第9話(3) 喧嘩をやめて
「落ち着きましたか?」
令和が平成の背中をさすってやる。平成が呟く。
「あ、ああ、なんとか……」
「……『この争いをなんとかすること』、次のステップとはそういうことですか?」
「当初の予定とは違ったが、まあそう思ってもらっても差し支えはないな」
平成が姿勢を正して答える。令和が頷きながら前に進み出る。
「なんとかしてみますか……」
「お、おい、令和ちゃん……」
「大丈夫です」
令和が源と平の間に立つ。
「うん?」
「なんだ?」
「お二方、そもそも争うきっかけはなんですか?」
「む……」
「そういえば……」
「「なんだったかな?」」
「ええっ⁉」
声を揃える源と平の答えに令和はズッコケる。
「……というのは冗談だ」
「簡単に言えば武士階級の頂点を狙っての競い合いだな」
「し、しかし、1156年の『
「源氏も平氏も親子・兄弟が敵味方に分かれて戦った」
「敗れた方は死罪に処された……」
「た、確かにそうですが、天皇家の後継ぎや摂関職を巡っての争いが武士の参加によって体勢が決した史上初の政争になりました。武士の存在が無視できないものになった証です」
「それはそうだな。その功が認められ、『
令和の言葉に源が頷く。平が笑う。
「何より勝敗の動向を決定づけたのは平清盛が『
「存在感を高めた平清盛の後ろ盾を得た後白河天皇は院政を開始、院近臣の僧、『
「ああ……」
令和の問いに源が頷く。
「それに対して不満を持った『
「乱は清盛が鎮圧。ここから『平家一門』が政権を掌握する……」
「……『
平成が口を挟む。令和が説明する。
「平という姓は皇族が臣籍降下する際に賜る姓の一つです。『
「ふむ……」
「例えば939年に『
「『とっとこハム太郎』の口癖じゃなかったんだな……」
「それは『へけっ』です……」
令和が冷ややかな視線を向ける。
「冗談だよ。元を辿ると皇族なんだな」
「ええ、大きく分けて四つの流派がありますが、著名な平氏はこの平安京を開いた『
「ほう……」
「東北地方で1051年から1062年にかけて起こった『
「まあまあ……なんとなく分かった」
「なんとなくですか……」
「とにかく両者には浅からぬ因縁があるということだな」
「そうですね、この争いを止めるのはやはり至難の業です……」
「それならばその逆を行こうか」
「え?」
令和が首を傾げる。平成があるものを源と平に渡す。
「ん?」
「これは……?」
「紅白帽だ。リバーシブルになっている」
「帽子をお二方に渡してどうするのですか?」
「これから両者には運動会をしてもらう!」
「はっ⁉」
平成の突拍子もない発言に令和は驚く。
「源平合戦では平家が赤い旗、源氏が白い旗を掲げて戦ったと聞く……」
「ああ、対抗戦などでの伝統的な二組の色分けですね。源平の争いがルーツだとか……」
「そうだ、こうなったら徹底的に、あくまでも平和的に争ってもらい、健康的な汗を流せば、わだかまりも限定的には解けるだろうという希望的観測だ!」
「~的が多いですね!」
「……とにかく体を動かせば良いのだな?」
「そうだ、源くん! 流石に察しが良いな!」
「ちょっと待っていろ……鎧兜を脱いでくる。やや重いからな」
源はその場から離れる。平が呆れる
「戦いに備えているのではなかったのか?」
「まあまあ、平くんも紅白帽を被って!」
「お、おい! ちょっと待て!」
平成が烏帽子を取ろうとしたので、平が慌てる。令和が止める。
「平成さん、烏帽子を取った姿を見られるのは大変恥ずかしいことなのです!」
「あ、そうなの? そりゃあ悪かった……」
「ったく……これを被れば良いのだな?」
平は物陰に隠れて、帽子の赤色の面を表に向けて被り直してくる。
「……待たせたな」
束帯に着替え、帽子の白色の面を表に向けて被った源が戻ってくる。平成が頷く。
「よし源平フィーチャリング令和による運動会だ!」
「わ、私も参加するのですか⁉」
平成の宣言に令和が驚愕する。
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