第3話 アカネの実力(1)

 冒険者になるには、冒険者ギルドでの登録が必要となる。

 登録手順は簡単で、特殊な水晶に手を翳すだけ。

 それだけで冒険者になれるのだが、その際に一つの選択肢を迫られる。


 〈魔法orスキル〉


 魔法を選ぶと、文字通り魔法が使える。

 使う際には魔力を消費するが、魔力量を上げることで強力な魔法を使えるようになっていく。

 潜在的な才能などには左右されず、時間をかければ誰でも強くなれるのだ。


 対してスキルは、個人の潜在的才能に応じて能力が発動する。

 使う際に魔力や体力を使用する必要は無く、強力なスキルが発現すればその瞬間に強者となれる。

 だが、スキルは個人差に応じるためか、ハズレのスキルに当たることもしばしば。


 魔法を選んで努力し、確実な方法で強くなるか。

 博打性は高いが、一気に強力な力を得るか。


 どちらを選ぶかは、冒険者次第である。



 ***



 クロトは目の前の光景に困惑していた。

 アカネの夢を追う姿に少しばかり心が動き、何となく協力したくなった。

 彼女が英雄になる手助けをしようとしたのだが……。


『まずはアカネさんの実力を調べようか』


 そう提案し、魔物が出る場所まで移動した。

 そして丁度良くスライムに出くわした。

 スライム以下だという実力。負けることは分かっているが、強さは測れるだろう。

 そんな甘い考えを抱いていた。


「どうですかね……わたしの実力」


 案の定アカネは負けた。

 戦闘後、地面に仰向けになって息を切らしている。ここまでは予想通りだ。

 が、しかし――


「……どうやったら、スライムにボロ負けできるの?」


 負けることは予想しても、惜敗だと思っていた。

 が、結果はまさか惨敗。

 いくらクロトでも、そこまでは予想外であった。


「わたしって、どのくらい弱いんですかね?」

「う~ん……」


 顎に手をやり首をかしげる。


「ゾウリムシとかのほうが強いかもね」

「え、わたし単細胞生物以下ですかッ!?」


 どうやらクロトは、とんでもない無理難題に首を突っ込んだようである。

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