お家へ帰ろう 第二章(完)

 夜、レイシアは弟のクリシュに、お祖父様から買ってもらったばかりの絵本を読み聞かせした。立ち直った祖父母も母も一緒に聞いていた。


「黒猫のミーヤは、もう一人ぼっちではありません。これからは、みんなと一緒にお散歩することになるでしょう。おしまい」


 クリシュは黒猫のぬいぐるみを抱えながら、絵本とぬいぐるみを見比べて「にゃー、すき」といった。


 (かわいい。うちの子、ホントに天使)


 悶えるレイシア。

 絵本の読み聞かせを聞いていた祖父母は、


 (何このクオリティーの高さは。女優にでもなる気なの)


 と、なんとも言えない目でレイシアを見ていた。


 ◇ ◇ ◇


 翌日はよく晴れた日だった。


 朝ごはんを皆で食べながら、アリシアは祖父母の、引き留め工作を受けていた。


「まだいいじゃない。レイシアちゃんにお洋服買って上げたいのよ。昨日はかわいいものが買えなかったし、ね」

「そうだぞアリシア、あんな男の………」


「お父様!(子供の前で悪口は言わない約束)」


「あ、ああ。母さんもそう言っているんだ。もう1日……」


「いつまでも甘える訳にはいきません」


「いつまでも甘えていいのよ〜。ねぇレイシアちゃん。おばあちゃんと一緒にお買い物行きましょう」


 レイシアはキッパリと言った。


「もう帰ります。これ以上


 天を仰ぐアリシア。

「「あの男……」」

 思わず声に出てしまう祖父母。

 何も気にしていないレイシア。


「ごちそうさまでした。私紅茶はいらないです。先にクリシュの所に行ってますね。お祖父様もお祖母様もお母様も、ゆっくりお話していて下さいね」


 今は弟にしか関心のないレイシア。

 アリシアは(悪魔か……レイシア……何してくれんの)と額に手を押し付けながら思った。


「ではアリシア。


 引きつった笑顔の実母を見ながら、死刑宣告を受けた囚人のような気持ちになったアリシアだった。


 ◇


 よく晴れた空の下、お祖父様 お祖母様に見送られ、レイシアとクリシュ、なぜか疲れた顔のアリシアは従者と共にお家へ帰った。

 馬車の中では、クリシュがアリシアの膝に抱えられ、レイシアはクリシュにいろいろと話かけながら、ゆっくりとした時間を過ごしていた。

 アリシアは、「温泉によってから帰りたい」と言ったがレイシアが「早く帰ろう」と大反対。結局クリシュがいるため温泉は認められず、真っ直ぐお家へ帰る事となった。


 ◇


 門の前では、お父様を始め、たくさんの人がレイシア達を出迎えてくれていた。


「レイシアみたいに凄い出迎えは出来ないが、ごちそうは用意しているよ。さあ、うちへ入ろう」


 お父様が気を利かせて用意したお出迎えは、アリシアとレイシアをいたく感動させた。


 (お父様も成長している)


 レイシアはそう思い、嬉しくなった。


「さあ、ここが私達のお家よ。ようこそクリシュ。これからいっぱいお姉さまと遊んだり勉強したりするからね。お父様とお母様も一緒にね。クリシュ、入ろう」


 レイシアとアリシアは、クリシュの手を片方ずつ繋いで、出迎えの人々の心からの拍手の中、家の中に入っていった。


 第二章 完




 ………………あとがき……………


 ここで第二章おしまいです。


 おかしい。第二章は弟とウッフキャッキャする予定だったのに、お母様がレイシアに振り回される回になってしまいました。


 でもいいのです。


 アリシアは、良い妻や母をこなそうと不満を押し込んでいましたが、これからは自分らしさも出して生きることが出来そうです。旦那の意識改革も、レイシアのおかげで出来ました。


 しかし、お母様貴腐人だったとは……。書くまで分かりませんでした。本当に自由なキャラクター達ばかりです。


 ここまで楽しんで頂けたでしょうか?

 ♡☆とかレビューとか感想とか、なにか反応あると「楽しんでくれた」と分かるので、作者として嬉しいです。


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https://kakuyomu.jp/works/16817139555810310315


 ここまで、5万字以上もお読み頂き、本当にありがとうございました。


 閑話一つ挟んで、第三章になります。

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