非魔人〜ひまじん〜
タイシンエル
魔人会編
第1話 洋灯の魔人(1)
「「「かーんぱーい!!!」」」
高校卒業を迎えた
そのメンバーは、成実と三年間同じクラスで仲が良かった
入学当初は、演劇部は学校に存在して無かったが、海彦が演劇部を作りたい事を成実に相談した事で成実は一緒に作る事になった。最初に幼馴染の紗枝を誘って、その経由で百花と希望が部活創設に加入してくれた。五人以上の部員が揃う事で条件が成り立ち、顧問も成実の担任が空いていたので生徒会に申請する事ができた。
これで、演劇部として活動する事ができて部活勧誘の張り紙を校内に張り続けてから二週間後にりんが入部したのだ。演劇部は、文化祭やコンクールなどが主な活動である。その他に、地域の老人ホームや保育園に出向いては劇をして楽しく活動していた。しかも、そのお陰でりんと海彦が恋人として付き合う事になった。
「いやぁ、みんなのおかげで高校生活楽しかったよ!」
「黙れ、リア充」
「海彦だけ土に還れ」
演劇部の皆んなは、百花と希望のツッコミに冗談として受け止めて笑いあえる程の素晴らしい関係を築けた事に全員が楽しく余韻を味わっていた。
席順は、百花・希望・紗枝の順で右側の椅子に座り、りん・海彦・成実の順で左側の椅子に座り、各々が注文を始めた。成実は、カルボナーラを注文をしたのと同時に紗枝もカルボナーラを顔真っ赤にしながら同じ注文をした。
「あれれ? 紗枝ちゃんだいた~ん」
「そ、そんな事ないよ!」
「まさか、成実と坂居さんも俺らの仲間!?」
「だったら、成実も土に還れ!」
「分かった。付き合えたら紗枝ちゃんと一緒に土に還るよ」
紗枝は真っ赤な顔で俯き、それ以外のメンバーは哀れみの目で成実の事を見ている。沈黙した状態から海彦は、低い声で成実をトイレへと呼び出した。皆んなは、何の事かも分からない状態になり、静まりつつも高校の思い出を語り始めた。
「な、なんだよ。急に」
「前に言ったではないか! 坂居さんを待たせるなよって」
「確かに、言われたけど。なかなか、勇気がでなくて」
「バカヤロー!!」
男子トイレに海彦の怒鳴り声が響き渡った。海彦は、怒鳴り声を上げながら成実を殴った。
「な、なにすんだよ!」
「坂居さんが待ってるんだよ! お前もわかってんだろ!」
「分かってるよ! だから、帰りに二人っきりになって告白するよ」
「言ったな! 遅いと思うけど、男を見せてくれ」
「わ、分かったよ」
成実は、海彦に殴られた事で自分の気持ちが固まった。告白できないのに、調子のいい事を人前に言ってしまった事を深く反省してこの卒業祝いが終わり次第、紗枝を誘って告白する事を海彦と誓った。情けないと思った成実だが、親友のおかげでなんとか決意が固まった。
そして、二人は取り込みが終わって皆んなの所に戻った時には将来の事を女性陣だけで盛り上がっていた。それでも男性二人を向かい入れ、また全員で自然と盛り上がった。
百花と希望は大学に受かり、紗枝とりんは専門学校に受かった。そして、海彦は地元のスポーツジムに正社員として内定をもらった。しかし、成実に関しては大学を四回も受験しては全部落ちてしまった。成実は、自身だけが浪人生として来年度を迎える事になったが、海彦達に励まされながらも楽しく祝いの会に参加する事ができていた。
そして、注文した商品が全部揃ったりジュースのお代わりも全員がしたりなど、この状況を堪能しながら成実は紗枝の食べている所を周りにばれない様に眺めていた。
紗枝は、長く伸ばされた黒い髪を白肌で綺麗な手で耳にかけながらフォークで綺麗に包み込んで食べた。そして、そのしぐさに成実は見惚れており、周りの話についていかなければならないと分かっていながらもフォークが先に進まない事に焦っていた。
それから、成実は何とか食べ終わる事ができた。そして、他のメンバーも食べ終わって少し雑談をしていたが、成実達は外が暗くなったのを見て自然と会計を済ませて笑いながらファミレスを後にした。
「この後、どうする? 私は、希望の家にお泊りだけど」
「みんなで歩いて帰ろうぜ」
「仕方ないね。希望と海彦の家って歩いていける距離だもんね」
「ほんと最悪よ」
「そんな事を言わずに褒めてよ。俺もりんちゃんと一緒にお泊りするんだからよ」
「えぇー!! もうそこまで行ったの?」
「調子に乗らいでよ。私は、未だに彼氏募集中なんだから」
「垣久、すまないな。それより、坂居さんと成実はどうするんだ?」
成実は、海彦からチャンスを貰ったと感じたのでその優しさを受け止めて紗枝に二人でカフェに付き合ってほしいとみんなの前で伝えると紗枝も恥じらいながらも了承した。
「へぇ~。そういう事ね。なら、二人とも楽しんでね」
