本当は何処にいた?

 ある夜、夏でもないのにひどく汗をかいた男が店を訪れた。

「今起こったことを忘れたいんだ」

「何かあったんですか?」

「公園で星を肴に呑んでたら、と、と、トイレに襲われたんだ」

 男は全力で逃げようとしたが、酔いの足取りですぐ追いつかれてしまったらしい。

「足元に子供の忘れ物らしい鞠が落ちててね、突っ込んだら苦しがって逃げたんだけど、俺もすぐ逃げたんだ」

 ウエイターは、酔っぱらいの妄言か何かと思ったが、とりあえず注文を通した。


「学校のトイレに花子さんっているじゃん?」

 学生がデザートを頬張りながら、七不思議ネタを話していた。

「ちょっと前に、例の女子更衣室の隣のトイレが水浸しになってて。何かが詰まってたらしいんだけどさ。なんと子供の使う鞠が突っ込まれてたんだって」

「えー、なにそれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る