スリーブダガー あなたの心を離さない“食いしん坊な”あの子

鷹山トシキ

第1話 

 京都府の沼地にて、天城和臣あまぎかずおみ博士は鶏の脳みそと人間の融合についての研究で成功していたが、ライバルである桜庭辰之さくらばたつゆき博士率いる準軍事組織『スリーブダガー』に研究所を襲われて娘の奈美を殺され、天城自身も瀕死の重傷を負った。拠点は奈良にある。天城は火だるまになる前に研究していた血清を浴びて生き延びており、妹の春子を守るためにも桜庭に立ち向かっていく。


 神奈川の港湾都市、横浜。諜報機関でテロ対策チームを率いるベテラン捜査官、松永安吉まつながやすきちは、1人の青年が密入国したという情報を手に入れる。青年の名は頼音轍らいおんわだち。『スリーブダガー』の一員として国際指名手配されている人物だった。頼音轍というのはあくまでコードネームで本名は定かではない。


 政治亡命を訴える轍は、人権団体の若手弁護士の生田貴美子と知り合い、彼女を介して銀行家である清水千里との接触を図っていた。その後の調べで、轍の目的は千里の銀行にある秘密口座であると知った諜報機関は、公安調査庁の介入を得ることに成功し、いよいよ轍の逮捕に乗り出す。しかし、松永は轍をあえて泳がせて、更なる大物の逮捕を狙っていた。

 

 鳥人間を造ることに完成した天城、ニーナと名づけられた鳥人間は飛びたいと年中思っていた。

 けど、脳ミソが鶏なので飛行機などの存在は知らない。学校の屋上から飛び降りようとして注意されたこともあった。

 あっ、そうそう安吉は松永久秀の末裔だ。

 初めは三好長慶に仕えたが、やがて三好政権内で実力をつけ、室町幕府との折衝などで活躍した。久秀は長慶の配下であると同時に交渉の一環として室町幕府第13代将軍・足利義輝の傍で活動することも多く、その立場は非常に複雑なものであった。また、長慶の長男・三好義興と共に政治活動に従事し、同時に同じ官位を授けられるなど主君の嫡男と同格の扱いを受けるほどの地位を得ていた。


 長慶の死後は三好三人衆と、時には協力し、時には争うなど離合集散を繰り返し、畿内の混乱する情勢の中心人物の一人となった。織田信長が義輝の弟・足利義昭を奉じて上洛してくると、一度は降伏してその家臣となる。その後、信長に反逆して敗れ、信貴山城で切腹もしくは焼死により自害した。


 茶人としても高名であり、茶道具と共に爆死するなどの創作も知られている。


 安吉の後輩、石川霧子いしかわきりこは『スリーブダガー』ってどういう意味なんですか?と言った。2014年も今日で終わりだ。稲葉は関内にある安吉のアパートで寂しい大晦日パーティーをした。2人とも彼女がいない。運の悪いことに安吉のテレビが壊れたのでラジカセで今年はやった曲を聴いた。『Dragon Night』(SEKAI NO OWARI)、『東京VICTORY』(サザン・オールスターズ)など。

 

 そういえば、3月21日(春分の日)、内閣総理大臣の伊庭龍蔵いばりゅうぞうが『テレフォンショッキング』のゲストとして生出演を果たした。現役の首相で初めて出演した伊庭は、バラエティー番組及びタモリについて「無形文化財だと思う」と述べた。一方でこのときアルタ周辺では、出演に反対する人々が抗議のデモ行動を起こした。


『レット・イット・ゴー〜ありのままで』(松たか子)が流れている。(3月にアニメ映画『アナと雪の女王』で使用された)

「隠しナイフの一種だよ。錐のような形をしてる腕に巻きつけた鞘に収納して隠し持つ」

 コタツの温度が熱くて霧子は出た。

「サイクスナイフって1940年にイギリス陸軍のフェアバーン大尉とサイクス大尉によって設計されたナイフもカッコいいよ。重ね着した服の上からでも急所を突けるように改良したんだ」

「あっ、先輩今日誕生日ですよね?」

 霧子はプレゼントを渡した。ペン型ICレコーダーだ。ボイスレコーダー機能が搭載されてるボールペン。通常のペンとしても使用できた。

「遂に40か……両親もかなりの歳だからな?早く結婚して安心させたい。ありがたく受け取っておくよ」

 水面下では奈良国がスパイ衛星を打ち上げた。画像電送を可能で、夜間偵察も可能だ。

 霧子は年越しそばだけでなく、明日食べるはずのおせちまで食べてしまった。

 

