異世界種族のV転生 ~こんくっころ~! 異世界からやってきた姫騎士エルフ系VTuberの森焼イセルです! 今日もエルフの森を守るために配信するぞ~!~
【初配信】エルフの国からこんにちは☆【森焼イセル】
異世界種族のV転生 ~こんくっころ~! 異世界からやってきた姫騎士エルフ系VTuberの森焼イセルです! 今日もエルフの森を守るために配信するぞ~!~
タック
【初配信】エルフの国からこんにちは☆【森焼イセル】
俺は緊張しながら、〝とあるVTuber〟の初配信を見守っている。
といっても、モニター越しではない。
透明な防音室の背後からだ。
「こんくっころ~! 異世界からやってきた姫騎士エルフVTuberの
その画面の中のイセルの動く
姫騎士の鎧を着て凜とした佇まいに、ピコピコと動くエルフ耳の可愛さを兼ね備えている。
横には火トカゲのマスコットキャラが浮かんでいた。
イセルの元気が良い挨拶を見て、リスナーたちがどんな反応をしているのかスマホでコメント欄のチェックをする。
流れが異常に早い。
●始まった!
●きたー!
●ご照覧あれい!
●あっ、イセルたんインしたお!
●この混沌とした令和の時代にエルフのロールプレイ降臨w
●間に合った
●こんくっころ……!?
●くっころたすかる
●守るどころかエルフの森を焼かれそうな名前で草
●今、100万人が見てる……
●VTuberの同接記録を更新したな
●ありえねぇ数字、金で買ってるのか?
●にわか、理由はWikiでも読んでおけ
「自分の〝ガワ〟を描いてくれたのは――」
●ガワで草
●言っちゃったよガワってw
●クソワラタ
俺はイセルの〝ガワ〟という発言に焦った。
急いでチャットで訂正するように告げた。
「あ、〝ガワ〟ではなくて、姿……写真? をやって? くれたのはイラストレーターのA先生だ。エルフの国からやってきたばかりの姫騎士ゆえ、色々と慣れてなくて……すまない……!」
●あの伝説のA先生ってマジ?
●A先生デザインだからこんなに人が集まってるんだって
●最高のガワ
●うおー! 見た目が可愛すぎて推せる!
●『かわいい』だけに、『ガワいい』ってなw
●もう一生ガワで擦られるやつで草
「そして、それを動くようにしてくれた方は――」
俺は、多少は脱線したがイセルは何とかなっている――と内心ガッツポーズをしてしまう。
いいぞ、その調子だ。
ここは配信に関わってくれた方々の紹介だ。
「BGMを作ってくれた方は――」
このまま順調に配信を進めていけば問題はないはずだ。
「で、これが社長の顔」
突然すぎる俺じゃん。
●いきなり実写で草
●いやああああああああ男よおおおおおお!!
●社長の個人情報(顔面)を出してくるとか伝説すぎるw
●ヤバすぎて伝説の配信になった
映し出される写真。
想定外の事態に俺は焦った。
思わず防音室の中へ乱入してしまう。
「いきなり何をしてるんだ、イセル!?」
「いや、色々と紹介しておけって台本にあったぞ?」
「色々の中に社長の非公開顔面の紹介を含めるなよ!? あと台本言うな!?」
●社長乱入でさらに伝説になったなw
●ワラタ
●意外とイケボ
●いやああああああああ男よおおおおおお!!
●仕込みにしても男が出ると萎えるな
「あ、いや、これはその……リスナーの皆様方、申し訳ない……」
「落ち着けリスナーの人間共。コイツはな、すでに愛してる女がいるんだ……! もう二度と会えないが、それでもその人だけを想い続けているピュアな奴なんだ!」
●二度と会えない……? まさか恋人か結婚相手が死んだってこと……?
●ガチかよ
●ユニコーンだけど泣いた
●いやああああ男よおおお!! ……だが許す
「い、イセル……その話(ガチ恋していたVTuberに恋人がいる事が発覚して電撃引退された黒歴史)は……
「ああ、わかった。人間の事情は詳しくは知らないが、悲しき過去って言ってたもんな……。それじゃあ次は自分――森焼イセルの自己紹介だ!」
●社長のファンになりました
●悲しき過去持ちの社長メンシまだ?
