第2話 信じ難いこの世界

「君はいったい?」

「私は、清水華(ハナ)。あなたは?」

「俺は、菅原勉。ここって..」

「ここは、住宅兼公共の場所でもある、ちょっと変わった場所よ」

「そ、そうなの?あ、あとさ、外から見た感じ、屋内にこんな空間があるとは、到底思えないんだけど、いったいどういう仕掛けな訳?」

「すごい、勉君、質問いっぱいじゃない笑」

「いやだって、どう考えたって..」

「こっちの世界では、空間というものもいじれる技術があるの。勉君の世界には、そんなテクノロジーは、まだ見つけられていないってことね」

なんかよくわかんないけど、マウント取られた笑

「んー、、」

「私ね、勉君と同じく自分の生まれた世界とは、異なる世界にいったことがあるの。そう、あなたの暮らす世界よ。ちょっと危なかったけど笑」

「危なかった?」

「そう、あれはまだ別の世界へと繋がる道が世間に知られていなかった頃だったから、私が無事に戻れたのは、本当に偶然以外の何物でもないの。」

「それじゃあ、華さんの世界の住人は、もうみんなこういったことを知って普通に生活しているってこと?」

「そうよ。今の段階では、あなたの世界と私の世界。これしか発見されてない。それでいて、私たちの世界の方が圧倒的に技術が進歩してる。だから、異世界に通じる道は、発見されているものは常時監視してるけど、新たに生まれた箇所は、監視の目がとどかないの。ちょうど勉くんが通った道がそうね」

「そ、そんなことが本当に。いや待て、今の話だと、こっちの世界に迷い込んだ人たちは、華さんの世界の警察かなにか監視してる人に見つかったら、あまり良くないんじゃ。技術を持ってかれたりなんだりって、そういう話が出てきそう。。」

「ピンポーン。勉君。なかなか鋭いじゃない。まさにその通りよ。そして私の父は、異世界監視官なの。だからここまでしっかり知ってるし、話せてる」

「えっ、、」

「そんな身構えないで。大丈夫。あなたを突き出したりなんてしないわ。あなたがまだなんの技術も盗めてないのは、わかってるから。ただ、あまり時間に余裕は、ないわよ」

「時間?」

「そう、24時間が最大だからね。うっかりしてると戻れなくなるわ。こっちの世界に取り残されて、いいことはほとんどないわ。あなたに対する扱いがって意味でね」

「どういう原理か解明されてないけど、お互いの世界の住人が反対側の世界に行った場合、何らかの作用がその人に働いて、24時間ほどでその世界に属される。そしてこの作用は、人間一人に対して一度きり。つまり、片道限定。往復の前例は報告されてないわ。」

「じゃ、じゃあ、戻らなきゃ!」

「戻れる?道、迷わない?」

「え、えと、多分大丈夫かな。」

「心配ね、いいわ、ここまでどの道を来たか知ってるから案内するわ」

「ありがと!」

信頼できるかどうかというより、他に頼れる人がいない!

余裕がない中でも、帰りの道中、彼女の後ろ姿は、本当に吸い寄せられるほどに魅力的で美しかった。もちろん、その顔も素敵だ。ここまで面倒を見てくれるなんて、内面も完璧だ。

「さ、戻りなさい。ご安全に」

「本当にありがとう。なんて感謝したらいいか。。」

「いいから行きなさい。」

「うん、いつか、またいつか!」


車のクラクションがうるさい。

ハッとした!

最寄駅のすぐ横の小道に立ち尽くしていた俺に、車がどけと言っている。

急いで歩道に入り、深呼吸した。

振り返ると、もうそこに道はなく、ただいつもと変わらぬ光景があった。

「いったい、なんだったんだ..」

この世界には、まだまだ科学で解明されていないことが沢山あるんだろうな。

もっと、身を入れて勉強しよう。

そしてまたいつの日か、あんな素敵な人に出会えたら。

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君はいったい? カンツェラー @Chancellor

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