最強幼女の異世界蹂躙~超高難度の死にゲー世界に転生してしまったので生きるために鍛えてみたのですが、どうやら強くなりすぎたようです~
ジャジャ丸
第1話 転生したら死にゲー世界だった件
私の名前はテノア・アーランド。パルテノン王国、アーランド騎士爵家のお嬢様だ。
お嬢様とは言っても、貴族らしい豪華な暮らしをしているかと言えば、そんなことはない。
爵位は最底辺だし、所有している領地も小さな村が一つだけ。
しかも、"魔境"と呼ばれる、魔物が湧き出る危険地帯がすぐ傍にあるから、魔物に対する防衛費と被害の補填費用で、いつも家の資産はカッツカツ。都会でお店を構えている商人の方が、よっぽど良い暮らしをしていると思う。
そんな私だけど、今日この瞬間、前世の記憶を取り戻した。
階段から滑り落ちて頭を打ったら、こことは違う別の世界の記憶がドバーッと溢れて来たのだ。
ついでに、頭からも血がドバーッてしてる。どうしようこれ?
「お嬢様!! 大丈夫ですか!?」
「怪我してるぞ!! おい医者!! 医者を呼べえ!!」
「誰か治癒のスキルを習得してる者はいないかーー!?」
ドタバタと、我が家の数少ない使用人達が音を聞き付けて集まり、私の状態を見て更なる混乱を招いている。
記憶を取り戻したばかりだからか、それとも頭を打ったからか。なんだか意識が朦朧とする私は、そんな騒がしい光景を眺めながら意識を手離すのだった。
「さーて、まずは状況を整理しようか」
ベッドに寝かされ、頭に包帯を巻いた私は、意識を取り戻すなり思考を巡らせる。
まず、思い出した前世の記憶と、私がこの世界に生まれて八年間の記憶を合わせて考えたところ、ここはゲームの世界らしいことが分かった。
《ファイナルバトル・フロンティア》……"最近のゲームは温すぎる!"をキャッチフレーズに、最凶最悪の高難易度ゲームとして売り出された、廃ゲーマー御用達の鬼畜ゲー。
女神と悪魔が、それぞれの眷属である人類と魔族を争わせて世界の覇権を巡る終わりなき戦争を繰り広げてるって設定の、地獄みたいな世界だ。
「なんでよりによってこんな世界に来ちゃうのかな私……流石に酷い……」
FBFなんてゲームに手を出したことからも分かる通り、私は前世でかなり重度のゲーマーだった。
ゲームの世界に行ってみたいなー、なんて荒唐無稽な夢も、子供心に何度願ったかわからない。
でも、この世界はダメだ。こういう鬼畜な世界はゲームとして遊ぶから楽しいのであって、リアルになられても普通に困る。
「しかも、魔境近くの村なんて、クエストの宝庫じゃん……!」
前世とは違う銀色の髪をかき乱し、私は呻く。
当たり前といえば当たり前なんだけど、FBFはクエスト失敗の代償もまた鬼畜だった。
村や町が地図から消えてなくなるなんて日常茶飯事だし、ワールドマップが書き変わるレベルの大災害も定期的に起こされた。
人間誰しもが魔法やスキルを持ち、滅びた町の再建も早く出来る、って設定があるからか、文字通り「人がゴミのようだ!」なんて笑い声が聞こえて来るくらいには、クエストの結果で人が簡単に死んでいく。
こんな小さな村なんて、もはやクエスト発生の前提条件として知らないうちに消えていたりするくらいだ。
そんなふざけた世界で生きていくには、手段なんて一つしかない。
ただ、誰よりも強くなる。それだけだ。
「まだ小さい子供だなんて、言い訳にもならないからね」
私は今、八歳。貧しくも優しい家族に甘やかされて育った、ごく普通の幼女だ。
でも、この世界ではたとえどんな性別だろうと年齢だろうと、死ぬ時は死ぬ。貴族の肩書きだって、ほとんど生存の役には立たない。誰かに守って貰おうだなんて、そんなのは甘えだ。
だから強くなる。スキルを習得して、レベルを上げて、誰よりも何よりも強くなって、この世界を生き抜いてみせる。
「大丈夫、私ならやれる」
なぜなら私には、前世で培ったゲームの知識がある。
史上最凶と恐れられたFBFにおいて、全プレイヤーのトップに君臨したこの私の力……見せてくれるわ!!
「よっしゃー!! やってやるぞー!! 燃えて来たーー!!」
ここで絶望するんじゃなくて、やる気が漲ってくるあたり、やっぱり私は生粋のゲーマーなのかもしれない。
そんなことを考えながら、ベッドで立ち上がり拳を突き上げる。
そこへ、ドアを蹴破らんばかりの勢いで開け放ち、一人の少年が部屋に入ってきた。
「テノア!! 怪我をしたって聞いたけど、大丈夫……か……?」
私とは似ても似つかない金色の髪に、黄金の瞳。
まだ少し幼さの残る中性的な顔立ちは女の子のようにも見えるけど、今年十四歳になる立派な男。
私の、今生における兄……ライル・アーランドだ。
「あ、お兄様。私ならこの通り、大丈夫です。もう二度とこのような怪我をしないため、どう鍛えたものかと考えておりました」
えへん、とぺったんこな胸を張り、元気なところをアピールする。
そんな私を見て、お兄様は瞳を潤ませながら歩み寄り……そっと私を抱き締めた。
「そうか……テノアは強い子だな。でも、無理に強くなろうなんて考えなくても大丈夫だ、お前は俺が守ってやるからな」
「…………」
さて、ここでもう一度振り返ろう。私の名前は、テノア・アーランド、八歳の女の子。
貧しいながらも、
そう……どうやら私、今の家族からそれはもう可愛がられているようで、危険がいっぱいのこの世界において、ほとんど外を歩いた記憶がない。
つまりは、まあ……鍛えたいなんて言っても、とてもじゃないけど了承して貰えないであろうことは明白で。
「うん……どうしよう?」
私の生存計画が、早速暗礁に乗り上げたことを実感しながら……私はただ、お兄様にひたすら撫でられまくるのだった。
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