第24話 ペットと人攫い
ーー 赤の季節、ダンジョン探索。
赤の季節は学園でもダンジョン攻略を毎年の行事にするほどの重要なものである。
新たなダンジョンの調査がほぼ済み、これからはダンジョン探索及び攻略が可能となった。
学園長から事前調査と準備を任された僕らのパーティーは、ダンジョンの探索に乗り込んだ。
目標は1〜5階層の地図と魔物の分布調査だ。
1日1階層を目標にゆっくり詳しく探索を行う。
このダンジョンは、5階層ごとに魔物の種類がガラリと変わるダンジョンの様だ。
1〜5階層までは、虫系の魔物が存在する。
虫系の魔物は生命力が強く、毒を持つものが多い。
そのため、毒の種類と分布が重要となる。
しかし逆に虫系の魔物は素材としてとても重宝する。
5階層の階層主はアクネラだった。
地図と分布図を作りながら3階層のハニービーンの巣を回収する。
香り違い蜂蜜が大量に手に入った。
攻略の要は女王蜂を討伐しないことと、巣の一部を残すことこれで新たな蜂蜜が回収しやすくなる。
サソリのような魔物と毒を持つクモにアリが1階層から出るがその数や組み合わせが、階層で違い、3階層から上位種に変わる。
サンプルも採取したので、解毒薬は作成済み。
と言うことで、自信を持って報告に学園に戻った。
◇
学園生徒のダンジョン探索。
初等科1〜3年がパーティーを組んで、1〜3階層に挑戦をする。
安全に階層を重ねて素材を得る技術を競う。
虫系の魔物に慣れていないためか、多くのパーティーが3層に達することなく救出されていった。
その中で最短時間で、5階層の階層主まで討伐したパーティーがあった。
ルシリーア嬢率いるパーティーだ、彼女はこれまでの魔物の特徴と弱点の書かれた指導書を読み漁り。
どんな魔物が来ても対応できる様に考えてきたようで。
装備からして違っていた。
「ルシリーア嬢、今回の初等科におけるダンジョン探索については、他を寄せ付けない実領があった。
ここにスターを持って称する。」
と、この学園で優秀なものが手にするスターをを手に入れたのだ。
僕らがもらっていない?僕らの恩賞は学生の枠を超えているため、国王からの賞賛・褒賞であったのだ。
ルシリーア嬢が僕の近づき
「行軍訓練の際の伯爵の指摘がなければ今日の私は存在していませんでした。」
と言うと頭を下げて下がっていった。
成長したね。
無事ダンジョン探索・攻略の行事が終わると、学園は「黄の休み」の季節に入る。
ーー 黄の休み。
僕は今回だらけることにした。
今までを振り返ると・・・忙しすぎるでしょ。
領地に戻って、温泉三昧に研究三昧を楽しむことにしたのだ。
クロニアル子爵にもこの休みは何もしないから、家に帰ってきたらと言って学園で別れた。
川に釣竿を垂れ、山に弓を引いて猟を楽しむ生活。
雨が降れば家の中で読書三昧、温泉に浸かりサウナで汗をかけば疲れがこそげ落ちる様な感覚が。
「生き返る様な気持ちよさだな。」
思わず口を突く言葉。
しみじみとスローライフの似合う少年だと思う。
最近では女神の舌打ちも気にしなくなったし。
本当に楽しい休日だった。
ーー 学園生活3
卒業式と入学式が終わり、新学期が始まった。
僕らは学園の中等科1年となった。
領地対抗戦も中等科になると魔法と剣術の技術の競争となる。
今回黄領地の剣術の選手は、マッケンジー男爵。
魔法が僕と言うことになった。
今まで剣技については、木、岩、鋼鉄を切ると言うものであったが、マッケンジー男爵は既に鋼鉄以上のドラゴンの首を刎ねていることから。
オークションに出されていた地竜の鱗を切断することになっている。
僕の魔法の技能については、現在誰もできない魔法と言う命題が課されている。
実技の大会は、新しい寮長が出るらしいが僕は詳しくは知っていない。
