第25話 繋がり
睦生の肌に掌を乗せると触り心地が良くて、そのまま肌の上を滑らせる。
「くすぐったい」
「気持ちいいんだもん。嫌じゃない?」
「柚羽を独占したいから」
「全部睦生のものでいいよ」
「柚羽は気軽にそういうこと言い過ぎ」
「本心なんだけど」
首筋に腕を伸ばして甘えてきた睦生に引き寄せられるまま顔を寄せて、唇にキスをする。
いつもの触れるだけのキスじゃなくて、舌を割り込ませるとそれに睦生も応えてくれる。
「こういうの久々だけど、止まらなさそう。睦生の体全部に触れさせて」
頷いた睦生をマットに寝かせて、鳩尾に唇を落とす。
女性の胸に触ったことなんてなくて、ちょっと戸惑いながら触れると睦生がまたくすぐったいと文句を言う。
「だって、初めてだし、緊張してるの」
睦生の体に触れる自分を幾度も夢には見た。でもそれには今感じているようなリアルな感触はなくて、睦生の一つ一つの挙動に右往左往してしまう。
「無理に頑張らなくても、柚羽がしたいことだけするでいいよ」
「したいことは一杯あるんだけど、それ以上に睦生に触れていることに感動してる」
そう言うと更に睦生に笑われて、それでも挫けずにわたしは睦生に触れた。
2人で気持ち良くなることを優先させて触れ合って、時々笑い合いながら、それでも互いの体を探り合った。
女性の体に触れるのは初めてだったけど、男性より女性の方が触り心地が良くて、戸惑いを感じるどころか手放せなさがある。
睦生は子供を産んだ体だからと体を見せるのを躊躇っていたけれど、わたしからすれば魅力溢れた体で、際限なく求めてしまいそうな魅力があった。
触れ合って、休憩して、また触れ合うを繰り返して、スマホで時間を確認すると3時近い。
そろそろ寝ようか、と服を整えてから手を繋いで寝室に2人で移動する。
前に泊まった時はひびきちゃんを挟んで寝たけど、今日は睦生の隣を選んだ。
まだ触れていたくて、わたしは睦生の腰に背後から抱きつく。
だって、まだ余韻に浸っていたい。
「大好き。睦生」
「これ以上は駄目だからね」
「うん。わかってるけど触れるだけでいいから」
こんな風に抱き合うことすら何年ぶりだろう。
失恋をしてから、わたしは誰にも甘えられずに生きて来た。
睦生はそんなわたしを受け入れてくれた。
「柚羽、柚羽には何の得もない選択をさせちゃったかもしれないけどいいの?」
「何の得もないって、睦生と一緒にいられるんだから、それ以上のものってないよ? ひびきちゃんも可愛いし、すごく得してるって思ってる」
睦生が口元で笑って、背後から首筋に唇を触れさせる。
「もうっ……誘わないで」
本気なわけではなくて、唇はすぐに離した。
「また隙をみてしていい?」
「いいけど……もう誰ともしないって思っていたのに、柚羽とするの気持ち良くて、どうしよう」
「悩むところじゃなくない?」
「だって、母親なのに……」
「母親だからって我慢する必要ないんじゃない? 子供を放り出しては駄目だけど、性欲は生きていくのにあって当然の欲だから、共存させて行けばいいかなって思う。って言うか、そうしないとわたしが干からびちゃう」
「もうっ、柚羽は……でもね、柚羽と付き合い初めてから、ワタシは毎日柚羽に会いたくて、もっと近くに柚羽を感じたいって思うようになったの。今日我慢できなかったのも、もう今までと同じじゃ満足できなくて、柚羽と深く繋がりたかったんだと思う」
「わたしは、もう睦生以外とはしたくないってくらい気持ち良かったから、もうしないはなしだからね」
「ワタシも柚羽以外には甘えられなさそう」
寝返りを打ってわたしの方を向き直った睦生と、薄闇の中で視線を合わせて顔を寄せ合う。
「柚羽、一つだけ約束して」
「何? 浮気はしないよ?」
「それは柚羽を信じてるから心配してない。柚羽がいつもワタシとひびきのことを考えてくれるのは知ってる。でも、しんどいこととか、辛いことは言ってね。ひびきがいるからって我慢しないで欲しいの。ワタシは柚羽にいっぱい支えられているのは分かってるけど、柚羽を支えたい思いもあるから」
「わかった。ワタシの悩みなんて睦生に触れたら吹き飛ぶくらいの悩みしかないけどね」
もうっ、と怒った睦生の唇をわたしは奪った。
睦生と生きたい。
まだ、気持ちだけがあるだけで、これからどうしていくのかは2人で考えないといけないだろう。
でも、こうして触れ合えていられれば、前に進める気がした。
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