純粋な応援団

「いつもの『応援セット』ください」

 少女は、ウエイターに強い思いを添えてオーダーを伝えた。

 このレストランでは、思い出し料理は基本的に予約を頂いての提供をお願いしている。

 だが、何にも例外はある。

 そのうちの一つが、この『応援セット』である。

 内容はいたって単純なもので、ある一つの願いが叶うまで最初の決意を思い出させる…… いわば『初心忘るべからず』なメニューである。

 だが、この少女はもうこのメニューを注文し始めてはや三ヶ月。

 個人情報なので内容も聞けず、かといってそんなに長く応援セットを注文する客もいたことがない。どうしたものかと思っていたが、最近になって別の少女を連れ、二人で来るようになった。

「また来てるね、あの子。今日は二人で何を注文してった?」

「……ふたりとも、応援セットでした」

 流石に気になったウエイターは水配りのフリをしつつ、二人の会話に聞き耳を立てた。待っていた方に帰ってきたウエイターはぽつり。

「あれ、ただのアイドルの追っかけみたいです」

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