研究については以前僕がクロニアル子爵と発表した事で今回は該当者なしということになった。
◇
大会当日。
マッケンジー男爵の魔剣が虹色に輝く。
最近マッケンジー男爵は、全属性の魔力を魔剣に纏わせることが可能になった。
「ハアーッ!」
気合いと共に振り下ろされた魔剣が、地竜の大きな鱗を真っ二つに斬り裂いた。
ドット湧き上がる歓声と拍手に答えながら、マッケンジー男爵が舞台から降りる。
〜次に登場いたしますはエストニア伯爵。今回のテーマは誰も使えない魔法技術です。〜
と言うアナウンスに紹介されて、僕が登場する。
アナウンサーが僕に手渡した原稿を読み始める。
〜伯爵は今から「え!」・・転移魔法によりグスタング王国南の海に転移し、海の幸を・・手に入れて戻ってくるそうです。それではどうぞ〜
と言うアナウンスが流れざわついたところで、僕の姿は消える。
「消えたぞ」
「本当に転移が可能なのか?」
「それにしたって、海は無いだろう。」
と言う言葉が囁かれて10分ほど経った頃、突然僕が姿を現した。
僕の腕の中には暴れる大きな魚が。
「あれはマグロでは無いか!」
知っているものがいた様だ。
そのまま僕は氷魔法でマグロを凍らせる。
「今凍らせたぞ!」
どうやら氷魔法も希少な魔法に様だ。
マグロを収納し、収納魔法に入っている品物を出しては収めると。
「今のはドラゴンの首!」
「家が出てきたぞ、いくら何でも収納力がおかしいだろ。」
と言うコバが出尽くしたところで、アナウンサーに合図する。
〜これで伯爵の魔法技能のお披露目は終わりです。ありがとうございました。〜
と言うアナウンスで、僕は顔上から去る。
会場のざわつきは収まらないまま対抗戦は終了し。
学園長の講評となる。
「会場にお集まりの皆様、今年の領地対抗戦は順位がつきません。その理由は先程見ていただいた様にエストニア伯爵やマッケンジー男爵の技能が飛び抜けすぎているからです。
彼らが卒業するまで学園の行事で順位がつくものはないと言えます。
しかし彼ら彼女らの技能を学んだ先輩後輩の学生が、セガール王国有史以来の活躍を見せると私は確信しております。
今後の学園の発展に期待をいただき、本日の閉会といたします。」
と言うと学園長が下がり、終了となった。
◇
その後の学園生活。
何事もなく平穏な日々が流れた。僕はあれから「賢者」と呼ばれる様になり、国内の困難な事案の解決を学園を通して依頼される様になった。
「黄色の賢者エストニア」と言うのが二つ名だそうだ。
マッケンジー男爵の二つ名は「虹色の魔法剣士」だそうだ。
その上男爵から今度子爵になるそうだ。
ーー 白の休み
白の季節になった。
僕は新しい料理を創作したりして、人生を謳歌していた。
領地の開発も順調で、代官のエリス男爵の報告でも問題はない様だ。
お母様も王都の社交界で大きな影響を与えている様で、毎日が楽しそうだ。
新しく年が明けて、僕は10歳となった。
そして急にペットが欲しくなってきたのだ。
何故か夜な夜な夢で可愛い子犬が僕に、つぶらな瞳を見せて何かを訴えるのだ。
昔自宅で柴犬を飼っていたことがあった僕は、無性にペットが欲しくなっているのだ。
ーー ペットを探しに行く。
この世界では、ペットと言うと存在はあまりない。
魔法があるせいなのか、生き物を連れている場合ほとんどテイムか召喚獣と思われているのだ。
生活の助けになるものが基本で、ただ飼うだけ愛でるだけの存在は少ないのだ。
そこで当然、ペットを扱っている商会もない為、自分で探すことになる。
夢で見る風景はとても現実的でいつも同じ風景であることから。
どこかに存在すると思っている、「これから探しに行こう。」と言うのが僕の決めたことだった。
歩いてや馬車で移動するのでは、探すのはとても大変。
そこで空を飛んで探すことにする。
「フライ」
と唱え、空に舞い上がる。
「先ずは北だ。」
