第三章 テスト期間

オリエンテーション(学園長)

 入学式とパーティーが終わった翌日は、新入生のオリエンテーションが行われる。

 今日は皆、制服を着ていた。だから昨日の制服少女がレイシアだという事はバレることもない。一年生は全員講堂に集められた。


 今年の新入生は約700名。男女は半々。9割5分は法衣貴族の子弟。数人の聖女と呼ばれる平民。

土地持ちの貴族は、王家も含め男子7名、女子12名しかいない。


 王子の周りに、髪型がゴージャスな女子が集まっている。あちらこちらに宝石をまとっているので、普段から交流のある貴族に違いない。

 他にも、以前から顔見知り同士、いくつかのグループが出来上がっている。


 レイシアは、気配を消して周りの様子を観察していた。


「では、性別、身分別に分かれて整列するように」


講堂の右側に男子、左側に女子と別れた。中央から、貴族・法衣貴族・平民聖女・騎士爵。レイシアは気配を消したまま土地持ち貴族のグループの最後尾についた。


「学園長の挨拶」


 大きな声がして学園長がステージに立った。まだ30代に見えるスマートな若者が学園長。先代の父親が亡くなったので去年学園長の座を受け継いだのだった。


「はい、皆さん、入学おめでとう。昨日は保護者もいたので当たり障りのない挨拶をしました。今日からは、皆さんはこのグロリア学園の生徒です。現実を見つめてよい学生生活を送って下さいね~」


 にこやかに言うと、生徒をグルっと見渡した。生徒たちは、あまりの学園長の軽さと、いきなりの「現実見てね」発言に動揺したのか、ザワザワし始めた。


「見ての通り、ここには少数の貴族の子女と大多数の法衣貴族の子どもたちがいますよね。良いですか、あなた達はよ。貴族とは、爵位を受け継ぐ、爵位を受け継いだものと婚姻を結ぶ。試験に受かって法衣貴族の資格を受け取る。法衣貴族と婚姻関係を結ぶ。この四者しか貴族とは呼べないのですよ。『ノブレス・オブリージュ』って知っるかなぁ? 高貴なものには果たすべき義務があるのですよ。貴族とは、貴族の役目を果たす者です。役割を果たせない者は、いつでも貴族から外されますよ。それを忘れないで下さいね。私はね、去年から学園長の立場に立ったのですが、今までの学園のやり方はもうこれからは通用しないと思っているのですよ」


 会場全体がまたざわつく。一部の下級法衣貴族の子弟は、その現実を親から聞いているのか、真剣そのもの。いつも下っ端は苦労を知っている。


「土地持ちの貴族の子供の皆さん。あなた達は、これだけの法衣貴族に支えられて生きています。この何倍もの平民の税金であなた達は生きているのですよ。この貴族社会に残れるように頑張ってくださいね〜」


 軽い感じで学園長が挨拶を続ける。それが一層怖さを増す。


「この学園は、貴族社会の序列と、学力の序列の二本立てで成り立っています。貴族の序列の高いものは心して励んでくださいね〜。馬鹿にされないように。法衣貴族の子どもの皆さん。就職試験に騎士爵も含めて試験に落ちたら、あなた達は真っ直ぐに平民です。頑張って落ちないようにね」


 会場のざわめきは最高潮に達した。いいのか、こんな挨拶! 動揺している生徒に手を振りながら、学園長はステージから去った。 

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