現実はいつだって甘くない

林雷巣

第1話

此処は何処だろう?

あたりを見渡すと、先ほどまでいたバスではなく見知らぬ草などが生えた山らしきところにいた。

頭上では「つくつくほーし」などと何処かで聞いたことあるような声で鳴く鳥らしいものがある。

どうしてこうなった?

僕は先程までなにをしてたのかを思い出す……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今日は待ちに待った高校の修学旅行。

今はクラスメイト達とバスで移動している。

僕はそこまで喋る方ではないので、バス内の喧騒をBGMに窓の外を流れる雑木林を見ながらボーっとするわけがねぇよ!

喧騒に混じろうと、クラスメイトに話しかけたその時、突如車内が揺れた。

小刻みではなく、ガコンッと大きな音を立てて。

なにがあったのかと皆が騒ぐ中、運転手が確認しに降りて、しばらくしたら戻ってきてこう言った。

「落石でした。特に問題はないのでこのまま走行します。」

その言葉を聞き、皆は安堵のため息を吐く。


次の瞬間、バスの天井が大きく凹んだ。

一拍置いて、皆は錯乱したらしく悲鳴や運転手に対して罵声を浴びさせたりしていたが、運転手はもうバスの中にいないで、外に逃げていた。


何人かがとっさに追いかけようとしたが、シートベルトをつけていたのを忘れていたらしく、立てないでいるうちに、さらに天井が凹み、もう触れる位置にあった。


あれ?そもそも、落石するっけ?山無いし、此処は林なんだけどなぁ…ってあれ?もう落石ない?もしくは死を感じる瞬間に時間が伸びるとか言われるあれかな?…と思った次の瞬間に僕の意識は失われた。



〜〜〜〜〜〜〜

とまぁ、こんな感じだった。

死んだかと思っていたが、どうやら一命はとりとめていたらしい。

だか、ここはあからさまに日本じゃない。

先程まで乗っていたバスもないし、何より此処は道路もない。

となると、此処は夢か、天国か、ラノベあるあるの異世界か。

異世界だとしたら、普通はなんかこう、美人の王女とかがやってきて、ステータス確認とかで俺TUEEE展開じゃないの?ってことは、ここは天国だな。うん。

母さん、ごめんなさい。先に旅立つ不幸をゆるちてぇ!


そう思い、眠気がないかも…と思い、寝ようとすると、

「おぅぇ!?ここ何処だよ!?バスやないん!?

ってか、皆なんで寝てる!?」


……ん?なんか大林の声がするな…と思い、周りを見渡すと先程までいなかったクラスメイトの姿があった。


「おぉ!中村じゃん!お前、何か知ってるか?」

と言われたので首を振り否定をしめす。

「まじか〜とりま、誰か目が覚めるまでまた待ってようぜ」

「わかったよ…」


そして二人がぼーっとしてると、ふと大林は言った。

「なぁ、中村、いまなら西木襲ってもバレなくね?」

西木は、大林が好いている女子だ。

「おい、寝てる相手を襲おうとする犯罪者予備軍よ、人としてそれでいいのか?」

大林はにへらっと笑うと言った。

「大丈夫大丈夫!どーせ誰も起きたないんだし。」

おい、後ろだよ、大林ぃ!

「へぇ〜。誰が起きたないって?」

大林は、錆びたロボットのように、ギギギっと後ろを向くと、後ろに満面の笑みの西木が。

「あ、あら、西木さん。起きたのねぇん?」

おい、大林。キャラがブレてるぞ?

そして僕はどさくさに紛れて逃げようとするが、西木に襟首を掴まれ「ぐげぇっ」と変な声を出しながら捕まった。

「僕も……ですか?」

「当たり前でしょ?」

「ハイ、ソウデスネ」

「中村……羨ましいぞお前。」

大林……お前、来るところまで来たんじゃん……

大林と二人で正座されられて、人の倫理感など解かれている中、大林はそっぽを向いていたら、西木に頭を踏まれて、恍惚としていた。


ここに来る前の、リーダーシップがあった大林を返してよぉ!


「此処は何処だ?」

「此処は誰?私は何処?」


などと、だんだんと全員起きてきたので、西木はいつのまにか寝たフリをして、今起きましたよ感を出していた。

大林は、寂しそうに頭をさするな。

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