第九章 後期は自由に学びます 13~14歳 弟8歳
200話 今日はラノベでお勉強
レイシアの学園生活は……暇だ。
一年生の基本カリキュラムである座学が免除となると、あとは実技のみ。その実技も貴族のための実技は何も受けておらず、さらにメイドなどの実技は早々にクリア。残った実技は年内に一定の回数をクリアすればよいものが多い。授業の取り方によってかぶることが多いので、同じ内容を何度か繰り返すからだ。
レイシアは、暇にあかせてかなりの出席率になっていた。大変なのはビジネス作法くらい。これも最近は上手くできている。
基本的に、実技のない時は図書館にいる位しか居場所がなかった。
それでも、黒猫甘味堂の移転までは、オヤマーのお祖父様や実働部隊のサチに、図書館で仕上げた計画書を仕上げていた。どこからか忍び込んでいるポエムに渡すとすぐに届くよう手配してもらえた。おかげで図書館にいてもスムーズなやり取りができたのだが、開店したらその実務もほぼなくなった。経営にカミヤ商会を一枚噛ませたので、経理が楽になったからだ。
◇
「これから何をしよう」
そう思った時、外れ魔法使い仲間リリーがこう言った。
「ねえ、レイシア。土魔法ってどうやったら使えるの? 上官たち、風がすごいなら土もすごいんだろう! 早く見せろ! とか無責任に言うのよね。分かるかー! って感じなの。あんたならなんか知っているんじゃない?」
魔法! そうだ。魔法を調べよう! レイシアはリリーに調べておくと言っておいた。
「よろしくね、私のために!」
リリーはそう言うと騎士のコーチに連れて行かれた。
◇
図書館で魔法の解説書を探した。魔法についてはあまり書物がない。何冊か読んだがすべて火か水の魔法についての本ばかり。その他の属性は研究されていなかった。
「困ったわ。研究書がない」
勉強しようにも教科書が見つからない。先人の知恵が及ばない時はどうすればいいのだろう。レイシアは途方に暮れてしまった。ため息をつくレイシア。そんな姿を見て、イリアがランチに誘った。
◇
食堂で固いパンとスープを食べながらイリアは話を聞いた。魔法については聞かれたところで何も答えられない。
「あたしじゃ解決できないわね。あ、でもこの間読んだ本の主人公がこんなことを言っていたわ」
「なんですか?」
「文字がないなら作ればいい!」
「なにそれ?」
「本が好きな主人公が生まれ変わった世界で本を読もうと思ったの。でもその世界には本がなかったの。いえ、本どころか文字もない。そこで主人公は、文字を普及させようとしたのね。最初は生まれる前の世界の文字を教えようとしたんだけど上手くいかなくて、象形文字を作ったりいろいろその文化に合うような工夫をするの」
「へ~、面白そうですね。タイトルは?」
「『
「読んでみます!」
レイシアの顔が晴れた。その様子を見て安心したイリアはレイシアに質問を返した。
「ところでさぁ、あんた王子とは何か接触ないの?」
「どうしたんですか?」
「七不思議シリーズがいまいち不調だったの。やっぱり読者はラブロマンスを求めているのよね」
「そうなんですか?」
「そうよ。ネタが! ネタが欲しい」
「そうは言っても、私じゃネタになりませんよ? 大したことしていないし」
「あなたが大したことしてなくて、誰が大したことをするのよ!」
「?」
「で、王子は!」
「なにもないですね」
「………………そう」
イリアはレイシアの無自覚ぶりに、精神が疲れ果ててしまった。
◇
午後からは、ひたすら『
「でも、そうよ。文字がないなら作ればいい! 魔法が分からないなら試せばいいのよ」
次の日から、レイシアの魔法実験が始まった。
◇◇◇
初日。図書館でラノベ三昧。もともと魔法に憧れたのはラノベを読んでいたから。現実の魔法を見て、ラノベと違うとがっかりしたのよ。だったらラノベを参考にすれば素敵な魔法が作れるはず! そう思い、土魔法をピックアップしてみた。
サンドショット ロックショット ストーンレイン アースクエイク 土ボコ 等々
「こんなにも想像できるのね。一から順番に実験よ」レイシアのやる気が高まった。
2日目。どこで実験をすればいいのか迷ったレイシアは、とりあえず相談しやすそうな学園長室を訪ねた。
「まてまて、君が何かすると必ずことが大きくなる。場所はこちらで用意しよう。無茶なことはしないように。そうだ、シャルドネ先生をつけよう。いいね、実験は明日だけ、それもシャルドネ先生のいるときだけだ。それ以外は魔法の実験は禁止だ。いいな」
「普通に使っている魔法は普段使ってもいいですよね」
「何に使っているんだ?」
「炊事洗濯掃除に……」
「なんで! どうして魔法で家事をしているんだ!」
「便利だからです!」
胸を張って答えるレイシア。ああ、6%の呪いが……。
そんなレイシアを見て、理解不能と理解した学園長は、
「それも明日シャルドネ先生に報告して実演して見せなさい」
と言って、レイシアを帰した。
仕方がないので、レイシアはまた図書館にこもってラノベを研究した。
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