「成実と坂居さん、またな!」
「う、うん」
「失礼します」
成実は、紗枝の緊張した声を最後に他のメンバーと離れ離れになり、紗枝と二人だけになった。成実は、沈黙状態の紗枝を何とか引っ張ろうと必死に喋った。幼馴染でありながら、お互い意識しだしたのは中学の時からだ。親同士も仲が良く、家族同士で食事会や花火大会に行く事もあった。一緒に居る事で好きになり、家族同士のイベントで休日にもよく会って距離を縮めていた。成実と紗枝は、お互いの気持ちに気付きながらも今まで引きずっていた。
しかし、成実は決心して少しだけ話がしたいとファミレスの近くにあるカフェに着いて席に座り、ジュースを注文した後に成実は海彦との約束を守る為に話を持ち出した。
「さ、紗枝ちゃん!」
「な、なんでしょう?」
「どうしても、話したい事があって……」
「は、はい」
「今まで黙っててごめん」
「な、なにが?」
「いや、その、えっと……」
「私も黙っててごめんなさい!」
「な、なにが!?」
「私も貴方の気持ちに気付きながらもなかなか勇気が出なくて、どうしたらいいか……」
「俺が悪いよ! だって俺は男だし、男である俺から言わないといけないのに」
「男だからって言わないといけない事はないよ! だって、この関係が壊れるのが怖かったし、男性だろうと女性だろうとそう言う気持ちは誰にでもあると思う」
「気を使ってくれてありがとう」
「い、いえ、そんな事はないよ。成実君ともっと仲良くなりたいし……」
「な、なら、今度は二人だけでどっか旅行に行こうよ!」
「うん!」
それから、成実達はとても仲良く話し始めた。卒業祝いで、先程のメンバーと大阪の旅行に行く約束をしていたが、その前に二人で近くの遊園地に遊びに行く事を約束した。大阪の後には、二人で北海道に行って食べ歩きがしたい事など、今まで貯めてきた気持ちが爆発した様な勢いで決まった。
「私は、どうやら成実君の事が好きみたい」
「俺も好きだ。ずっと、ずっと前から好きでした」
「私もずっと前から好きでした。なので、私と良かったら付き合ってください!」
「喜んで! 俺も紗枝ちゃんと付き合いたいです!」
「ありがとう。でも、土には還らないでね」
「その節は、調子に乗ってしまいすみませんでした」
成実は、紗枝に冗談を言われて恥ずかしながらも謝った。紗枝は、笑いながら気にしてない事を伝えた。むしろ、かっこよく思い成実の気持ちがまだ変わってない事も確認できた事に嬉しく思っていた。
そして、二人は注文したジュースを飲み干してカフェを後にしたが、帰りながらも旅行の話は終わらなかった。それに、二人は自然と手を繋ぐ事で薄暗い夜道を楽しく、そして明るく帰る事ができた。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
その刹那、聞いた事があるようでない叫び声が聞こえた。二人は、その声が近くにある事を察知してその声を辿りながら行き着いた。
「な、なにこれ……」
その光景は、血まみれになって倒れている人が複数人居た。しかも、よく見るとどこかで見た事がある人が近くで倒れていた事で今までの素敵な雰囲気が一気に壊れた感覚を成実達は覚えてしまった。
「百花ちゃん!!」
「嘘だろ……。奥にいる人って、まさか」
成実が気付く事で百花を気にかけていた紗枝も奥の光景を見た。それは、知らない男がりんを犯している光景だった。服を破り、下のズボンを脱がせて欲のままに笑いながら性交していた。しかも、その横には顔が綺麗に潰れている海彦の遺体が転がっており、その近くにも希望の股間から大量の血が流れている。
「いっひー! さっきの女だけじゃなく、こいつも処女だな! 二人の初めてを奪う事ができて最高だぜ!」
その男の片手には酒瓶を持っており、酒を飲みながら苦悶の表情を浮かべているりんを玩具のようにもて遊んでいた。紗枝は、見るのが耐え切れなくなり、立ち尽くして圧倒されている成実を置いてりんを助けに走った。だが、それに気づいた男は途中で性交を辞めて紗枝に襲い掛かった。
「いやぁぁ!!」
その男は、紗枝に覆い被さり両肩を殴って肩を外した。その激痛に耐えられず、紗枝は大声を上げるも動けずにいた。男は、楽しくやっていた性交を邪魔されて苛立っているのでかなり不機嫌である。
「てめぇ! 邪魔すんじゃねぇ! 気に食わねぇ女だ! 殴り殺してやる!」
男は、そう言いながら紗枝の顔面を感情込めて殴り始めた。成実は、動く事ができずに立ち尽くす事しかできないでいる。紗枝は、恐れながらも高校生活を共に過ごした友人の為に体を張っているのにも関わらず、どうしても成実だけが恐怖から声も体も動けないと感じながら紗枝と比べて自身の情けなさを実感していた。
