無名クラブへようこそ
秋野てくと
鮎村 アイリにまつわる異変
「無名クラブを知っているかね?」
昼休みの図書室でのことだ。
彼は自分から質問をしておいて、まるでそのことに
無名クラブ。
そう聞いて最初に思いあたるのは、校内のクラブ活動だった。第十三
あってないような活動なので、クラブ活動に熱心ではない生徒にとっては人気のクラブとなっている。そのため読書愛好クラブといっても読書好きばかりではなく――熱心に活動している生徒といえば、目の前にいる
「その
思わぬセリフにぼくはドキリとした。
「どういうことさ」
「たとえば先日は校舎にある二宮金次郎像をコワしてしまった。こっぴどく怒られたそうだ。次にまだバレていないことなのだが、音楽室の……」
「そうじゃなくて! ぼくは
「大したことではない。目は口ほどにモノを言うということだ」
「お得意の
「手が止まっているぞ。本を開いたと思ったら、まったく先に進んでいない。はたして次のミーティングまでに感想文は間に合うのだろうね」
「昔の本は読みづらくって、頭にはいってこないんだよ」
それでもぼくが読んでみたいと思ったのは、『
「ホームズを読むのなら長編よりも短編から読むといい。今度おすすめをえらんでおくよ。それより、どうせ読まないのなら私の話に付き合いたまえ」
「話って?」
「
昨日の音楽では合唱コンクールの練習をしていた。学年全員で音楽室に並び、ソプラノとアルトに分かれて歌っていたのだ。変わったことといえばクラスメイトの
「左からクヴァンツ、エルガー、ドビュッシー――モーツァルトから右はそのまま」
なんだって?
「それはなにかの暗号?」
「暗号ではなく答えだ。先週まではたしかに
「気づかなかった……。どうしてそんなことを?」
「その人物がそんなことをした原因はといえば――それはどうやら、無名クラブにあるようなのだよ」
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