素敵な計画 第三章(完)

 レイシアは夏の間、お試しでオヤマー領に行くことに決まった。サチも一緒に行きたがったが、レイシアの身の回りは、オヤマーに帰ったノエルとポエムがいるので、サチは残ってメイド歩行術の特別強化修行月間を向かえなければいけなかった。そう、都会に行きたいのではなく、修行を逃げたかったのだ。


 オヤマーからの迎えが来た。すぐに行くのかと思ったが、ノエルポエムはじめ、ターナー領で生活していた使用人たちが、どうしても温泉に行きたいというので、その日は総出で温泉へ。一晩ターナー家に泊まり、使用人どうし旧交を温めた。



「明日からしばらくの間、お姉様はお祖父様とお祖母様の所に行ってきます。しばらくの間会えないけど、クリシュ大丈夫だよね」


 枕元で絵本を読み聞かせたレイシアは、クリシュの頭をなでながら聞いた。


「お姉様、いなくなるの? さみしい」


「う〜ん。……でもね、本格的に学園に行ったら、中々帰って来れなくなるの。だから、その練習。いきなりいなくなったら嫌でしょ」

「…………」


「お姉様ね、クリシュが生まれる時、お母様が、お祖父様お祖母様の所にずっと行っていてね、お父様と二人で一年以上過ごしていたのよ。その時サチと[素敵なお姉様計画]を立てたの」

「素敵なお姉様計画?」


「そう。だから頑張れたし、何でも出来るようになったのよ。クリシュもやる?[素敵な弟計画]」

「素敵な弟計画! やる! やりたい! お姉様みたいになりたい!」


「そう。じゃあサチと相談しなさい。サチならきっとクリシュを立派な弟にしてくれるわ」


 もう一度頭をなでて、おやすみの挨拶をしてからレイシアは部屋を去った。


 クリシュは、[素敵な弟計画]が気になって、なかなか寝付くことが出来なかった。


◇◇◇


 翌日、高く晴れ上がった青空の下、レイシアはオヤマーに向けて出発した。


 荷物はほとんどない。多少の着替えだけ。それでも、髪留めの猫だけは大事に着けていた。サチと一緒にいるようで心強かった。


(頑張って勉強してくるよ。みんな待っててね)


 馬車はガタゴトとレイシアを揺らしながらオヤマーに向かって進んでいった。


第三部(完)

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