 1月1日

 同日より全国的に大雪となり、京都市では3日早朝にかけ積雪量が観測史上3位タイとなる22cmに達し、1954年1月以来61年ぶりに20cm超の積雪を記録。


 鹿児島県のAMラジオ局・南日本放送(MBC)が92.8MHzでFM補完放送を開始


 安吉は京都にある産寧坂にいた。轍は春子と人気のない夜の坂で乳繰り合ってる。こいつらそーゆー関係だったのか?ジッポー型カメラで春子の胸を揉みしだいてる轍を撮影した。

 一応、レコーダーでも録音している。

  

 1月3日 - 兵庫県豊岡市の城崎温泉で全焼8棟を含む19棟に延焼する火災発生、2人死亡、宿泊客ら約60人が避難。(城崎温泉火災) 

 喬太は霧子は吉野線に揺られながら、奈良県クイズで遊んでいた。吉野線は、奈良県橿原市の橿原神宮前駅から奈良県吉野郡吉野町の吉野駅までを結ぶ近畿日本鉄道(近鉄)の鉄道路線。

 始発駅の橿原神宮前駅を出たところだ。🚉

 橿原神宮前駅からは大和八木駅と共に橿原から大阪、京都方面へ向かう列車が出ている。橿原線の列車は全て始発列車で、南大阪・吉野線は当駅が大阪方面への折り返し拠点となっており、区間急行は当駅が終端となっている。また、急行は当駅から吉野駅および大和八木駅までの各駅に、当駅始発の区間急行は尺土駅までの各駅に停車する。

 中央口駅舎は初代新歌舞伎座の設計で有名な建築家・村野藤吾の設計。第1回近畿の駅百選選定駅。


「奈良の県の鳥は?」

 霧子はクイズ本を読みながら言った。

「コマドリ。じゃーねー、奈良の県の魚は?」  

 安吉はスマホの奈良情報を見ながら質問した。

「鮫?」

「金魚やアユ、それからアマゴだよ。奈良に海はねーよ」

「そうでしたっけ?」

「どんだけ〜!」

「県の花は?」

「奈良八重桜」

「奈良県で一番面積が広い場所は?」

「十津川村」

「もしかして、松永さんって奈良出身ですか?」

「俺は神奈川だよ」 

「怪しいなぁ……」  

 霧子はプリッツやポッキー、メロンパンなどをたらふく食べてる。

「見てるこっちが気持ち悪くなってくる」

  

 奈良は和歌山、京都、大阪に近い。昨夜、京都市内のホテルで轍が毒殺されてしまったのだ。

 凶器はヒ素。安吉たちは京都府警の無線を傍受、ゴミ箱をレシートの裏紙に『奈良14』と書かれてあったことを突き止めた。

 府警の連中は奈良14時と勘違いしてるらしいが、近鉄吉野線であること安吉は察知した。


 列車は岡寺おかでら駅に到着した。 

 岡寺駅は、奈良県橿原市見瀬町にある、駅名の由来の岡寺は当駅から約3.5キロメートル(徒歩約40分)離れている。岡寺は無人駅だった。

 2人は駅周辺を散策した。

 

 橿原ニュータウン(路線バスは、橿原神宮前駅へ発着している。そのため橿原神宮前駅を利用する住民が多い)を歩いた。🏘

 安吉は容疑者を5人に絞っていた。

 生田貴美子(27)、清水千里(36)、天城和臣(45)、天城春子(40)、桜庭辰之(61)。

「春子が轍を殺すのは有りえないと思いますよ」と、霧子。

「どうして?」 

「だってあんなに仲がよかったんだから」

「必ずホシを挙げるぞ」

「あなたは大岩課長ですか?」

「『捜査一課長』見てるのか?」

「最近は忙しいから見れてないですけど」

「仲がいいから犯人じゃないって理屈は通らんぞ。親友同士が殺し合う事件だってあったぐらいだ」 

「若い頃は港署にいらしたんでしたっけ?」

「うん」

 2人は隠し撮りした4人の写真を通行人に見せて歩いたが、これといった収穫はなかった。

 

 橿原白橿郵便局の前にやってきた。🏣

「あ〜腹減ったな〜」 

 霧子が溜め息を吐いた。 

「さっきお菓子食べただろう?」

「吉野家の牛丼食べたい。吉野家って吉野と関係あるんですかね?」

「𠮷野家は、1899年(明治32年)に東京・日本橋で創業されてな?創業者・松田栄吉まつだえいきちが大阪府西成郡野田村字吉野(現在の大阪市福島区吉野)の出身だったことから屋号が𠮷野家になったんだ」

「松永さんって物知りですよね?」

「こんなの常識だよ」

 

