騎士コース(魔法基礎)①
いよいよ、レイシアが待ち焦がれた魔法基礎の実習。馬術基礎(馬小屋掃除)実践基礎(体力測定)で残れた者たちが受けることが出来る。
いろんな救済策も用意しているのが、学園の教育方針。実も蓋もないようなことを教えながらも、生徒も将来は大切に思っている。そんな優しさあふれた教育。それがグロリア学園。
魔法実習の初日は、一日がかりで行う。なぜなら騎士の訓練場で行うから。
正確には、騎士の訓練所の隣にあるマルス神の教会で魔法を授かり、訓練所で受け取るかどうかの確認をするためだ。リスクがあるため慎重に行われる。
◇
「学園の諸君! ようこそ騎士団へ。我々は、諸君らが騎士を目指すことを歓迎する」
体の引き締まったイケメンの騎士がにっこりと微笑みながら挨拶を始める。男子生徒は憧れを、女生徒たちは目をきらめかして見つめている。
施設を回り、説明を受けながら訓練場までやってきた。午前中は騎士の訓練を見学し、一緒に訓練に混ざりながら有意義な時間をすごした。
まあいわば、接待された職場体験をしていたわけだ。毎年、有能な人材が欲しい騎士団は、こうした営業は手を抜かない。褒めておだててその気にさせて、騎士になるように仕向けようとしている。
食堂で昼食を食べた後、いよいよ魔法の適正検査と登録が始まった。
「知っていると思うが、魔法属性は多ければ多いほど威力が落ちる。二属性は1/4,三属性は1/27というようにだ。取る取らないは自由だがリスクを考えて取らない選択も考える様に。騎士団で魔法騎士として採用するのは火か水の一属性だ。その他のものは役に立たない。まあ、試してみないと分からないというものは仮契約で魔法を使ってみるといい。すぐに契約破棄をすれば体に異常は出ないからな」
教師はそう言うと生徒を教会に入れた。
訓練所に併設された教会に入り、全員で儀式を受ける。
神父が祈りを捧げ、生徒たちが唱和をする。すると、台座に置かれた水晶の球がぼんやりと光り始めた。
まずは王子が教師から呼ばれ、水晶の球に手を触れる。色が変わり文字が浮かび出る。それを神父が読み解き教師がメモを取る。その結果はすぐに全員に伝えられた。
「属性 火 1属性。 リスク 頭髪の30%減少」
リスクとは、魔法を使えるように神に捧げる体の一部。何がどのくらい減るのかは全くのランダム。法則性は発見されていない。
「いかがなさいますか?」
「俺に禿げろというのか!」
「……ご自由に」
「却下だ!」
王子は神父に却下を述べた。神父は契約破棄をした。
身分の高い者から続いて測定を始めた。レイシアは子爵子女。かなり身分は高いのだが、王子と離そうという教師たちの意向により奨学生枠として最後に回された。
次々に仮契約をする者、破棄するものが決まっていった。
「火属性 身長3%低下」
「背が低くなるのか? しかし、魔法騎士か……」
「取るんだ! 将来安定だぞ!」
「……仮契約で」
「水属性 リスク右手の爪5枚」
「契約する! 爪くらいで魔法騎士になれるなら」
「やめとけ! 爪は大事だ。諦めるんだ! 何も持てなくなるぞ!」
「そうなの?」
「ああ」
「風 土 2属性 リスク 脂肪30%低下。 役に立たんな」
「取る! 取ります! 取らせてください!!! 痩せるのね私! ぽっちゃり体型が!!」
「仮契約完了」
「これよ! なにこのウエスト! ズボンがゆるいわ!!」
様々な思惑とリスク回避で仮契約したものは全体の10%程。
いよいよレイシアで最後になった。
「光 闇 風 火 水 土 6属性 リスク バスト6%低下」
「「「6属性⁈」」」
「「「バスト6%⁈」」」
いろんな意味でどよめきが走った。男子の目がレイシアの胸に向かった。
だが、まだレイシアは13才。最初から大した膨らみはない。
レイシアは、三体の神が酔った勢いで祝福をかけまくったため、全ての属性と膨大な魔力量を持ってしまったのだった。
「6属性だと低下率は?」
「6の6乗ですから……1/46656」
「なんだそのバカげた数値は」
教師と騎士たちもざわついた。
そんな思いを無視するように、
「では、仮契約でお願いします」
と、レイシアは事もなげに返事をした。
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