第11話 過去の精算1

ーー アイスの過去編


私はドラゴーニュ族のアイス。


昔の名前は、カテーシャ。


汚い闇討ちにあい奴隷として売られた私は、復讐心だけで生きていたたが、今は少し違う。


復習を忘れた訳ではないが所詮私が・・・弱かったのだ、さらに修行をして闇討にも負けない強さを手に入れるつもりだった。


 我らドラゴーニュ族は強き者が絶対と言う考え方をする一族だ。


御主人は、私とレベル差が100以上もある為、側にいるのは感情的には安心感がある。


そんな私をご主人様は、第三夫人として迎えてくれた。


さらに今度は、一緒に過去を清算しようと言ってくれたのだ。


不老の身体を手に入れた今の私に、怖いものはない。


「戻ろう、あの忌まわしき故郷に!ご主人と共に。」


そう決意した私は、同じ境遇の妻らと共にドラゴーニュの国へ向かった。



ーー ドラゴーニュの国



ドラゴーニュの国は、他の王国と違いハッキリとした国としての制度がない。


部族間同士の勢力争いや部族内部の勢力争いを重く見ていて、一つにまとまると言う意思は薄い様だ。


大小様々な部族が日々勢力争いをしている、それがドラゴーニュの本質の様である。



アイスが暮らしていた部族もそんな部族の一つで、勢力的にはかなり上位の部族であった。


部族長を務める、父親とその補佐をする叔父と長男がアイスの自慢の家族だった。


強さを求めるドラゴーニュ族にとって、強さが尊敬の最大のポイントであった。


その家族を第二勢力の家族が他の家族と共闘して、闇討ち的に襲い殺したのだ。


普通は、殺すまでのことはせず、力の差を見せればそれで済むのであるが、


力ではなく闇討ちや罠で相手を倒した際は反撃を恐れて殺す様だ。



その後勢力が落ちたアイスの家族は、追放されるわけだが。


そこそこ強かったアイスは、かえって不幸な人生を送ることになった。



今、その故郷を前にしてアイスが


「ご主人様、私の復讐を許していただけますか?」


と尋ねてきたので


「許すも何も、俺もそれに加わるつもりだぜ。」


と答えると、アイスは力強く頷いた。


俺は他の嫁に、


「ここから先は、アイスと俺の戦いだ、お前達はそれを見届けてくれ。」


と言い置き、アイスと肩を並べて歩き出した。





ーー ゲーリーと言う部族



ドラゴーニュ族は、族長の名前を取り部族名を名乗る。


その為、族長が変わると、周囲の部族にそれを知らせるのが恒例である。


ゲーリーと言う名は、アイスの父達を殺した男に名前だ。


ドラゴーニュのレベルは、100〜200と言われている。


ゲーリーと言うドラゴーニュもレベル180ほどの男で、そのままではレベル200のアイスの父親には敵わなかったので、謀略を図ったことになる。


ゲーリー部族の縄張りに入るとアイスが、


「我はケインズ部族の生き残りアイス、ゲーリー部族の族長に決闘を申し込む。


族長の元に案内せよ。」


と大声を上げた、すると何処にいたか二人のドラゴーニュが現れ。


「我らが案内し申す。」


と言いながら先導し始めた。



アイスの今のレベルは250で、ドラゴーニュの限界を突破している。


部族に案内されたアイスを見て何人かが、


「あれは、カテーシャでは?」


と騒いでいたが、アイスは気にもせず、


「ゲーリー族長との決闘を願う。」


とも一度申し込んだ、するとゲーリーと呼ばれた族長は


「俺に決闘を申し込むながその力を示せ」


と屁理屈をこねて、部下の戦士をアイスの前に立たせた。


傷つき疲れたところで出てくるつもりだろうが、ここにアイスを傷つけられるようなドラゴーニュは居ない。


出てくる戦士を次々に倒すアイスに肝を増やしたか、ゲーリー族長は、


「何をしている、皆で囲んで殺せ」


と思わず、叫んでいた。


ここで俺の介入が可能になる、数人ずつ現れるドラゴーニュを素手で叩きのめす俺とアイスに恐怖を感じた、ゲーリー族長は、その場から逃げ出そうとする。


それを見たアイスが


「敵に後ろを見せるなど、ドラゴーニュの面汚しだ。正々堂々と戦え。」


と叫ぶとアイスの声に立ち止まると振り向き


「お前が言うか!」


お激昂し、アイスに襲いかかった。


アイスはそれを丁寧に捌くと、渾身のパンチを顔面と腹に叩き込んだ。



決闘はアイスの一方的な戦い。



この時ゲーリー部族は、族長を失いただの部族と成り下がったのだった。





ーー 限界突破とダイアナの過去の回収



「不老の薬」を飲んだ妻達の体の家編が起きているのは、


直ぐにわかったうた。


それまでの肉体的、精神的なダメージの反動かは分からないが、


大きく身体能力及び魔力量が増大して限界突破を果たしていた。


アイスの場合は、レベルが150から250にと超回復が。


ダイアナの場合は、精霊魔法が風から全属性に。


ハートの場合は、回復魔法5が8へそれと魔力量が4万と全属性に。


それぞれ進化しており、この三人だけでも国一つ落とせる戦力になっていた。



ーー ダイアナ  side



私は西の国のエルフの元女王。


親友として信じていたカレンに騙され、


奴隷と売り飛ばされた私はその時に名前も捨てた。


どうしても許せないのは、カレンだ。


彼女は、は幼い頃から私の親友として共に身近にいた存在。


その彼女が裏切った理由は、本人が売り飛ばされる私に向かいこう言った。


「自分より能力の劣ったお前が私より全てにおいて、優遇されているのが許せなかった、特に私の想い人までお前が手に入れようとしていたことは、絶対にゆるされないことだったんだ。」


