第18話「精霊王の剣②」
俺とエデンは(というか殆どエデンだが)遺跡の地上エリアの制圧に成功した。
「このレベルの雑魚をこれだけ相手にするのは骨が折れるな」
「いやーさすが最強の魔神様。傷一つない」
当然だと言わんばかりに「ふんっ」と鼻を鳴らすエデン。
そして休憩も終わり、いよいよ地下に踏み込もうとしたその時である。
エデンがふるふると震えていた。
「どうした?封印された所に行くのが怖いのか?」
「そんな訳あるか!ただの武者震いだ」
「そっか、ならいいが」
と言いつつも俺の手に手を絡ませて来るエデン。
俺は彼女のプライドを尊重しつつ、何も言わなかった。
―
階段を下りて地下に行き、隠し扉を通り、昔来た地下空洞に来た。
古代王国の宝物庫であったそこにエデンは封印されていたのだ。
俺は3種の神器?(最強の剣、巨大魔晶石、最強の魔神)の扉はスルーして、先に進んだ。
先に進んだ矢先には焼け焦げた人型のナニかが倒れていた。
残った体の肌の色から見るにダークエルフだろうか?
しかし奴等は終末の炉の炎を回収して火の精霊は自在に操れるはず。
・・・どうやら炉の炎は分散できない状態にあるらしい。
それとも相手はドラゴンや魔術師の様な火を操る魔物なのか?
疑問は尽きないが俺はエデンに火炎保護の魔法を掛けて貰うと先に進んだ。
その先にいたのは狂暴化した大量の火の精霊達だった。
飛び散る火の粉が俺達に降りかかる。
「ええい、毎度暑苦しい奴らめ!」
アクエリアス・エクスプロージョン!
エデンが手をかざすと巨大な水球が火の精霊達を包み爆発する。
狂った火の精霊達が次々と蒸発していく。
そのすさまじい水蒸気の中から一つの人影がこちらに向かって歩いて来た。
とっさに距離を取る俺とエデン。
煙が晴れた先にいたのはダークエルフの女剣士だった。
「お会い出来て光栄だ、最強の魔神殿・・・とその主人」
自分の事をジーンと名乗ったこの女はレイアにも劣らない美形。
ショートヘアでキリっとした目付きがまたそそる。
と、こんな分析をしてる場合ではなかった。
俺はさっそく指輪をかざしエデンに命じる。
「俺を守りつつ奴を倒せ!できれば殺すなよ!」
まず彼女がどちらを狙ってくるか分からないから俺を守れと命じた。
更に情報も欲しかった為、生け捕りを命じた。
俺は指示を言い終えると、エデンの邪魔にならない様に後方に下がった。
ファイアボール!
ダークエルフの女が火球を繰り出しエデンを攻める。
これ自体はエデンにはノーダメだったが、武器を持たないエデンは無敵の身体を盾に防戦一方、攻められっぱなしだ。
女剣士の剣の腕はかなりの物で、レイアと同等かそれ以上の腕前だ。
ジーンはエデンが近接攻撃が苦手と知ると、ひたすら剣で攻め立てた。
「どこまでその魔力が続くかしら!」
剣の勢いが増し、魔力で覆われていない部分に剣先が当たる。
真の魔神の力が封じられてる今のエデンには魔力はあっても体力がない。
魔術師タイプのエデンには体力勝負は厳しく、少しずつだが息切れしていた。
「くっ、私とした事が・・・」
距離を取って浮遊魔法で空中に逃げるエデン。
しかしそれこそが彼女の狙いだったのだ。
俺は今彼女(ジーン)の太股が間近に見える位近くにいる。
エデン達の戦いに注目するあまり、自分に近づかれてる事に気付かなかったのだ。
凡人騎士の俺が敵う訳もなく、あっという間に人質にされてしまう。
「この男の命が惜しかったら私に従いなさい」
「・・・・・・」
無言でジーンを見つめるエデン
「どうしたの?ご主人様の命が惜しくないの?」
「別に、むしろ私の手で殺せないのが口惜しい位だ」
「なんですって?!」
作戦通りにいかずに驚愕するジーン。
いや俺も驚いてるよ、守れって言ったのに。
「ご主人様に言い忘れたが、その指輪の強制力は守れたら守る程度の物だ」
「な、なんだって?!」
「この状況じゃあ守りたくても守れないししょうがない」
涼しい顔で言うエデン。
俺が死ぬ事に微塵も未練はないらしい。
「普通に要求を呑めばいいだろ!」
「メイドが仕える主人はただ一人、人間の世界でもそうなのだろう?」
してやったりと狡猾な笑みを浮かべ俺を一笑するエデン。
こいつ・・・帰ったらどうしてやろうか。
「じゃあ指輪で命じ―」
「ちょっと、勝手に動かないで!」
指輪をかざそうとしたらジーンに邪魔される俺。
おいおいそっちの要求に従うっていうのになんで邪魔するんだよ!
イライラが募った俺はついに最終手段に出る事にした。
「おいエデン!お前大切な事を忘れてるぞ」
「ほぅ…一体何だと言うんだ?」
「第三の願いでお前を殺す!」
「お、おやおやご主人様、そんな事したらお前も死ぬぞ?」
「構うもんか!道連れだ!」
「ちっ・・・しょうがない、そこの女、今からお前がご主人様だが・・・」
「な、なんだその歯がゆい言い方は・・・」
「再契約にはその指輪が必要でね、その男からはずしてはめてくれないか?」
「そんな事、お安い御用・・・て、はずれない!」
ジーンは指輪をはずそうと全力を込めるがびくともしない。
「ええい!こうなったら指ごと切り落とすまで!」
「ちょ、ちょっと待て―」
俺の静止も聞かず剣を振り下ろすジーン。
しかし俺の手は無傷、一方ジーンはまるで岩を切りつけたかの様にジーンとしている。
エデン同様、指輪のはめられた手と腕は無敵なのだ。
その隙を俺とエデンは逃さなかった。
俺はジーンにタックルをかますと一目散に距離を取った。
エデンも今度は油断せず最初から全力の臨戦態勢だ。
こうなったらジーンはエデンに近づく事もできないだろう。
「くっ、殺せ!」
生き恥は晒したくないのだろう。
だがそうはいかない。
情報は勿論、人質にされた屈辱、たっぷり晴らしてやるわ!
・・・の前に精霊王の剣を探すんですよね、分かってます。
俺は楽しみは後にとっておき、探索を続けた。
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