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第1話 『ㅤㅤㅤㅤㅤ』
今日も友人たちと楽しくゲームをした。明日は土曜日だが、今日はなんとなくきり良く早めの解散となり、たまには早く寝ようかとベッドに横になる。何分?きっと10分も経っていないであろうと、今日は妙にそわそわして眠れない日だと勘付く。
原因はいつもわからないし、なんだかんだ眠れたりする事もあるのだが、今日はまだ眠りたくなかった。今日みたいな楽しい日はスッと眠りに落ちるものであるのに。
"#03138477,16817"
とだけ書かれたアバターが立っている。放置されているのか反応が無い。人の少ないエリアの隅の方。さながら昔遊んだ小さなゲームの隠し要素の様な佇まいで、もしやと数字をワールドIDに打ち込んでみる・・・。下五桁はパスワードだろうか。数字だけのIDは不便なのでそう使われないのだが、なぜかそうだろうという、確信よりも当然めいてワールドに足を踏み入れる。
おや、画面は暗転しただろうか。やけに軽く、作りかけかテストかという世界。草花は揺れ遠くまで続き、時折木が立っている様で、遠くに大きな星が見える他には何もないが、どこかリアルで空気を感じる・・・土の香りはするはずもなく、しかし穏やかに揺らぐ風景を見ていると涼しい夏の夜の風を感じる。様な気になる。
さて、このワールドはその為の場所なのだろうか?どこまで続いているか解らない
草原を、空でも見ながら延々歩こうという趣旨なのだろうか。それなら眠れない夜にはぴったりだな、と思えば真後ろに看板が立っている事に気づく。
"Chase me"・・・私を追って?口に出すと看板の向こうから何かが飛び出し自分を飛び越え、それが何かを確認できないまま草原に埋もれ駆けてゆく。そこそこの速度でジグザグ動き時折止まるのを追う。居場所には▽ガイドが表示されていて見失う事は無いだろうが、これが現実だったらあっという間に逃げられていただろう。
追いかけるうちに、その姿を想像しつつ動きに法則を見つけていった。それは私が急に、あるいは早く動けば瞬発的に逃げる。歩いて、あるいはゆっくり近づけば動きは穏やかだ。しかし、草を大きく揺らしたり、石や枝につまづいて鳴れば相手も反応する。こうなると、次は少しの身じろぎにも逃げられてしまう。
何度か繰り返すうちに、全力で跳べば姿くらいは見れる、この十数メートルは殆ど警戒されずに接近できたので、相手の反応が遅れれば捕まえる事も・・・ん?捕まえろとは言われていない様な?そういえばいつのまにか、▽ガイドが表示されなくなっている、草木の細かな揺れを見ればまだそこにいる事がわかるが、急に走られたら見失うかもしれない。迷いを感じつつ、跳ぶ。
すんでの所で避けられ(どちらへ向かった?)、顔を上げるとドアがあった。
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