と言ったのを忘れた事はない。



「今彼女が幸せそうにしていたら、どんな感情が噴き出るのかも想像できない。」


とご主人様に話したら、


「今のお前より幸せな者がいたら会いたいものだ。」


と言って私を抱きしめてくれた。


その事だけで私は、心の中の黒々とした思いが溶かされる感覚を覚えている。


後は、カレンに会うだけその時にはっきりするだろう。





ーー 西の国のエルフ



エルフの国はこの世界に4つあると言われている、それぞれ東西南北に分かれて世界樹と呼ばれる精霊樹を、守りながら生きていると言われる。


エルフは長命種族の中でも飛び抜けて長命で、中には2000年生きるハイエルフと呼ばれる者もいるようだ。


そうなると不老になったダイアナは、ハイエルフをも超える存在と言える。


この事実をエルフの民が認められるかが、今回の問題かもしれないと、俺は考えていた。



ダイアナの案内で、深い森を散歩するように進む、これも精霊魔法のようだ。


暫くすると、周囲に気配が取り巻くのがわかった。


「ご主人様、何もせずお待ちください」


と、ダイアナが言うので、無視しながら歩き続けると。


「そこの者止まれ!これより先は西のエルフ国。何用で来た。」


と一人のエルフの男が姿を現し、問い詰めながらダイアナを見て驚く。


「まさか!シルフィー王女。生きておられたのですか?」


と驚きと不審を露わにして尋ねてきた。


ダイアナはそれには答えず、


「その名は捨てました、私はダイアナ。王に会いに来たと伝えてください」


と言うとそのまま歩き始めた。


周囲の気配が半分ほど消え残りが様子を伺うように付いてくる。


1時間も歩いただろうか、突然森が開そこに見上げるほどの大樹が姿を見せていた。


「おお、これが聖霊樹「世界樹」か。」


俺の言葉に、ダイアナが頷くと同時に数人のエルフが目の前に現れる。


「王が御会いになるそうだ、こちらに参られ。」


と俺ら四人を案内してくれるエルフ達。



屋敷のような建物に入ると、ダイアナ以外はその場で待たされた。





ーー  ダイアナと王



「本当にシルフィーなのか?今までどこに?」


と王がダイアナに聞く、ダイアナはそれに対し、


「シルフィーは、死にました。


私は生まれ変わったダイアナと言う者。


王においては、ご健勝のご様子安心しました。


一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」


と言う王は、


「なんだ、申してみよ。」


と言うのに、


「カレンの今の居所を知りとうございます。」


と言うダイアナの言葉に何かを感じ取った王が、


「連れてこよう、しばし待て。」


と言い置くと、臣下に何事か言いつけていた。



エルフの王は、代々男系であり次の国王候補の一人が、


ダイアナの許嫁となるはずの男であったが、


それをカレンが奪った形になってになっている。



暫くすると、男女二人のエルフが姿を現し、


ダイアナの前に来ると驚いていた。


「久しぶりねカレン、それとカーフ、元気だった。」


と明るい声で喋り掛けるダイアナにカレンと呼ばれたエルフが。


「何故、貴方は死んだはずなのに。」


と言うカレンに


「確かに私は、一度死んだわ。貴方のお陰でね。


でもね、私に精霊が言ったの。


お前の待ち人が現れるまで生きろと。」


そう言ったダイアナは、とても美しく自信に満ち溢れていた。


「そんな、貴方のような劣等種が・・・許せない。また私から奪うつもりね!」


とカレンが叫ぶと精霊魔法でダイアナを攻撃し始めた。


しかし、どれだけ聖霊に呼びかけても聖霊はカレンに力を貸さず、


魔法は顕現しなかった。


「何故なの?私の方が優れているのに。」


と悔しさにダイアナを睨みつけるカレンにダイアナは、


「聖霊はね正直なの。


 私がハイエルフを超える存在になったことを認めたのよ。」


と言うと、近くで見ていた王に。


「王よ、私がここを訪れる事は暫くないでしょう、


今私は良き伴侶を得て幸せの中で暮らしております。


王においても健やかであることを祈っております。」


と言うとその場を後にして、エルフの国を後にした。


森を歩きながら俺がダイアナに、


「過去の回収は済んだか?」


と問うと、


「はい。すっかりと回収できました、有難うございました。」


と笑顔で答えてくれた。

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