見たいから

 男性が不思議な箱を手にして来店した。

 何でも複雑怪奇なこの箱はパズルになっており、先日ついにバラバラにすることに成功したそうだ。

 だが、彼はなぜかそれを再び箱に戻し、予約もなく来店した。

「このパズルの解き方を忘れたいんだ」

 そう言われて「できません」と言わないのが当レストラン。早速注文通りのメニューを出し、男性はきれいさっぱり忘れて帰った。

 後日。

 男性は再び箱を持って来店した。

 いわく、「思い出す間もなくまた解けてしまったんだ」という。

 ウエイターは気を利かせ、「指が覚えているのかも」と、グレードの高いメニューを提示し、了承された。

 しかし再度男性は来店した。

 あまりの頻度にウエイターは「別の理由があるのでは?」と聞いてみた。

「この箱の中には大事なものが入っている。それが出てきてもらっては困るんだが、いつの間にまた開けてしまうんだ」

「中身は?」

「妻だよ」

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