と言いながら北を目指して飛び立った僕。
国境付近まで飛んできたが、夢の風景は見つからなかった。
「ならば時計回りに飛んで探すまで。」
と独り言を言いながら一路東に向かう。
すると大砂漠と中央大森林が見え始める。
砂漠の方は隣国だ、大森林の方を沿うように南下し始める。
「あれは!」
夢で見たような風景が現れた。高度を下げゆっくりと飛行する。
大森林の縁で何か大きな魔物が戦っているっようだ。
そっと近づくと、地竜とフェンリルのようだ。
「こんな場所に珍しいな。」
と思いながらその戦いの行方を見ていたところ、そばに傷ついたフェンリルの子供がいた。
「あの子は夢の子犬じゃないか。」
僕はその子犬に舞い降りて近づく。
子犬は僕を見ると、すぐに嬉しそうに尻尾を振った。
僕は治療魔法で子犬の怪我を治すと、子犬の母親と思われるフェンリルの戦いを見守る。
森が吹き飛ぶような攻撃が繰り返される内に、フェンリルの炎のブレスが地竜の左目を潰すことに成功した。
視界を閉ざされた地竜はその後、スピードに勝フェンリルの攻撃に耐えられず。
森の奥に逃げ始めた。勝負あったのだ。
僕がフェンリルの子供といることに気付いたフェンリルが威嚇してきたが、僕が動じないことに気付いた後は、特に何もしなくなった。
ただ子供の傷が治っていることに気付いたようで。
『息子の治療感謝する。』
と念話が僕の頭に飛んできて驚いた。
『人と会話ができる魔物が存在するんだ。』これが僕の気持ちだった。
その後フェンリルは僕に
『お前が待っていた者のようだ。息子をよろしく頼む。』
と念話を送ると、一声高く吠えて森の奥に飛んで消えた。
呆気に囚われていた僕は、残された子犬と目を合わせると。
「お前の僕と来るかい」
と声をかけていた、子犬は尻尾を振りながら「ワン」
と一声吠えて僕の顔を舐めたのだった。
そして僕は転移魔法で自宅へ戻った。
それから休みの間僕らは、楽しい毎日を送っていた。
散歩や森での狩に戦いの訓練と、少しばかりペットとの過ごし方とは違うかもしれないが。
ーー ケンドール公爵夫人
息子のエストが毎日ゴロゴロとしていた。
10歳の子供といえばそうかもしれないが、エストは伯爵の爵位を持ち領主でもあるのだ。
その責任を感じているの?と言おうとしたある日。
突然姿を見せなくなった。
そして真っ白い子犬を連れて戻ってきて
「この子を飼うことにしたんだ。名前をつけたら教えるね。」
と言うと、毎日子犬と遊び呆けて。
その様子を見ていたら。
戻ってきた夫が
「あれは・・フェンリルの子供ではないか。」
と言うのです。
フェンリルといえば神獣と言われ、人が飼うことなど出来ないはずだが。
確かのあの動きは犬とは思えない。
しばらく様子を見ていましょう。
ーー 学園が始まった。
行軍訓練の季節だ。
昨年は記録的な大雪で、完遂者がほとんどいなかった。
お陰で装備が充実し始めたと聞いている。
僕はと言うと、子犬に「シロ」と言う名をつけて、獣魔の首輪で僕のペットとしていつも行動を共にしている。
つぶらな瞳を見つめるだけで僕は心を癒されるしモフモフはとても気持ちがいい。
賢いシロは人に吠えることなどない。
僕のそばで楽しそうに初めて見るものに興味を惹かれるようだ。
クラスでも人気者になりつつある。
そんなある日、シロが大活躍する事件が起きた。
ーー 人攫いの犯罪集団とシロ。
王都で最近よく耳にすることによくないことがある。
それは「人攫い」だ。
組織だった犯罪集団で、子供を中心に攫っては身代金を要求したり、奴隷として売り飛ばしているらしい。
僕はこの世界に生まれ変わってこのような人の悪意を身近に感じたことがなかったので。
驚いていた。
そしてその魔の手が、ルシリーア嬢に伸びたのだ。
学園で使う道具を買いにクラスメイトと街に出たルシリーア嬢は、クラスメイトと共に攫われたようだ。
