ないものはない

「テイクアウト専用のお菓子を今年も作った」

 毎年年明けの1ヶ月、『忘れずナック(スナック)』というお菓子を販売する。

 覚えた内容を忘れないという願掛けのこもった、受験生向けの商品だ。

 実際これのお陰で受かったという学生も少なくない。

「だけどクレームも来る。忘れたまんまで解答が出来なかった、と」

「え? でもこれうちの商品ですよね? 思い出せないってそりゃクレーム入ってもおかしくないですよ」

 ウエイターは担当者に反論する。このレストランならではの商品なのに、ケチがつくじゃないか、と。

「そりゃ、覚えてないものは思い出せないし忘れさせられないからさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る