第4話 負の連鎖

 ストーカーに刺された若い女性。

 ガードレールに突っ込んだ不倫していた俳優とその相手。

 通り魔に刺された女性とサラリーマン、それから大切な親友。

 バスのハイジャック犯に刺されたOL風の女性、恰幅のいい男性、男子学生、買い物帰りの中年女性。


 死亡者はひとり、2人、3人、4人。

 回を重ねる毎に増えていく。⋯⋯次があるなら、被害者は5人だ。合わせて15人。

 もうこれでお終いにしよう。


 ◆◆◆◆


 病院を退院して、腕をつったまま、PCを食い入るように見つめる。裏サイト、闇サイト。普通の人が覗かない、負の感情が渦巻く場所。

 カチリ。

 探していたものが見つかる。これなら道連れができてもあまり心が痛まずに済む。

 僕さえ居なくなればこの負の連鎖は、恐らく――。


 メールが届く。

 匿名のニックネームにはあまり意味は無い。

 場所、時間、それから幾つかの注意事項が書かれている。

 集まるのは今回は合わせて5人。僕の計算通り。

 主催者は何度もこの集まりを繰り返しているらしく、失敗することはまずないらしい。


 サヨナラ、僕を心配してくれる人たち。

 神様の守護より、僕は僕以外の人がしあわせな世の中を望む――。


 ◆◆◆◆


 誰も何も語らない。

 目的はひとつ。それだけが果たされればいい。

 僕の目的は、僕を含む5人が無事に命を落とすこと。

 車に案内される。

 手のひらには錠剤。何度かに分けて飲み込む。

 女子高生らしい、髪を結んだ子が嗚咽を漏らす。

 ごめんね、君はたぶん、助からないよ。

 顔を隠した主催者は「では」と車を閉ざした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る