花がほしい(リクエスト作品)

※この物語はフィクションです


私に似合う方はいないのかしら?どこを見てもいるのはみすぼらしい枯れかけの方たちばかり。まるで元気がないわ!もっと私の美しい肌や服に似合う方はいらっしゃらないの?


今日も私に付き合ってほしいと言ってきた方がいらっしゃったわ、しかし何よあのみすぼらしい姿!茶色くなった茎に水分を含んでいないかのような花びら、そして虫食いの葉っぱ!なんてみすぼらしい!もちろんお断りしましたわ!全くなんて人なのかしら。


その次の日も、次の日も私の目に留まる人はいなかったわ!ここにはほんとうにこのような人たちばかりなのかしら?いい加減少しお手入れしなくては私の美しさもけがれてしまいますわ。最近はお世辞にもいい風が吹いているとは言えませんわ。まったくどなたかお手入れしてくださる方は?いらっしゃらない?なんて融通の利かない方たちなの?まぁいいわ今日はなんだか眠くてよ。また明日にでも私に似合う完ぺきな紳士を探して見せるわ!



数年後、この地には博物館がたっている。

ここの山は、人間の都市開発の手が入り動植物などが死滅してしまった。しかも中途半端に手が入ったところで開発の計画が白紙に。結果として生き物の住処を人間が身勝手に奪っただけになってしまった。それを問題視したこの都市の市長が建てたのがこの博物館である。

そこの植物エリアに一つのたんぽぽの標本がある。この地域の廃棄物処理場の横で他の花が枯れる中、一番最後まで咲いていた花。他の花よりも生命力の高い種類であったため交配もできなかった、そして人間により住処を奪われた悲しき花、しかし彼女はもう悲しくはない。いや、昔よりももしかしたら幸せかもしれない。

なぜなら…

彼女の隣にはもう一輪のたんぽぽが寄り添うように咲いているからだ。

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