極悪魔王

林雷巣

第1話

 「好きです!付き合ってください」

 目の前の思い女に今までの気持ちを教室で伝える。

 

 

 長い沈黙の後、彼女が言った一言は

 「無理。もうこれからは話しかけないで」であった。

 

 あまりの言いように心が痛む。

 もう少し配慮してくれてもいいんじゃないか......


 「あ、そうそう、今の告白録音してたから拡散しとくね?キモオタ童貞くん?」

 

 その一言で何かが切れた。

 近くにあった椅子をとり、教室から出ようとしている女の後頭部を打ち砕く。


 パギャリ、と普通は聞かないであろう音が聞こえる。

 彼女は床に倒れ込むと頭からどんどん命の結晶であった鮮血が流れ出す。

 

 「ひっ!お、俺は悪くない、悪くないんだ......」


 立ち尽くしていたが、誰かが教室に近づいている雰囲気を感じた。

 このままではまずい。

 

 急いでベランダに隠れる。

 

 すると、キモオタがやってきた。


 

 彼女が死んでいると騒ぎ出したので後ろから彼女にしたことと同じように椅子を打ちつけた後、ハンカチ越しに彼の手を使い椅子に指紋をつけ、ベランダまで引きずり、落とした。




















 ––––



 「いああいえんおうあ(知らない天井だ)」

 思うようにしゃべれない。

 頭か喉でも負傷したのであろうか?

 後ろからあいつに殴られた時に怪我したのか?

 そう身を捩っていると、

 

 「んぅ!いい子でちゅね〜」

 

 !?突然頭上から声がした後にパツキンでダンディな男に抱き上げられた。

 そう、抱き上げられたのである。


 そうして俺は今の現状を悟る。

 

 


 転生したのだと......






・・・・・・

 

 転生を自覚したところで体はまだ赤子であるので特に何もできない。


 ただの転生なのであろうか?

 今までに読んだライトノベルの記憶を総動員させ、考える。


 もし異世界であった場合ほとんどの転生者が魔力を小さい頃から練っている。

 まずは魔力を練れるか練習してみよう。

 丹田に力を込めて数秒、生暖かいものをお尻で感じた。

 

 あまりの不快感に意志に反して体は泣き始める。


 すると、銀の髪を持つマブいチャンネーがやってきて下腹部の服を変えてくれた。

 この姉ちゃん、どえらくエロく、別嬪さんである。

 

 生涯さくらんぼ少年であり、恋もまともに成就しない俺にとって、彼女は天上の人のようであった。

 

 自分の尊厳と引き換えに何か温かいものが体を巡っている感じを掴んだ。


 これが魔力であろう。


 ほとんどの転生系主人公は3歳児くらいで意識が覚醒していることが多く、魔法関連の本を見て独学で学び魔法を使うことで魔力を消費していることが多いが、今の俺は赤ん坊なので動けない。

 

 どうしたものかと思案していたが、閃いた。


 無属性魔法なるものがあるじゃないか、と!

 

 確か属性分けしない魔力をそのまま使うとか見聞きした覚えがある。


 


 さりとて簡単にいくはずもなく、結局は寝落ちしたことでこの日を終えた。

 

 

 

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