを手放すはずもなく継続。ただし冒険者コース・騎士コースどちらも普段は月二程度。体験授業など特別な時は協力する。そんな感じの余裕のある手伝いだった。

 馬術基礎は今回でお終い。掃除は完璧なのだが、乗馬技術はそこそこ。基礎としては十分だが、コーチング・スチューデントになる程ではない。騎士団への指導も月一回サチと共に継続することになった。こちらはきちんと手当がもらえる。


 ビジネス基礎は優秀な成績で終了。平民お仕事コースは、メイド基礎や料理基礎も終了しているので上出来だ。


 基本のクラスは今年まで。来年からゼミ単位で行われるため基礎授業はここまで。成績がいまいちな生徒は来年も受けることになるのだがAクラスは問題がない。

 最後の授業では、レイシアから豪華な昼食が振舞われたが、王子は「これが最後か……」としんみりと料理を味わっていた。おいしいものは美味しく食べればいいのに、うっとうしいなとおもいながらレイシアは黙々と食べていた。



 魔道具作りは進展がない。魔力を取り出す構造が見いだせないのはもちろんだが、何を作りたいのか分からなかったからだ。なまじ、自分で魔法が使えるために必要性というものが見えていなかった。


 そこに気がつくまで二か月以上かかった。レイシアは魔法を持っていない人にたずねた。


「魔法が使えたら? そうね、あたしだったらお風呂を沸かすかな。あんたがいない冬場は体洗うのもたいへんだからさ。あったかいお風呂、冬場に入りたいよね。あ、あと夜明るくしたい。執筆がはかどるよね」


「はあ? 魔法ってあんたが使っているやつかい? そうだねぇ。お風呂かな。冬にあったかいお風呂、入りたいもんだよ。いつでも簡単にお湯が手に入るとありがたいねぇ。あとは洗濯だね。あんたの洗濯見てるとうらやましくなるよ」


 イリアもカンナも、お風呂が一番に欲しいと答えた。寒くなったことも関係したのだろう。

 王子に聞いたら「食べ物を温かくする魔法に決まっているだろう!」と即答された。


 レイシアは魔道具作りの方向性を「熱」に決めた。火魔法の赤いクズ魔石は比較的簡単に集められる。地上では火と水の魔石を持つ魔物が多い。火の魔石を研究することにした。


 ちなみに鳥の魔物は風が多い。植物から魔石が取れるときは大体は光の魔石だが、中々取れない。植物の魔物が少ないためだ。土の中に闇の魔石を持つ魔物がいるらしいが、これも倒すことが難しいため希少品。これらはちょっと高めの宝石扱いになっている。色がきれいだからと言う事で飾りに使われている。


 レイシアは手に入りやすく捨てられる火属性のクズ魔石に、自分を重ね合わせた。


「使えない6属性の魔法だって、使いようによっては便利に使う事ができる。辺境の地のジャムだって高く売ることができる。役に立たないものなんてこの世の中にはないはずよ」


 

(ターナーに帰ったら神父様に相談しよう。きっと興味を持つはず。石鹸の改良も進んでいるはずだわ。お父様は教育改革進んでいるのかしら。そうだ。孤児院に新しい本を持って行こう。みんなにお土産が買えるほど稼げるようになったよ。特許ってすごいね。知らない間にお金が増えていくんだよ。もっともっと勉強して特許を取って、ターナー領のために、クリシュのために、みんなの役に立つ素敵なお姉様になるのよ!)




 学園では卒業式が開かれている。


 レイシアは学園には寄らずに、イリアのための夕飯の御馳走の買い出しとみんなへのお土産を買いに出かけることにした。


 明日からはイリアさんとお別れ。寮もしばらく離れるから、カンナさんとも会えなくなる。二人が寒い冬を少しでも温かく過ごせるように、レイシアはひざ掛けを二枚選んで、プレゼント用にリボンをかけてもらった。


     (第五章 完)



 ……………………あとがき……………………



 以上で「貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!〜」完結です。


 と書きたくなるような終わり方でした。(これで終わっていいかな~)と何度も思いながら書いていました。あるよね、こう言う終わり方する小説。


 でも、ここで終わったら怒られるんだろうな~。ギフトも貰ったばっかりだし・・・


 え~と、まだまだ続きます。レイシア卒業までは書き切るつもりです。大体まだオープニング回収していないし! 


 なんでこんなに大人数が出る話になったのでしょう? こんなに話が広がったのでしょう? いつまで書くんだろう? あと1年以内に終わらせたいです。


 いろんなキャラが思い思いに動き回ってくれやがっております。キャラの人気投票出来たら面白そうですね。レイシア除いた人気投票してみたいです。やるか? リプ欄で! そうだな、一位のキャラのSS書くと言う事でどうでしょう。最低投票数10票から。レイシアと書いたものは無効です。と言う事でどうでしょう。


 疲れているのかネタ切れなのか・・・変な事しか思い浮かべられません。

 投票期限は、そうですね。今日が11/3なので三連休内。11/5の23:59 まで。


 遊ぶの大事ですよね。


 次章の冬休みが終わったら第四部、三年生です。そのタイミングで一回休憩させて下さい。



 今後とも応援よろしくお願いします。❤とか付けて下さると嬉しいです。感想はとても嬉しいですね。レビューコメントなんかついた日は何度も読み返してしまいます。


 反応あるたび、「頑張らないと」とお話考えています。


 いつも読んで頂いて本当にありがとうございます!


 みちのあかりでした!


追記) キャラ投票お待ちしております。


 


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