●イセルちゃんの自己紹介きた!
●おじさん、イセルちゃんのエッチな自己紹介聞きたいナ! おじさんの恥ずかしいところの自己紹介もするから、あとでDMしてきてネ!汗汗
●おじさん構文で草……とか書いてたらおじさん消されてて大草原
●メッセージが削除されました
●メッセージが削除されました
●カオスすぎる初配信
「よくわからないが、盛り上がってくれているようで何よりだ! では……自分の名前は森焼イセル! 地球世界と対になっている天球世界にある、アルヴァンヘイム女王国の姫騎士だ!」
●設定作りすぎ
●天球世界w 説明してくれてテンキュー!w
●ロールプレイがガチガチで笑う
●森焼の異名を持ち炎を自在に操る高貴なるエルフの姫騎士
●異世界人……ってコト!?
●すげー異世界人だー(棒)
●VTuberさんだって個性を出すために頑張ってるんだぞw
●しつもーんw 森焼イセルって名前、縁起悪くないっすか?w もうちょっと設定考えようよw
「設定というのはわからないが……良い質問だ。この森焼という名前は、わざとそういう森を焼くという悪い意味をつけているんだ。文字による魔術の一種で、エルフ全体の特徴的な名付けにもなっているぞ」
●日本でも昔、わざと幼名を酷くする文化があったであります
●へ~、ネタ名前かと思ったらよく考えられてるじゃん
●これだけ自然にロールプレイできるってことは元声優さんか?
●質問、なんで異世界の姫騎士エルフが地球でVTuberやってんの? 設定厨だから気になった
「どうしてVTuberをやっているかというと、それは効率よく魔力を得るためだ。配信によってリスナーから魔力が生み出される。詳細は政府に口止めされているために伝えられないが、それがエルフの森のためになるんだ」
●政府に口止めwww
●急に規模が大きくなってきて草
●リスナーから魔力?
●ワイに元気を分けてくれぇー!
●ネタをまじめなテンションで話せて偉い!
●異世界エルフのロールプレイ完璧じゃん
「ロールプレイとは何だ? 天球世界にない固有の言葉は、あまりわからないんだ……」
●ロールプレイとは、そのキャラになりきるという行為です
●ウソおつ! ということ
「なっ!? 自分はウソなど吐いていないぞ! 正真正銘、本物のエルフだ! 耳だって長いだろ!? 人間はそれぐらいも判断ができないのか!?」
●だから、それはガワだってw
●顔真っ赤で可愛い
●森を焼いちゃうぞ~!
●ちょっとエルフの森焼いてくる
「あ、貴様! 冗談でもそういうことを言うなー!」
***
――その後、意外と何とかなって初配信は無事に終了した。
すでにまとめサイトで『目が死んでる社長の顔出し乱入で伝説の初配信!w』と煽られているが、それは話題になったと我慢しておこう。
俺は防音室の扉を開けて、イセルに労いの言葉をかける。
「お疲れ様、イセル。初配信にしてはよくやったと思う」
「き、緊張して魂が抜けるかと思ったぞ……。コメント欄の人間共め、好き勝手言ってくれて……!」
「まぁまぁ、落ち着けよ。初配信が無事に上手くいったら、今日は故郷に帰ることも許されているんだろう?」
「ああ、日帰りだがな。地球世界と天球世界の月齢も都合良く、今なら携帯型の魔道具でも転移できる」
そう言うとイセルは、防音室の外に転移陣を展開させた。
その向こう側に広がる景色はエルフの森――だったモノだ。
焼かれるよりも酷く、瘴気が漂い、地面はひび割れ、木は枯れ果て、動物の骨が散乱していた。
「我が故郷、エルフの森。いつの日か必ず復活させてみせる。たとえ、この魂を異世界で燃やし尽くしても……」
そう決意を固める少女は、現実の姿でも――本物のエルフだった。
そして、どうして俺が新進気鋭のVTuber事務所〝異世界ライブ〟の社長をすることになったかというと、まだ社畜時代だった頃へと
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