第10話 JOYと出会えた幸運

 このJOYジョイという男……視界が塞がれる直前、。一瞬だが、オレとは違う四つ葉の紋章も確認済み。能力によって、そのあたりには違いが出る……ということか。


 しかし、こんな奴まで能力者だとは……。なんか複雑な気持ちになるな。ひょっとしてこの『力』、そこまで大層なもんでもないのか? 実はオレが知らないだけで、能力者なんぞそこらへんに掃いて捨てるほどいるのかも……


「数原くん……! 大丈夫……?」


 まあ、何はともあれ一件落着。水戸葵みとあおいが心配げに駆け寄ってきたので、そちらの対応に移る。


「あ、ああ……そっちは?」

「ボクたちは大丈夫。ありがとね。でも……」


 そうオレが定型文が如き返答をすると、


「アンタまた、なんでこんなとこにいるわけ?」


 水戸の気持ちを代弁するかのように、訝しめな吊り目が印象的な、火口茜ひぐちあかね嬢がその疑問を引き継いだ。


「昨日も同じ聞かれ方したような……? その割に礼の言葉がないが?」

「心配してくれるのもありがたいし、助けてくれたことにはお礼を言うわ! これでいい⁉ で⁉ なんでこんなとこにいんのよ⁉」

「二人と同じ理由だよ」


 その言葉の持つ意味、重さは一転、二人に昨日の記憶を蘇らせる。月岡星羅つきおかせいら、消失の事実を。


 恐らく居ても立っても居られず、星羅のことを探しに出てきたって感じだろう。服装が昨日と違ってシックになってるからな。少なくとも遊ぶ為に出てきたって風には見えない。その罪悪感に苛まれた面持ちも含めてな。


「星羅……居た?」

「……いいや。今んとこは」

「そう……」


 一応、オレも探しに来たという体で話を合わせる。『能力を試しに出てきた』なんて、口が裂けても言えんからな。


「なら、探そうよ? ここで暗い顔突き合わせててもしょうがないしさ……?」


 というわけで、水戸の意見を採用したオレたちは、何の因果か三人で街を歩き回り始めることに。


 オレは別に探しに来たわけじゃ……と思いつつも、今さら『手分けして探そう』とは言いだしづらい。それにいい意味でも悪い意味でも目立つ見た目だ。また変な奴に絡まれる可能性も充分に考えられる。仕方ない……か。


 とはいえ、あいつがひょっこり顔を出すはずもなく、ただ時間だけが無為に過ぎ去っていく。おまけに空気が重い所為か、会話もほとんどない。オレは別に慣れてるが、こいつらは気まずくないのだろうか?


「っていうか、さっきのアレ……なんだったの? 急にあいつ倒れちゃったけど、アンタなんかした?」


 なんて心配を余所に、暫く歩いていると、火口の方から話題提供が。


 『さっきのアレ……』とは、オレがJOYとやらの足を掴み、『一時的に意識をゼロに変換した』ことを言っているのだろう。だからこそ奴らの隙を突くことができたし、勝つことができた。


 しかし前述した通り、この能力は対象を見ることでしか効果を発揮できない。それは触れていたとて同じこと。……


 実は先ほどの検証で明らかになったことだが、この『力』は触れた場合に限り――。視界が封じられている中でも行使できたのは、この要素のお陰である。


 多少、消費量が増えているし、効力も落ちていたように感じたが、とにかく使える。これは重要な情報だろう。試しておいて正解だった。


 ……と、あーだこーだ頭の中では整理してみるが、能力のことを喋る気は毛頭ない。大きな『力』である以上、リスク管理しておくに越したことはないからな。


「さあ? オレからはなんも見えてなかったし……運が良かっただけだろう」


 こうしてオレは大富豪の八切りが如く、火口から振られた話題を早々に流すことに。


 肌寒さを感じさせる空が、より一層、冷たくなったように感じた。



 それから昼前まで行われた星羅捜索隊も、度重なる空振りに心折れたのか、いよいよお開きムードに。


 ……いや、どちらかというとお通夜ムードと言った方が正しいか。ぶっちゃけ、開始三十分くらいでそんな空気になってたよ。こいつらだって分かってるんだ。『やったって意味ない』って。


「………………」


 裏路地に差し掛かり、ゆらゆらと先導していく火口。その纏う空気たるや、地獄の空気と言って差し支えなし。


「………………」


 水戸も流石に耐えかねたのか、こちらにチラチラと、助け舟を求める視線を寄こす。こいつは何か? 昨日今日と助けたから、オレを救世主だとでも思ってるんだろうか? 勘弁してくれ……


「ねえ、アンタ……数原かずはらって言ったよね?」


 と、溜息自身も溜息つきたくなったであろうその時、火口が重々しいにも程があった足を止める。


「え? あ、ああ……」


 何事かと身構えるオレに、火口はスーッ……と振り返ると、








「数原……アンタ、『七不思議狩り』とか……してないわよね?」


 核心に迫る眼差しを此方へ向けた。

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