 まだ11時だが定食屋に入った。御品書を読んでると腰の曲がった年取った女将が「あの〜」と近づいてきた。

「注文ならまだですよ」と、安吉。

「いや、そうじゃないんだ。この辺りに妖怪が現れた」  

 女将が言うには木の子って妖怪らしい。

 奈良県の吉野地方や兵庫県の山間部や森の中にいるとされる妖怪で、同じく山にいる妖怪である山童の一種。


 外観は子供のような姿で、木の葉で作った衣服、または青い色の衣服を着ている。人間がその姿を見るとまるで影のようで、いるかいないかはっきりしないという。


 普段は群をなして遊んでいる。樵や山で仕事をしている人々にはその姿をたびたび見かけられており、彼らにとってはそれほど珍しくない存在という。しかし油断をしていると、弁当を盗まれるなどの悪戯をされてしまい、そんなときには棒を持って追い払うという。


「あんたらも気をつけなされ」

「あの〜」

 安吉は事の経緯を話してから写真を見せた。

「この眼鏡の女性は近くで見かけたな。どこだったっけな〜」

 清水千里がこの辺を訪れていたようだ。

 安吉はオムライス、霧子は牛すき焼きを頼んだ。

 牟佐坐神社の近くに妖怪は現れた。

 霧子はある種の食べ物を食べることで特殊能力を発揮する。牛料理の場合は地震など地系統の魔法を使えるようになり、腹・右肩が強靭になる。また、敵の動きをゆっくりにさせる魔法も使えるようになる。

 木の子は霧子のリュックサックを盗み取った。ひったくるのではなく、物自体の姿を消して自身の手に転送させる。

 木の子はドーナツの袋を破り、美味そうに食った。🍩

「ウチのお菓子が!テメェ!!」

 霧子の目からビームが発射され、木の子が千鳥足になる。

「なんか、酔ったみたいだ」

 安吉がとどめを刺すべく、銃をホルスターから取り出そうとしてると木の子は何事もなかったように走り出し、霧子の腹にボディーブローを食らわせた。死にそうな演技をして、逃げようとしてる木の子目がけてズボンのポケットに入れていたゴルフボールを投げた。高校時代はゴルフ部で右肩を壊していたが、しなやかに動いた。

 ボールは木の子の頭に直撃し、木の子は昏倒した。人間ならここで死ぬ場合もあるが、さすがは妖怪!木の子は立ち上がり、霧子を恨みがましく睨んだ。

 霧子は「ロレ〜ユ、ロレ〜ユ」と呪文を唱えた。   

 ズズンッ!と地鳴りがした。

 安吉のケータイの緊急地震速報が鳴り出す。⚠

 木の子はおののいて山奥へと姿を消した。やがて地鳴りが止んだ。

「何だったんだ今のは?」

 安吉は周囲をキョロキョロ見回した。

 見瀬丸山古墳や菖蒲池古墳を散策したが千里はいなかった。

 この辺は飛鳥地区へ向かうハイキングコースの北の起点でもある。

 安吉のケータイが鳴った。『非通知』

 安吉はケータイを耳に当てた。 

「もしもし?松永ですが……」

《これ以上、吉野線を調べるな。逆らったら家族に危害が及ぶ》

 ロボットみたいな声だ。恐らく機械で声を変えてるんだろう。安吉たちは奈良から引き上げることを決めた。

 

 1月4日 - NHK大河ドラマ『花燃ゆ』放送開始( - 12月13日)。

 ニーナは奈良と大阪の間にある二上山にやって来た。大昔は火山活動をしていたようだ。遠くから望むと、鶴が屯してるように白く見えるので『どんづる峯』と呼ばれている。

 

 1月5日

 ファーストフード店『ファーストデス』、奈良県郡山市で販売された『デスナゲット』にビニール片のような異物が混入していたことを公表、問題のナゲットと同じモスクワの工場で同じ日につくったナゲットの販売を取りやめにした。


 東京地方裁判所が、2015年12月19日に民事再生法の適用申請を棄却されていたDIOジャパンに対する破産手続きの開始を決定した。


 ニーナは亀の瀬地すべり地区にいた。大和川が大阪平野に抜ける渓谷にある地区だ。ニーナは三室山を眺めていた。ニーナは風の声を聞くことができた。

 風は「ここでの地すべりは4万年以上前から起きているんだ」と教えてくれた。

 

 1月6日

 隠岐の島に潜入していた安吉は、島に住む清水千里から、霧子と共に『スリーブダガー』が隠し持つ大量の資金を奪ってほしいと依頼された。千里の正体は首相・伊庭龍蔵いばりゅうぞうの側近だ。奇岩が連なる国賀海岸近くの洞窟で、違法賭博や売春で資金を稼ぐ『スリーブダガー』の連中を追って島内にやってきた安吉と霧子は、『スリーブダガー』に西郷(島の玄関口として汽船が発着する港町。明治まで風待ち港として栄えた)の縄張りを荒らされて頭に血がのぼっていたギャング・雛罌粟充ひなげしみつると共闘して『スリーブダガー』の資金を奪うべく、変装して彼らのクルーザー船に乗込む。しかし、クルーザーの中の金庫には現金はなく、暗号らしき文の書かれた紙が一枚入っているだけだった。


 

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