忘れられたくなくて、忘れて。忘れたくないから、忘れられた。
@mohoumono
第1話 記憶は、凸凹で
彼女といた日々は、嬉しかったと
日記に書かれている。
その全ては、手で水を掬うと隙間から
溢れていくような、、そんな感覚だった。
これをいうと、悲しませてしまうから
僕と一緒に燃やしてしまおう。
いや、明日には忘れているから
残しておこう。
体が動かなくなってきた。
どうやら、もうすぐ死んでしまうようだ。
走馬灯は、期待しないでおこう。
損をするだけだろうから。
けれど、僕は思いの外嬉しかった。
悲しい記憶が片手で数えるくらいしか
思い出せなかったから。
僕が墓に持って行けるのは、
日記をコピーしたものと
彼女に対する後悔だけだ。
みんなが嘘をついてくる。
彼が息を引き取ったって
いや、嘘ではない事を知っている。
でも忘れている。
絶対に忘れている。明日になったら
私は、目の前の石の意味を知っている。
けれど、忘れている。
それが悲しいから、
きっと明日も忘れている。
忘れられたくなくて、忘れて。忘れたくないから、忘れられた。 @mohoumono
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