幼馴染みとラジオの向こう
ゆうき±
第1話 推しの〇〇〇
「さて、今日もラジオの質問コーナーをしていくぞ~!」
元気よく言い放つラジオの向こうの彼女の名は叶彼方≪かなうかなた≫、明るく元気なラジオコメンテーターだ。
僕事
理由は前に一度通りがかったときに流れてたラジオがきっかけだった。
彼女のおかげで毎回憂鬱なことがあっても元気が出る。
「さて、まずはラジオネームグレンテツオさん、いつもありがとう!」
あぁ、僕じゃないのか……。
選ばれなかった時は毎回残念だ。
毎回送っているので選ばれなければお蔵入りなので、毎回冷や冷やして聞いている。
「こんばんわ、彼方さん。こんばんわ~。
「僕は高校生男なのですが、好きな女子にどうやってアピールすればいいですか? 女性の彼方さんの意見をお聞きしたいです」
高校生の恋愛トークのようだ。
「う~ん、私はそういうのは疎いからわからないけど……」
「でもでも、とりあえずデートに誘ってみることをお勧めかな!」
まぁ、そういう答えにはなるよな。
正直、その状況がわからないので答えにくいのもある。
答えから察するに彼方ちゃんに好きな人がいないのはほっとした。
「彼女にまず自分を知ってもらうことが大事だと思うよ」
「だからまず、食事とか行ってみるといいと思うよ!」
「それじゃあ次行くよ~、ラジオネームSR≪エスレア≫さん……」
きた~!
僕の番が来た。
僕のファンネームが呼ばれ、正座でラジオの前に座る。
毎回名前が呼ばれるたびにこうして正座で向き直るのだ。
正確にはエスレアさんではなく、エスアールなのだがそんなものは彼女に読んでもらえる前には些細なことだ。
どっちでもいい。
「こんばんわ、彼方さん」
「こんばんわ~」
「前回、彼方さんの選曲とっても良かったです」
「ありがとう~」
「彼方さんの好きなジャンルとかあったら教えてほしいです」
「前にも言ってたらすみません」
「ふふっ……」
ラジオの前で可愛らしい笑いが聞こえる。
その声はとても嬉しそうな、こちらまでも嬉しくなってしまう程の声だった。
「あぁ、ごめんなさい」
「別に馬鹿にしてるわけじゃなくて、最近見てくれたんだなっと思ったら嬉しくって……私のラジオを見てくれるなんて嬉しい限りだよ~」
「話を戻すと、私は何でも聞くかな~」
「でも、一番聞くのは友達に勧められたアニソンだね~」
「そのアニメがとっても面白くってさ~、私もこのアニメははまってるんだよね~」
「あ、そうだ。 今からポストで#おすすめのアニソンって書くから、皆のおすすめとか教えてほしいなぁ~」
「それでは次、行ってみるよ~」
そして僕の質問は終わり、その後も彼女は元気よくラジオは続いていった。
「さて、そろそろ今日もおしまいだね」
「それじゃあ最後にこの曲、おっと、この曲はさっき私が話してた曲だ~」
「それでは、どうぞ」
そして今日の締めの曲が流れた。
「それじゃあ、皆今週も頑張りましょうね!」
「叶彼方でした!」
「バイバ~イ!」
そうして今日のラジオは終わってしまった。
……風呂行くか……。
風呂に入ると今日の癒しが終わったことを実感する。
ふぅ……。
そうして風呂から上がると着信があった。
同級生の椎名奏≪しいなかえで≫だ。
再び着信音が鳴った。
「お、やっとでた」
僕は深くため息をつく。
「いや~、今日もラジオよかったね~」
奏は僕のため息などなかったようにしゃべり始める。
「でさ~」
彼女がしゃべり、僕はそれを聞く。
毎日ラジオが終わった後の恒例行事になっていた。
「あの彼方ちゃんどう思った?」
「素直に可愛かった」
「だよね、私もそう思った。 蓮人って本当ああいう元気な子が好きだよね」
否定はしない。
元気な子は好きだ。
こっちも元気がもらえるし、何より応援したくなる。
「じゃあ、私じゃ無理かな……」
「なんか言ったか?」
ボソリと電話の向こうで呟く彼女の言葉が聞こえなかったので、問いかけるとがさッと大きな音が電話越しに響き渡る。
「な、何でもない……それより、サイト見た?」
「サイト?」
「彼女、ゆうたべで質問コーナーを開くそうだよ」
「本当か!?」
「らしいよ、質問コーナー人気らしいから彼女の案で始めるみたい」
どこから出た情報かわからないが、彼女も同じ仲間なのでどこかで手に入れた情報なのだろう。
「ほら、今送ったからそれがチャンネルだよ」
送られたURLから飛ぶと、彼方ちゃんのお便りラジオという名前のちゃんねるに辿り着く。
だが、不思議な事に登録者数0となっていた。
……なんで1なんだ?
彼女は正直な話、有名人だ。
なのに、登録者0人はおかしくないか?
「これ、本当にそうなのか?」
「うん、間違いないと思うよ」
まぁ、間違いだったとしても外せば問題ないか。
僕はチャンネル登録を済ませる。
「奏はしないのか?」
「私もしているはずだけど? 1になってるし」
「僕の方も1になってる」
「バグじゃない? その内反映されるわよ。 私が最初に見つけたんだから、しないわけないでしょ」
「それもそうか」
確かに彼女の言う通りだ。
彼女も彼方さんの大ファンなので、しないはずがないのだ。
「私の彼方ちゃんに対する情報に勝てない奴はいないのだ」
ファン第二号なのは悔しいが、これで楽しみが増えた。
「それより感謝したまえよ、そうだ今度のご飯で手を打とうじゃないか」
「あぁ、任せろ!!」
「……じゃあ、楽しみにしてる」
そういうと奏と通話を終了した。
「蓮人~、食堂行こ?」
今日は彼女と昼食を一緒にするという約束だ。
そういうと僕らは教室を出て食堂へ向かうと、一気にこちらに視線が行く。
視線が痛い。
理由は横にいる奏だ。
彼女は学校で人気が高い。
黒髪丸っこい目の童顔、黒髪おさげの文学少女のイメージが強い女の子だ。
これだけ属性がつけば男子の注目の的になるのは必然である。
誰もが振り向く美少女というのは奏の為にある言葉だろう。
食堂へ行くと人が多いせいか、さらに視線が集まる。
しかし、彼女は何事もないかのように食券売り場に向かう。
周りの男子は恐れ多いのか、僕以外彼女から半径二メートルは離れている。
「ん~、どれにしよう……あ、これがいい」
指を食堂の激辛カツカレーのボタンにに向けるのでお金を入れる。
約束だからにしろ、周りの男子や女子から勘違いされること間違いないだろう。
奏はそのままピッとボタンを押すと食券が出てくる。
「ありがと」
食券を口に当て、小悪魔な顔で舌を出して言った。
その瞬間、後ろから殺意のような視線とヒソヒソト話し声が聞こえる。
本当にやめてほしい。
僕はラーメンの食券を買うと、彼女は食券を渡してくる。
席取りは任せろといった感じだ。
奏は席を確保しに行き、僕は二人分のご飯を運んだ。
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