紗枝の綺麗な顔も原型が無くなり始めている。成実は、俯きながらも『動け!』と自身に言い聞かせているが、どうしても恐怖に打ち勝つ事ができなかった。そして、殴られ続けいる紗枝は意識を失ったかのようにびくともしなくなった。
「死んだか? いや、まだ生きてやがる」
しかし、生きてる事に気付いた男は紗枝の首を絞め殺そうとしていた。成実は、さすがにその光景を見て声を荒げた。しかし、肝心の体が動けずにいた。しかも、男は成実の声に気付かずに強く締め続けている。
その刹那、押し潰す様な勢いで頭上から白い煙が降ってきた。成実もその男も何事かも分からずに噎せる一方だった。唯一分かるのは、その煙がタバコの臭いがすると言う事だ。それと同時に、煙の中から二人の女性がやってきた。
一人は、女性用のスーツを着ている生真面目そうな女性であり、もう一人は赤色のシフトドレスを着て右手にはチャーチワーデンの様な長めのパイプタバコを持っている。だが、そのパイプタバコはまるでランプの形をしていた。
「あらあら。派手にやってるわね」
「どうされますか?」
「そうね。私が手を下すまでもないわ」
「了解しました」
「なんだ! てめぇらは! ぶふぉっ!!」
噎せながらも男と成実は、二人の行動を眺めていた。しかし、男が声を荒げながら邪魔された事を咎めようとした刹那、スーツを着た女性が男を勢いよく顔面を殴り飛ばした。その後、まだ充満している煙の中から銃のような武器を手元に作り出して男に発砲した。
「いぎゃぁぁ!!」
「いい気味だわ。この女達を犯したのはあんたでしょ?」
「だから何だよ! 気持ち良かったからいいだろ!?」
「ゲスですね! 調子に乗らないでください!」
「うがぁぁ!!」
謎の女性は、男のゲスな発言に軽蔑な目を男に向けながら発砲していた。その後も尋問が続いていた。しかし、男は『詳しくは知らない』の一点張りであった。そして、拘束もしていないのに男は恐怖から身動きができなかった。
それから、出血多量で弱まってきた男にスーツを着た女性は煙の中から拘束器具を作り出して無抵抗の状態から拘束を開始した。そして、拘束を完了すると女性達の目先が成実に向けられた。
「貴方は、被害者の知り合いだよね?」
「は、はい」
「いきなりで申し訳ないと思うけど、後で私達の基地まで来てくれる?」
「は、はい」
男も静まり返り、成実は女性達に助けられたと思い安堵した。やがて、女性達の所に特殊部隊らしき人物が数名やって来て友人の遺体や捕獲している男を黒い大型トラックに詰め込む作業を開始していた。すると、動かなくなった紗枝の遺体を運ぼうとした時に成実は引き留めた。
「紗枝ちゃん!」
成実は、先程まで楽しく本音で語り合えていた時とは思えない程に惨めな姿の紗枝に泣きながら問いかけていた。それでも、返事がしなかった。成実は、助けられずに立ち尽くす事しかできなかった事や自身より先に土に還ってほしくない事を周りの者など気にせずに二人の世界に入って話しかける。
「なる……。く……。ん」
すると、何を言っても返事が来なくなった事に落ち込んでいた成実に紗枝が最後の意識を振り絞るかのように問いかけた。
「ごめ……。んね……」
紗枝は、それを言った後に目を瞑って微動だにしなくなった。それでも成実は、紗枝を抱えてまた話しかける。子供みたいに顔を崩しながら、柔らかくて細い体をした紗枝を抱きしめる。明後日には遊園地に行き、その後はみんなで大阪に行き、その後は北海道に食べ歩きに行き、その後も、そして家族にも無事に付き合えた事を報告する等、やりたい事を語り続けて周りの人に止められても成実は離そうともしなかった。
ついには、特殊部隊らしき男の人に突き放されて周りを見る。先程まで、楽しく過ごしてきた高校の友人達が遺体用の大きな黒い袋に入れられているのを成実の視界に入った。
「みんなぁぁ!!」
この場を納めた女性二人は、成実が思う存分に泣き終わるのを待っていたが、パイプタバコを持っている女性が懲りて成実の首筋に強い衝撃を与えて気絶させた。
「後で、思う存分に話を聞くわ」
「ところで、彼をどうするおつもりでいらっしゃるのですか?」
「それは、彼次第と思うわ。できれば、契約を交わしたい所だけど」
パイプタバコを持っている女性は、口から煙を出して成実とスーツを着た女性と共に煙に交じって姿を消した。そして、特殊部隊らしき男性達は充満した煙が完全に消え去るまで敬礼をした。
「後は私達にお任せください。
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