その日の夜には、セガール公爵の屋敷と他の被害にあった子供の親の屋敷に文が投げ込まれていた。
「娘を取り戻したくば、金を用意しろ金貨1000枚。取引については後ほど連絡する。」
と言う内容だった。
僕がこれを知ったのは、この犯罪集団が金を渡しても人質を返すことがほとんどないと言うことで。
人質の救出をお父様を通じて依頼されたからだ。
僕はセガール公爵の屋敷に向かうと、心労でやつれた公爵夫人に
「安心してください。僕が必ずルシリーア嬢を助けてもどります。」
と言うと投げふみを手に入れ
「シロ。この匂いを追いなさい。」
と命じた。
シロはしばらく匂いを確認していたが、飛ぶように外に走り出した。
僕は飛行魔法で空からシロの跡をつける。
30分ほどすると王都外れの壊れた教会跡にシロがたどり着いた。
『ここが根城か?』
シロを付近に待機させ、僕は認識阻害のマントを着込むと教会の裏に舞い降りた。
半分壊れた教会には、地下室があるようだ。
見張りの男らのそばを通り抜け地下に降りてゆく。
地下は意外と広く部屋がいくつもあるようだ。
手前の部屋から人の声が聞こえる。
「今回の仕事でこの国はおさらばだ。公爵家の娘だとはいい獲物を見つけられたもんだ。いつものように金だけ奪ったら高飛びして何時もの商人に売りつけるぜ。」
と話していた。
さらに奥に進むと、見張りのいる部屋を抜けた先の3つの部屋に。
人質の子供が10人ほど閉じ込められていた。
その中に見知った顔が、ルシリーア嬢もいる。
僕は鍵をそっと壊すと部屋の中に忍び込む。
口に指を当てて、ジェスチャーすると僕に気付いたルシリーア嬢が頷く。
その部屋にいた子供4人を転移魔法で公爵邸に。
直ぐに戻ると他の部屋の子供らも次々に公爵邸に移動させる。
公爵邸では、初めに連れ戻したルシリーア嬢が家の者に事情を話したようで。
公爵夫人が涙を流しながらよろこんでいた。
僕は公爵様に
「根城にいる者は15人ほど、捕まえておくのでこの場所に兵を向かわせておいてください。」
と言うと転移魔法で教会の地下に戻った。
僕は念話でシロに教会から誰も出すなと指示を出すと、悪人退治を始めた。
まさか根城にしている地下の奥から攻撃されるとは思っていない、悪人たちは襲われたと気づくと奥に奥に集まってくるのだ。
次々に手足を切り裂く僕、動けなくしたところで。
縛り上げる。
話をしていたと思われる男を目の前に転がすと
「お前達の逃げ場はない、仲間の話をしろ。みんな捕まえてやるから。」
と言うと男は
「何を若造が今回うまく行ったようだが、俺たちは直ぐに外に出られるさ。そしたらお前の大切な家族を攫って売り飛ばしてやるぜ。」
と言ったのだ。
どうやらバックに大物がいるようだ。
僕は男の頭に手を乗せると、電撃を流し始めた。
永遠と流される電撃の痛みと終わることのない苦痛。
何も尋ねなければ、脅すこともしない僕は、ただ電撃を流し続けたのだ。
公爵が手配した兵が教会に現れたのは、4時間後のことであった。
その頃には男は、何もかも白状した上廃人のようになっていた。
悪党どもを兵に引き渡した後、僕はセガール公爵とお父様に来てもらい。
話をし始めた。
「これから先のお話は、ごく少数の人だけで共有してください。仲間がそこらじゅうにいる可能性があるので。」
と前置きして男の言った黒幕や協力者のことを伝えた。
「それは本当のことなのか?」
当然の疑問に僕はしっかりと頷く。
「信じられん。それならこれからどうすべきか。」
動揺する2人の公爵、僕は先ず奴隷商の男を捕まえてきます。
判断はそれからでも遅くはないでしょう。
と言うとその場を跡にした。
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